■Event Report

ARES・東証共同開催 「個人投資家のためのJリートフェア2013」
市場の堅調を反映して盛況のうちに閉幕

9月28日、東京証券取引所にて不動産証券化協会(ARES)と東京証券取引所との共催による「個人投資家のためのJリートフェア2013」が開催されました。

Jリート市場は2020年に東京オリンピックの開催が決定したこともあり、とても注目を集めています。今後、東京都を中心に行われる競技施設や交通インフラの整備、多数の外国人選手およびその関係者が宿泊する施設に対する需要の高まりによって、不動産価格の上昇も期待されています。このため休日の土曜日にも関わらず、同フェアへは約900名と多くの個人投資家が来場しました。

 

今回のフェアにブース展示または説明会をおこなったJリートの投資法人は全部で33社。各社のブースには個人投資家の方が多く訪れ、ポートフォリオや決算状況などについて熱心に質問する姿が見受けられました。また、来年1月からNISA(少額投資非課税制度)がスタートするということもあり、NISAの相談ブースも設けられました。

投資法人各社による説明会



投資法人各社のブース展示



不動産投資法人各社による説明会とあわせて、複数に分かれたステージではJリート市場を取り巻く最新の動向やNISAなどをテーマにした特別セミナーが開催されました。

特別セミナーには野村證券投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジストの若生寿一氏の他、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の川口有一郎氏が登壇。アベノミクスやNISAがJリート市場に及ぼす影響、そして2013年度後半の国内株式市場の展望などについて見通しや説明が行われました。

 

特別セミナー 深野康彦氏 
「NISAを活用したJリート投資の考え方」

Jリート相場を見るポイント

ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、「NISAを活用したJリート投資の考え方」という題で、Jリート市場を見る際のポイント、NISAの活用法、そして今後の見通しについて下記のように解説しました。

Jリート相場を見る際のポイントは、まず黒田日銀総裁による異次元金融緩和。


ファイナンシャルリサーチ代表
ファイナンシャルプランナー
深野康彦氏

「月7~8兆円規模の金融緩和によってマネタリーベースは過去最高。黒田日銀総裁は逐次投入はしないと言っていましたが、その意味合いが変わってきました。消費税率の引き上げによって景気がスローダウンしたら、新たな資金を投入する可能性があります。その資金は国債の購入よりも、ETFやJリートの買付に回るはずです。Jリートに関しては、新たに日銀の買付枠を広げることも考えられます」(深野氏)。

問題は、日本の財政が持つのかどうかということ。1,000兆円にも及ぶ国の借金が懸念材料になっていますが、「日本国債のCDS保証料は0.6%前後。これは非常に低い水準にあります。ギリシャショックの時、同国のCDS保証率は100%を超えていました。日本のCDS保証率は、市場関係者が意外と冷静に見ていることを示しています。さらに金融緩和をしても大丈夫」というのが深野氏の見方です。

 

CDSはクレジット・デフォルト・スワップのことで、この料率が上昇するほど、市場はその投資対象を「危ない」と見ていることになります。日本国債の場合、欧州債務危機が深刻化した昨年12月時点が直近で最も高く、1.5%まで達しましたが、その後はアベノミクスなどを受け、徐々に低下してきました。

 「今回の日銀の金融政策は明らかにインフレ要因です。とはいえ、物価全体が上昇するというよりも、資産バブル的なインフレになる可能性が高いと見ています」(深野氏)。

資産バブルになれば、不動産に投資しているだけに、Jリートの価格上昇にも期待が高まります。

 

今後の見通しとNISAの活用術

これらのポイントを受け、Jリート市場の今後の見通しはどうなのでしょうか。

特に気になるのが長期金利の上昇。当面、そのリスクは低いということですが、今後、日本の財政赤字がもう一段悪化すれば、長期金利にも上昇圧力が加わります。一般的に、長期金利の上昇は、Jリートにとってネガティブ要因です。

「急上昇しなければ大丈夫でしょう。実は小泉政権の時、Jリート相場は上昇したのですが、当時は長期金利も上昇トレンドにありました。つまり、長期金利の上昇がJリートにとってネガティブ要因であるとは一概に言えません。また、緩やかにでも景気が回復すれば、Jリートの価格が上昇する可能性があります」(深野氏)。

さらに、10月からすでに口座申込がスタートしたNISAも、個人マネーをJリートなどのリスク資産に誘導するきっかけになります。

「注意点は、NISAの場合、利益を上げないと非課税メリットを享受できないことにあります。かつてのマル優のように、預金など確定利付商品が対象なら、誰でも非課税メリットは得られますが、NISAの場合、値下がりリスクのある投資商品が対象になるため、損をすると非課税メリットは関係なくなります」。「Jリートへの投資は、(1)直接上場リートを買う、(2)東証REIT指数に連動するETFを買う、(3)複数のJリートを組み入れて運用するファンド・オブ・ファンズ(FOF)を買う、という3つの方法があります。ただFOFの場合、分配金に注意して下さい。特別分配金といって、元本払戻分が分配金に含まれているケースがあり、この部分はもともと非課税です。つまりNISAで非課税にするメリットがありません。この点では、直接投資かETFが適しているわけですが、個別のJリートについて株価を見ると、100万円を超えているものがあります。NISAは年間投資額が100万円を上限にしているため、この手の銘柄には投資できません。分散投資効果と買いやすさという点を両立させたいのであれば、東証REIT指数に連動するETFを買うのが良いでしょう」(深野氏)。

個人金融資産は1,590兆円まで膨らんでいます。預貯金だけでは、インフレリスクをヘッジするのに心許ないのも事実。NISAという非課税制度を有効活用したJリートへの投資が、これから一段と注目されそうです。

 

特別セミナー川口有一郎氏 
「アベノミクスとJリート」

早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の川口有一郎氏は、「アベノミクスとJリート」という題で、Jリート市場の現状と今後の見通しについて解説しました。

注目されるのは日銀が4月から行っている異次元の量的金融緩和。これがJリート市場にどのような影響を及ぼしたのか。川口氏は、量的質的金融緩和の方向性自体に、政策的な間違いはないと言います。


早稲田大学大学院
ファイナンス研究科教授
川口有一郎氏

「日銀が行っている量的質的金融緩和は、物価上昇、賃金増加、消費促進という、実体経済面を支えるためのものです。4月に黒田日銀総裁が異次元金融緩和を発表したのは、株価や不動産価格の上昇、さらに円安を促すことで、個人の心理的な誘導を図るためのものでした。株価や不動産価格が上昇すれば、資産効果によって確実に、これらの資産を保有している個人の消費マインドが高まってきます。そうなれば、実体経済は好転します」(川口氏)。

実際、Jリート市場は活況が続いています。この背景にあるのが、不動産市況の回復であるのは言うまでもありません。

「昨年春以降、Jリートの価格は徐々に上昇してきました。背景にあるのは、不動産市況の上昇です。たとえばオフィスビルの売買価格は、昨年春から上昇してきました。これは米国やイギリスでも同じです。しかも、アベノミクスが打ち出されてからは、その価格上昇にも一気にはずみがつきました」(川口氏)。

もちろん堅調なのはオフィスビルだけではありません。たとえば住宅市況も好転してきています。

「東証の住宅価格指数をみると、明らかにアベノミクス効果だと思いますが、プラスに転じてきました。また日本だけでなく、米国でもバーナンキFRB議長の量的金融緩和政策によって、住宅価格は急上昇しています。問題は、バーナンキ議長がこの量的金融緩和をいつ止めるのかということですが、彼の任期中にQEを止めるということは、ほぼ考えられません。言うまでもなく、今の段階でQEを止めたら、せっかく回復基調にある住宅価格が急落する恐れがあるからです。また、アジアでは香港をはじめとして、まさに不動産バブルの様相を呈してきていますが、これも仮に米国がQEを止めるということになれば、大暴落を起こすでしょう。したがって、米国が目先で量的金融緩和を止めるということは、考えられません」(川口氏)。

米国が金融緩和を続ける限り、世界的に不動産市況は底堅い展開が続く可能性があります。加えて、日本国内においては、低金利と物価上昇によって実質金利が低下し、それがJリートの価格上昇を促すことにもなります。

「かつて金利とJリートの価格との間には、金利が低下するとJリートの価格が上昇するという逆相関関係が見られましたが、昨年春先からは、金利が低下するとJリートの価格が上昇するという、ある意味、正常な状態に戻りました。したがって今後、実質金利がさらに低下すれば、Jリートの価格をさらに押し上げる可能性が高まってきます」(川口氏)。

アベノミクスの目玉のひとつである量的質的金融緩和は、今のところ、Jリート市場にとってはプラスに働いているようですが、問題はここから先。Jリートには上昇余地があるのかどうかということです。

「Jリートの予想配当利回りと10年国債利回りの差を見ると、大体3%前後の開きがあります。過去の流れから見ても、この程度の利回り差が、最も居心地の良いところだと思います。今後、Jリートの価格が上昇するためには、やはり外部成長と内部成長の両面が必要になってくるでしょう」(川口氏)。

外部成長とは、Jリートが新規でより魅力のある物件を組み入れることを通じて、ファンドの価値を上昇させること。一方、内部成長は、すでに組み入れている物件の賃貸収入が増えることで、配当利回りが向上することを意味します。

「東京の家賃収入は2004年が大底。リーマンショックによって、空室率は9%まで上昇しましたが、現在は8%台にまで低下してきました。さらに来年は7%台まで低下する見通しです。空室率が7%程度まで低下すれば、賃貸料を引き上げることも可能になってきます。また、オフィスビルの本数は2007年以降、増加傾向をたどってきましたが、ここに来て徐々に本数増加のペースが落ちてきました。その一方で、オフィスビルに対する需要が高まれば、オフィスビルの需給が改善され、価格の上昇につながります」(川口氏)。

2020年には東京オリンピックも開催されます。中長期的に日本の不動産市況が改善すれば、Jリートの価格上昇にも期待できそうです。

 

 

関連リンク

東証REITページ http://www.jpx.co.jp/equities/products/reits/outline/index.html
東証JリートView http://reit.tse.or.jp/

取材・執筆:Fanet MoneyLife (掲載日:2013年10月11日)