■Event Report

ARES・東証共同開催 「個人投資家のためのJリートフェア2015」
積極的な姿勢の個人投資家で盛況に。

 

各社ブースや説明会、特別セミナーともに盛況

「投資の日」である10月4日、不動産証券化協会(ARES)と東京証券取引所(東証)との共催で「個人投資家のためのJリートフェア2015」が開催された。昨年までは東証で行われていたが、今回は東京・丸の内のJPタワー(KITTE)4階ホール&カンファレンスに会場を移した。「個人投資家さんの注目の高さのおかげで」(主催者談)、これまでより多い約1,100人の個人投資家が集まった。

フェアでは、出展各社のブース展示と説明会、特別セミナーを開催。出展したJリート(投資法人)は合わせて31社。各社とも豊富な資料を用意しながら、ノベルティやオリジナル映像などブース内容に工夫を凝らしていた。集まった投資家も各社の説明員と積極的に話し込む姿が目立った。また、各説明会も概ね満員となる盛況ぶりで、多くの投資家が熱心に説明を聞いていた。

 

相対的に高まっているJリートの魅力

NISA(少額投資非課税制度)の広がりとともに、Jリートに対する個人投資家の期待も高まっている。とくに最近は、一口あたりの投資口価格が小口化しており、NISAでJリート投資を考える投資家も増えているようだ。証券会社の担当者が交代で説明する「NISA相談コーナー」では、若い世代からも商品や投資環境などに関する具体的な相談を受けていた。

特別セミナーには、早稲田大学大学院ファイナンス研究科の川口有一郎教授と、東証上場推進部長の横田雅之氏が登壇。入りきれない参加者はサテライト会場で各氏の講演を聞いていた。川口教授は「明日のJ-REIT市場を読む」と題した講演のなかで、「世界経済の不透明感が増す状況下でJリートの魅力が相対的に高まっている。市場の二極化が進んでおり、銘柄選択にはこれまで以上に慎重な検討が必要になっている」と述べた。また、横田氏は、「Jリート投資の魅力と押さえておきたいポイント」と題する講演のなかで、Jリートの安定的な分配金などその魅力を紹介するとともに、開示情報の活用の仕方など投資に際して留意すべき事項などについて投資家に分かりやすく解説した。

開場直後の最も大きな第1会場では、東証マーケット営業部調査役でJリートを担当する山中孝太郎氏が「Jリート好利回りの仕組み」と題して、Jリートの基本的な仕組みから好利回りの背景などを解説した。

 




出展したJリート各社はブース展示や説明会を通じて、積極的な情報提供を行っていた。参加した個人投資家はシニア層が中心だったが若い夫婦や現役世代の女性なども目立ち、資産形成におけるJリートへの期待の高さがうかがえた。

 

 


 

【解説】Jリート好利回りの仕組み

東京証券取引所マーケット営業部 
山中孝太郎氏

 

不動産の賃料を分配+実質的に法人税が免除

山中氏はまず、Jリートの大きな魅力のひとつは分配金(配当)であるとした。「Jリートは税法上、配当可能利益の90%超を投資主に分配することなどを条件として実質的に法人税が免除される仕組みとなっています。」と説明した。

Jリートの平均利回りは現状3.56%で一般の上場会社は1.68%である(2015年9月末現在*)。2倍以上の違いはなぜ生じるのか。上場会社の場合は、各社事業等の収入からコストの他に内部留保と法人税を控除した金額から配当金が捻出されるからである。


東京証券取引所マーケット営業部 
山中孝太郎氏 

「Jリートでは1社が多数の不動産を保有しており、不動産賃料を源泉としています。その賃貸契約は数年~数十年と長期にわたるケースが多く、賃料が急激に下落したり、上昇したりせず安定しています。その意味でJリートの賃料収入は比較的長期で安定していると考えられます。また、通常の上場会社は法人税を支払った後に投資家へ配当しますが、一定の要件を満たしたJリートは税引き前に分配することが可能ですので、収益の大半を投資家に還元できる分、分配金利回りが高くなります。これが好利回りの大きな理由です」(山中氏)。

 

10年国債との利回り差は現状で3.2%前後。世界でも遜色ないレベル

 

実際にJリートの利回り水準はどうなっているのか。山中氏は過去の実績と現状を株式・国債の利回り推移や世界各国のリート市場と比較しながら解説する。

 「Jリートの平均分配金利回りは3.56%(9月末現在)。10年国債との利回り差(イールドスプレッド)は3.2%前後です」。

「リートであれば海外市場の利回りの方が高いという指摘がありますが、そのような国は相対的に国債利回りも高くなっています。イールドスプレッドで見るとJリートは世界各国のリートと比較しても遜色ないレベルと考えることができるでしょう」。

■【グラフ1】Jリート・株式・国債の利回り推移(2001年9月~2015年9月(月次))
Jリート・株式・国債の利回り推移(2001年9月~2015年9月(月次))グラフ

■【グラフ2】世界各国のリートの利回り(2015年9月)
世界各国のリートの利回り(2015年9月)グラフ

 

NISA導入に伴う小口化の進展、ETFでJリート投資も可能

Jリートの魅力として山中氏は小口投資が可能になってきていることを挙げ、より投資しやすい環境になっていることを説明した。

「以前は一口あたりの投資口価格が100万円を超える銘柄もありました。現在はNISAで投資しやすくすること等を背景に投資口の分割が進み、投資単位は小口化傾向にあります。Jリート投資へのハードルが下がり、より投資しやすい環境になっています」。

さらに、東証REIT指数に連動するETFあればJリート全銘柄に投資でき、個人投資家でも簡単に分散投資ができると続けた。「現在、東京証券取引所には東証REIT指数に連動するETF(上場投資信託)が5本上場しています。様々な投資家に活用されている東証REIT指数に連動するETFの純資産残高は堅調に推移しています。ETFはJリートに投資するうえで、有効なツールといえます」。

 

Jリート市場を取り巻く環境

最後に山中氏はJリートを取り巻く環境について触れた。

「Jリート市場の時価総額は10兆円を超える規模に拡大し、物流施設やヘルスケア施設といった投資対象の多様化も進んでいます。また、2014年10月末には、日銀が追加金融緩和に踏み切り、日銀によるJリートの買い入れ額が、年間300億円から900億円へと3倍に拡大されました。同年4月にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、新たにJリートへの投資を開始することを公表しています。」

低金利の環境下でJリート投資も拡大していることから、中長期で明るい展望が期待できそうだ。

(*)Jリートは各銘柄、今期予想分配金と終値を基に時価総額加重平均値。一般の上場会社の平均利回りは実績ベースの有配会社単純平均。2015年9月末現在。出所は東京証券取引所。

 

 


 

特別セミナー

明日のJ-REIT市場を読む

早稲田大学大学院ファイナンス研究科
教授 川口有一郎氏

 

不安漂う世界経済のなかでJリートへの期待が高まる


早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授
川口有一郎氏

世界経済には漫然とした不安が漂っています。日本では、アベノミクスが第1段階を経て第2段階へ進もうとしている。それがJリート市場にどんな影響を与えるのでしょうか。

日本を含めて最近は株価の上下が激しいですが、1日で2%動くのは異常な状態といえます。その背後にあるのは、リーマン・ショック後と同じように世界中でリスクが吹き出している点です。中国経済の先行き不透明感が明らかになり、ドイツではVWの排ガス不正、スイスではグレンコアの株価が暴落して、資源バブルの崩壊が叫ばれています。スペインではユーロからの独立問題、バングラデシュで邦人殺害(テロ)などなど。

この混乱が継続するのか収束に向かうのか、現在は五分五分というところでしょう。継続ならドル安円高へ向かって日本の株価は下落、アベノミクスとは逆の方向へ行くことになります。収束するなら米国は利上げ=ドル高円安へ。いずれにしろ、為替も株価も読みにくい神経質な状況がここしばらく続くと見ています。

日本に関しては、ここにきてアベノミクスで実行された施策のデータがそろってきました。米国で発表された論文を整理した結果は2点にまとめることができます。1点めは「第3の矢がまだ放たれていない」ということ。構造改革のための施策はまだ実行されていないという意味です。2点めが「第2の矢は方向が逆になった」。2014年の消費増税は財政緩和ではなく財政緊縮の流れです。今後も増税予定ですが、第2の矢は本来、財政緩和で景気を刺激するものでした。

第2、第3の矢は機能していないのではないか――これが米国を中心とした研究者たちの、アベノミクスに対する見方となっています。不安漂う世界経済の中でJリートへの期待は逆に高まっています。このことを以下に説明します。

 

FFO倍率で6タイプのJリートを展望する

Jリートには、「オフィス」「店舗」「住宅」「ホテル」「物流」「ヘルスケア」という大きく6つのタイプと、これらを組み合わせた「総合リート」「複合リート」があります。

日本の不動産市場は、総じてよくなっています。とくにその代表ともいえる「オフィス」は、遅ればせながら回復が鮮明になってきました。「店舗」は消費税の影響などで神経質な展開ですが、見通しとしては底堅い回復。「住宅」は底を打ってゆるやかな回復基調に。「ホテル」は継続して成長期待。現状でも1万室くらい不足していますがオリンピックに向けて整備されるでしょう。「物流」は空室減少。通信・ネット販売の倉庫需要が出てきています。「ヘルスケア」は成長というより長期安定というのが私の見方です。


セミナー風景

Jリートの評価として、株価(投資口価格)の割安度・割高度を考えてみます。その指標のひとつがFFO(Funds From Operation)倍率です。FFOはリートの純利益+減価償却費等で算出され、投資口価格÷一口あたりFFOで算出される数値がFFO倍率です。株式のPER(株価収益率)に近い指標で、倍率が低いほど割安といえます。

市場の取引価格である投資口価格は今年8月下旬から9月にかけて下がりましたが、その一方でFFO倍率はオフィスビルで18倍から17倍へ、ホテルは23倍から20倍へなど割安度が上がっています。私見ですが、FFO倍率15倍がそれぞれのJリートの投資口価格としてほどよいレベルと考えられます。9月末現在でオフィスと店舗、ホテル、物流は15倍より上だからよく評価されている(割高)。住宅とヘルスケアは15倍以下(割安)。いい悪いではなく、これが実力と心理(成長期待など)を含んだ現在の評価ということです。

 

好パフォーマンスを期待するための3つの投資手法

Jリート創設時の2001年9月に一口25万で買っていたら、2015年9月には配当金込みで約80万円弱になっている銘柄もあります。値上がり益25万+配当金25万円くらいでしたが、これがJリートのパフォーマンス例です。リーマン・ショックを経てデフレ経済下でもこのパフォーマンスを実現できたわけです。

その意味でJリートの配当金は大きな意味があります。不動産証券化協会で公表している分配金の累計は2兆1,300億円。Jリートはその収益のほとんどを分配してくれてかつ長期的には値上がり益も期待できます。客観的に見て、このような好パフォーマンスの金融商品はそうはないでしょう。

Jリートへの投資法は教科書的な言い方としては、「定額投資(ドルコスト平均法)」「逆張り投資(マーケットタイミング)」「割安投資(バリュー投資)」の3つがあります。

  1. 定額投資(ドルコスト平均法)
    Jリートそのものではできないが、Jリート投信なら毎月同額ずつ買い付ける定時定額購入が可能。時間分散ができるメリットも。
  2. 逆張り投資(マーケットタイミング)
    たとえば3か月前に損失を出した銘柄を買う。これから上がるだろうという見方。統計的に実証されるケースもある。
  3. 割安投資(バリュー投資)
    前述のFFO倍率が低くかつファンドの実力に比べて割安に放置さている銘柄を買う。

 

二極化するJリート市場で配当金の持続成長を吟味

銘柄選択には分配金(配当金)も重視すべきです。たとえば今後10年間、きちんと家賃収入がある(分配金が出る)リートを見つければいい。大事なことは、その銘柄をいつ、いくらで買うかということです。FFO倍率が15をどれだけ上回っているのか下回っているのかを基準に選ぶ方法もあります。現在のJリート市場はその差が広がっており、二極化していると見ています。15倍以下であれば割安で、実力が正しく評価されていない可能性もあるし、それなりの合理的な理由があるかもしれません。15倍以上なら割高というより成長している銘柄かもしれません。これらを見極める1つのポイントは長期的にみて分配金が底堅い成長をしていかどうかです。

 

本日の話をまとめます。

Jリートはこれまで、デフレや金融危機などを乗り越えて長期的に個人投資家の期待に応えてきた投資商品といえます。しかし、今後のマクロ経済を含めた投資環境は極めて不透明でこれまでと同じような好結果になるとは限りません。ではJリート以外に魅力的な商品があるかというと、なかなか見当たらないでしょう。

Jリートは銘柄間格差が広がっています。いい悪いではなく、市場がそう評価しているわけです。その評価の理由については、よく調べる必要があるでしょう。Jリートの好リターンを享受するためには、分配金の安定性あるいは成長性について、これまで以上に慎重な検討が求められています。

関連リンク

東証REITページ http://www.jpx.co.jp/equities/products/reits/outline/index.html
東証JリートView http://reit.tse.or.jp/

取材・執筆:K-ZONE (掲載日:2015年11月5日)