■Event Report

【J-REITトークセッション】
キーワードで丸わかり! 2017年のJ-REIT

スターアジア投資顧問 代表取締役社長 加藤 篤志氏
東急不動産コンフォリア投信 財務部長 吉川 健太郎氏
三井物産・イデラパートナーズ 代表取締役社長CEO 菅沼 通夫氏
森トラスト・アセッットマネジメント 代表取締役社長 堀野 郷氏
ラサールREITアドバイザーズ 代表取締役社長 藤原 寿光氏

 


 

キーワード①「トランプショック」

 


三井物産・イデラパートナーズ 
代表取締役社長CEO 菅沼 通夫氏

菅沼氏まず米国経済が好調です。失業率が5%を下回り、完全雇用状態に近い。若年層の人口が多い唯一の先進国かつ明るい未来をもっている国です。将来的にも経済成長が手堅く、為替はほぼドル高円安傾向へ。日本国内の輸出企業はメリットを享受できるでしょう。間接的ですが輸出企業のオフィス増床・買い増しがあるでしょう。これはJ-REIT市場にとってはポジティブです。トランプ大統領の政策はこれからです。ツイッターなどで公言していることは現状で根拠がありません。これから数か月かけて出てくるのが具体的な政策です。

藤原氏キーワードとしては「ボラティリティ」が挙げられると思います。トランプ氏が大統領に就任したら現実的になるだろうという甘い期待がありましたが、やっぱり変わりませんでした。インフラ投資や減税、規制緩和など、経済にプラスになることをいう一方で、通商政策では貿易戦争も辞さずの強硬姿勢です。全体としてどっちに転ぶかわかりません。中長期的に日本の輸出産業はポジティブですが、足元は収益が荒い展開になるでしょう。そのようななかで、J-REITを含む不動産セクターは“トランプヘッジ”の役割を果たすのではないでしょうか。グローバルな資金は安全資産に流れ、その代表的なものが不動産というわけです。日本の不動産は安定性が高いセクターなので、投資対象としての魅力は相対的に高まると見ています。

 

キーワード②「世界経済」

 


スターアジア投資顧問 代表取締役社長
加藤 篤志氏

加藤氏2016年末に公表されたOECDの世界経済見通しでは、2016年の経済成長は2.9%、2017年は3.3%、2018年は3.6%と、ゆるやかに成長することが予測されています(いずれも速報値)。不確定要素も多々あります。トランプ大統領の政策や英国のEU離脱のハードランディング動向、2017年は欧州で総選挙や大統領選挙が予定されているなどです。これらを総合的に勘案しながらも、私も世界経済はゆるやかに成長すると見ています。米国はしっかりした経済成長余力があります。欧州経済もすでに底を打ったのではないか。中国は6%台の成長は期待できそうです。こうした外部環境のなかで日本も同じように、ゆるやかに成長すると。不動産需要も潜在的に多いなかで、J-REITもさまざまな要素を注意深く見ていかなければならないけれども十分に成長余地がありそうです。

菅沼氏中国について述べます。米国でドル高が続いて金利も高くなると、中国資本の流出が注目されかつ懸念されるところです。中国政府がどのような政策をとっていくのか。おそらく極端な対応はできないまでも、ある程度の元安を容認しながら中国経済は発展していくと思います。中国で中産階級が広がり、そのGDPが増えていくなかで、中国からのインバウンドは確実に増えています。その伸び率が減っただけです。日本の不動産市場で見ると、たとえばホテルの需要は引き続き多いと思います。

堀野氏私も基本的にポジティブな見方ですが、トランプ大統領就任で世の中が一変したと思っています。リーマン・ショック以降、世界の政治家は経済を中心に政策を立案・実行しました。これからは、我々もいわゆる地政学リスクを第一に考慮しなければならないでしょう。純経済学的な見方をすれば、米国と日本は勝ち組に残ると考えています。トランプ大統領にはいろいろな意見があるでしょうが、短期的には大規模なインフラ投資、軍事投資を進めると捉えています。これは1980年代に当時のレーガン大統領が進めた政策と同じです。結果、財政・経常(貿易)の「双子の赤字」を産みましたが短期的には経済浮上をもたらしました。そうなるとドル高です。トランプ大統領の政策で最大の恩恵を受けるのは日本だと思います。ひょっとしたら日本は、空前の好景気あるいは地価暴騰、そしてバブル…という可能性もシナリオのひとつとして十分にあり得ると思っています。

 

キーワード③「不動産バブル?」

 

吉川氏日本の不動産価格がかなり高い水準にあることは間違いありません。2016年の地価公示で日本一高かった銀座の山野楽器前は1平米あたり4,100万円で、この数字はリーマン・ショック前の2008年の水準(3,900万円)、平成バブルのピークだった1999年(3,850万円)を超えています。一般にバブルとは、資産価格が理論価格と大きく乖離している状態をいいます。不動産評価は収益から利回りを割り戻して価格を算出するのですが、今回の価格上昇の最大の要因は利回りの低下にあると思われます。リーマン・ショック前の10年債の利回り(不動産評価で使うリスクフリーレート)は1.6%程度でした。これが現在では0〜0.1%です。今後のことはキャッシュフローと利回りの点から考えればよいかと。キャッシュフローは急激なダウンサイドはないでしょう。一方の利回りは理論上、ゼロより下になることはないので利回りの低下余地はかなり小さい。利回りが急に上がるような状況にならない限り、不動産価格は高値圏で推移続けるのではないかと考えています。


森トラスト・アセッットマネジメント 
代表取締役社長 堀野 郷氏

堀野氏現在がバブルかどうかと聞かれれば、私はイエスと答えます。しかしながら2つほど押さえておきたいポイントがあります。1つは、過去のバブルと比べて、それほど地価が高くないということ。大手町、丸ノ内あたりの月坪は1990年代のバブルのとき10万円までいきました。2007年ごろのミニバブルのときは8万円くらい。現在は4万円くらいです。これは低金利というカムフラージュでそう見えているだけでしょう。昔は価格も高かったが金利も高かったのでイールドスプレッド(利回りと金利の差)は小さかった。2つめは、バブルだとすればどの段階にあるのかということ。私は最終段階にはまだきていないと思っています。バブルでも最終段階でなければまだ先があります。バブル景気の日経平均は89年12月に4万円近くを付けました。バブル崩壊の契機といわれているブラックマンデーはその2年前の87年に起きています。バブルは弾けても余韻が残るわけです。その意味でも、いまはバブルと思っていた方がいいでしょう。

藤原氏いまの日本の不動産市場のなかでJ-REITが占める割合は非常に大きくなっています。市場関係者が現状高値圏にあるという認識を持っているのはディシプリン(市場規律)が効いて非常によい状況だと感じます。運用サイドも、いかに1口当たり配当を増やすかということを意識しているようなので、市場規律が効いています。それが2007年のミニバブルのときとの違いです。

 

キーワード④「少子高齢化」

 


東急不動産コンフォリア投信 財務部長 
吉川健太郎氏

吉川氏この問題の延長線上には人口減少社会があり、不動産ビジネスにとっては極めて重要なキーワードです。経済発展や福祉の向上などを背景に、晩婚化や未婚化、医療進歩による死亡率の低下などにより、どこの国・地域でも起きる現象といえます。日本が若干極端なだけです。その結果として、不動産の利用形態の変化がうかがえます。店に足を運ばないネットショッピング、古いアパートを建て替えてヘルスケア施設へ、など。J-REITはそれらを常に意識ながらフレキシブルに投資対象を考えていくつもりです。

菅沼氏少子高齢化の結果として、ヘルスケアマーケットは病院を含めて拡大していくと見ています。少子高齢化と人口減少については「地方」をどう見るかが問われると思います。地方でも、地方の大都市へその周辺からお金と人が移ってきており、地方の大都市は供給も少ないこともあって空室率が低くなっています。札幌や福岡では東京よりも低いほど。地方が全部だめなのではないということです。投資の際もぜひ、そのような目線でJ-REITを見てほしいですね。地方創生はプラン次第でしょう。ただ器(箱物)つくるだけでなく、地方ならではのめざすべき目標が個々に違うはずで、地元目線、地元オリジナルが大事。霞が関ではなく地元が考える。コンサルを入れたりしないで、地元の人が地元のアイデアでプランニングすべきだと思います。

藤原氏投資として少子高齢化を考えた場合、実需とマネーフローの視点が大事です。実需では、日本中すべての不動産が勝ち組にはなりません。どの地方、どのセクター、どの物件が勝ち組になるのかを見極めていくことがますます重要になるでしょう。マネーフローの観点では、シニア世代が増えていくのでキャピタルゲイン目的の投資スタイルではなく、定期的に配当を得るようなインカム主体の投資スタイルが大事です。その意味でJ-REITは、少子高齢化社会に合致する投資商品ではないでしょうか。

 

キーワード⑤「eコマース」

 


ラサールREITアドバイザーズ 
代表取締役社長 藤原寿光氏

加藤氏あるシンクタンクの予想では、2016年のeコマース市場規模は15兆円くらいで、2022年までに26兆円になるといいます。同感です。そのために今後は、物流施設に対するニーズが重要になってくるし、さらに高まっていくでしょう。具体的には、人口集積地に近い場所に大規模な物流施設が必要になってきます。そのようなニーズを取り入れる物流施設を投資対象に組み入れていくことが必要かと思います。

藤原氏まさにそうです。投資家からは「物流REITはさすがにもう頭打ちでは」という声も聞きますが、そうではありません。その理由は、eコマースのプレイヤーが拡大していることと、eコマースに取り込まれる商品の種類が拡大していることです。プレイヤーはこれまで、アマゾンや楽天などでしたが、いま伸びているのはヨドバシカメラ、セブンイレブン、マツモトキヨシなどの先進的な小売業者です。
スマホで注文して受け取りは店頭、店頭で注文して自宅で受け取るなど、「オムニチャネル」という倉庫と物流を一体で運営していく手法で実現しています。商品の種類も、昔は手に取ったり試着したりしないと買えなかった商品まで消費者はネット通販で買うようになっています。今後は日用の生鮮食料品が増えていきそうです。

 

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取材・執筆:K-ZONE (掲載日:2017年3月10日)