専門家インタビュー

■第4回

決算対策の売りで下落 
10月から新局面入り

東証REIT指数は、9月に入ってからも下げ基調が続きました。8月は、ユーロ経済圏のソブリンリスク問題と米国国債の格下げという海外要因が足を引っ張りましたが、9月は決算対策による売りがかさんだ形です。果たして10月以降は、どういう動きになるのか。みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏に伺いました。


みずほ証券チーフ不動産
アナリスト石澤卓志氏

8月に続いて9月も、REITの価格は下落基調をたどりました。
背景は何だったのですか?

石澤もともと9月というのは、REITにとって売られやすい時期でもあります。というのも、REITを保有している企業が、決算対策や運用成績を確定するためREITを売却して来るからです。

しかもREITの場合、保有している投資家層が、国内金融機関など特定の投資家に偏っています。現状では個人投資家の比率は14%程度にすぎず、通常の株式とは投資家層が異なっています。結果、REITの株主は同じ時期に、似たような投資行動を取りがちです。9月であれば、決算対策や換金・確定売りが、一斉に出てくるのです。

8月のREITの価格下落は、あくまでも海外要因によるものでした。ユーロ圏のソブリンリスク問題や、米国の国債格下げ問題がクローズアップされた結果、株式市場に混乱が生じ、本来であればあまり関係がないはずの国内REITにまで、連鎖反応的な売りが生じました。正直、海外要因でここまで国内REITの売りがかさむことになるとは思いませんでしたが、結果的には、徐々に投資環境が整ってきているとも考えられます。

何しろ、国内REITの配当利回りは、平均でも6%近くまで上昇してきました。ここまで価格が下落すれば当然のことですが、今、周りを見渡しても、6%近くの配当利回りを出せる株式は、ほとんどありません。つまり高配当銘柄としての妙味が高まってきています。

それとともに、8月以降は日銀による買入が大幅に増加しました。これにより、「公的セクターがREITを支えていく可能性が高い」という認識が、マーケット中に広まりました。その点でも、REITは買い場を迎えていると思います。

 

9月までは下げ相場が続いたわけですが、10月以降の動きは?

石澤これは、たとえば外国人投資家などはなかなか理解できないのですが、日本の投資家動向は、9月末までと10月1日以降は、大きく違ってきます。

9月末までは、前述したように決算対策の売りなどによって、株価は下降色を強めますが、10月1日からは決算という特殊要因がなくなり、新たな運用枠で投資を再開することになります。したがって、9月末までと10月1日以降というのは、国内金融機関などにとっては投資環境が大きく変わることになります。したがって、10月以降は積極的な買いが入り、国内REIT市場も再び活況を取り戻してくると思います。

恐らく、余程のネガティブイベントが無ければ、上昇トレンドをたどっていくでしょう。
現在、考えられるネガティブイベントとしては、やはり海外要因です。特にギリシャ問題に端を発しているユーロのソブリンリスク問題については、要注意でしょう。それによってもう一段の株安が進むような状況に陥ったら、投資マインドが再び冷え込んで株価が下落。それにつられる形で、国内REITの売り圧力も強まると思います。

ましてや、こうしたマーケットの波乱が金融システムの悪化につながったりすると、さらに厳しい状況に追い込まれるでしょう。というのも、REITをはじめとする不動産ビジネスというのは、ある意味、借金商売の側面が強いからです。

特にREITは成長戦略を描くために、銀行からの借り入れや投資法人債という債券を発行して資金調達を行い、ファンドに組み入れる新たな物件を購入していくのですが、金融システム不安が高まると、まず資金調達が困難に陥ります。資金を調達できなければ、成長戦略を描くことができませんから、投資家離れが続きます。つまりREITの価格は下落します。

もちろん、国内REITの本業である不動産賃貸事業は、海外要因の影響を受けずに安定した収益を確保できます。ファンドの運用には問題がありませんから、ユーロ問題が一段と深刻化するような状況にさえならなければ、10月以降の国内REIT市場は、堅調に推移する可能性が高いと考えられます。

 

REITの増資問題は、マーケットの需給バランスに影響を及ぼしませんか?。

石澤確かに、REITの成長戦略にとって、増資は重要な意味を持っています。増資によって株式市場から資金を調達し、成長シナリオを描くことをエクイティストーリーと呼んでいますが、9月の株価下落によって、増資を諦めざるを得なかったREITが複数あったと思われます。

増資の動向を見ると、5月~7月に公募価格が1口当たり純資産額を下回るディスカウント増資が相次ぎ、それがマーケットを冷え込ませる要因になりました。9月に入り、きちっとしたエクイティストーリーに乗っ取った増資が増えると思ったのですが、これも株価の急落によって実現せず、積極的な増資は先延ばしにされてきました。その増資が、10月以降に活発化してくるものと考えています。

仮に今後、REITの株価が上昇傾向をたどっていけば、それまで抑えられていた増資ニーズが高まってくるでしょう。増資が増えるということになれば、需給バランスの面で価格の低下要因になる恐れはありますが、これから増資を行ってくるREITについては、きちっとしたエクイティストーリーを描いた、言うなれば投資家にとって魅力のある増資になる可能性が高いと思われます。

その意味では、増資によって一時的に価格が下落するリスクはありますが、中長期的に見れば、国内REIT市場の活性化につながってくるはずです。したがって、必要以上に増資が増えることを懸念する必要はないでしょう。

それ以上に、今後は地方銀行などによるREITの買いが加速する可能性もあります。一般の株式の市場が低迷し、他に有望な投資対象が乏しいからです。一方で、REITに投資すれば、約6%という高い配当利回りが期待されますから、今後、ポートフォリオにREITを組み入れる動きが広まっていくでしょう。加えて、REITを運用対象とするファンド・オブ・オブ・ファンズが申し込みを再開する動きも出てきましたし、市場対策として日銀によるREITが買入額の上限を見直す可能性も期待されます。

したがって、海外要因や増資リスクなどは考えられますが、一方でREITに投資したいというニーズも確実にありますから、マーケットが大混乱に陥るリスクは低いと考えられます。

 

仮に10月以降、REIT市場が回復してくるとしたら、
どのようなREITが買われるのでしょうか。

石澤まず、足元で買われるのは上位REITです。配当利回りは相対的にやや低めですが、流動性がしっかりしているので、地方銀行、投資信託、日銀、あるいは外国人投資家にとっても、ポートフォリオに組み入れやすいからです。

ただし、上位REITは価格も上昇していますから、配当利回りが低下していきます。配当利回りが4%を割り込むような状況になると、割高感が浮上してくるので、逆に売りが出てくることも考えられます。したがって、配当利回りの動向には注意が必要です。

恐らく、上位REITの物色が一段落した後から、徐々に中堅REIT、あるいは下位REITへと物色が広がっていくと思います。なお下位REITについてはホームページなど、開示された決算・財務内容を十分チェックして投資することを心がけましょう。

新規上場の動向は?

やはり大事なことは、大きなネガティブイベントがあるかどうかという点です。もし深刻なネガティブイベントがあれば、新規上場も行いにくい状況になりますが、特にネガティブイベントが無ければ、徐々に新規上場も出てくるでしょう。東証REIT指数が1,000~1,100ポイントくらいまで回復してくれば、新規上場も具体的に動き出すと見ています。

 

掲載日:2011年10月21日

石澤卓志(いしざわ たかし)氏プロフィール
みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。
慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。
長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。

 

 

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