専門家インタビュー

■第8回

REIT指数は3月末までに1000ポイント乗せか

2011年初め、1100ポイント台でスタートした東証REIT指数は、東日本大震災、欧州債務危機などの影響を受けて、2011年11月28日には805ポイントまで下落しました。そこで大底を確認し、3月時点では960ポイント台まで上昇しています。今後のREIT市場の動向について、みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志さんに伺いました。


みずほ証券チーフ不動産
アナリスト石澤卓志氏

目先、東証REIT指数は上昇傾向をたどりますか?

石澤東証REIT指数は1月下旬から上昇傾向をたどっています。恐らく3月末までに1000ポイントに乗せる動きになるのではないでしょうか。また、4月以降も上昇トレンドは続き、夏から秋口にかけて、1100ポイントくらいまでは上昇すると見ています。目先、マーケットについて強気で見ているのは、昨年までの下落要因が改善しつつあるからです。

第一に、地銀のロスカットが一段落してきたことが挙げられます。昨年3月までにREITに投資した後、11月くらいまでの下落局面で、購入したREITを持ち切れなくなった地銀などがロスカットの売りを出してきました。一般的に地銀などは、購入した価格に対して損失が2割~3割に達すると、ロスカットしなければならないといった社内規定が設けられていますが、それも昨年12月くらいには一段落しました。

第二に、投資信託の解約売りも一段落しています。昨年後半は、個人投資家の間で人気を集めたグローバルREITを組み入れたファンドの解約が相次いでいましたが、それも1月後半には山場を超えました。

こうした2つの売り要因が緩和されたことによって、徐々にREIT市場は活発になってきています。この勢いで目先、東証REIT指数は上昇傾向をたどるでしょう。

■図表1:東証REIT 指数等の推移
図表1

 

4月には新年度相場に入りますが、地銀などのREITに対する投資意欲はどうですか?

石澤地銀は1下旬から2012年度の投資計画の策定を始めますが、4月以降、REITへの投資が活発化する可能性があります。

というのも、他に良い投資対象がないからです。何しろ日本企業の業績はなかなか回復しないので、株価にはあまり期待できません。そのうえ、REITの配当利回りは5%台後半ですが、現状、これだけの利回りで運用できる金融商品は、少なくとも円建てのもので他にはないでしょう。したがって4月以降、REITが買われる可能性が高いと考えられるのです。

■図表2:J-REIT の平均配当利回り(時価総額加重平均)等の推移
図表1

 

増資計画はどうですか?

石澤昨年、市況が厳しいなかでも複数の公募増資が行われましたが、ほとんどはディスカウント増資でした。市況悪化で価格が回復していないのにも関わらず、増資が行われたため、さらに価格が下落するという悪循環にはまっていたのです。

ただ、昨年12月にカラ売り規制がかけられたことによって、公募増資が行われる銘柄をターゲットにしたカラ売りが仕掛けにくくなりました。結果、公募増資によって価格が下落するリスクが改善しました。

本来、REITが成長していくためには、いかにエクイティ・ストーリーが描けるかという点が重要になってきます。増資を行って調達した資金を、ファンドに組み入れる優良物件の購入に充てる必要があるからです。逆に優良物件を組み入れることができなければ、分配金の水準を維持できず、結果的にREITの成長は期待できなくなります。

したがって、これはREITを選ぶ際の基準にもなりますが、将来の成長のため、きちっと公募増資を行い、その調達資金で優良物件を組み入れているかどうかという点が重要になってくるのです。

 

現物の不動産市況はどうですか?

石澤オフィスビルの市況動向はデータ上過去最悪です。三鬼商事の調査によれば、1月末時点の東京都心5区の空室率は平均で9.23%と最悪水準にあります。でも、時間は多少かかると思いますが、こうした空室率も徐々に低下していくでしょう。オフィスビルの大量供給は今年9月くらいまで続くので、それまで厳しいと思われますが、それ以降は空室率が低下し、半年ほど遅れて賃料も上がっていくと見ています。

また、3月22日に公示地価が発表される予定ですが東京圏の地価は下落幅が縮小し、ほぼ横ばいになると予想されます。

一方で、住宅市況は堅調です。震災後の住宅販売動向を把握するうえでのベンチマークになると言われていた野村不動産の「プラウドタワー東雲キャナルコート」は、第一期販売分が完売になりました。特に震災以降、都内に勤務場所がある人からは、出来るだけ職場の近くに住みたいというニーズが高まってきています。震災で帰宅難民になった経験が、こうしたニーズにつながっているのでしょう。そのため、多少値段が高くても、都内に住まいを持ちたいという人が増えているようです。実は、住まいという点では持家だけでなく、東京圏内の社員寮建築も増えています。これまではリストラの一環として社員寮や社宅を廃止する企業が多かったのですが、震災で企業の防災体制が問われたことなどが、新たな住宅投資につながっているようです。

このように、徐々にではありますが、良い材料が増えてきています。したがって、現物不動産のマーケットは、全体的に良い方向に進んでいると見ています。

 

新規上場の予定はどうなっていますか?

石澤REITの上場は2007年以降ストップしています。サブプライムショック、リーマンショック、そして欧州債務危機など、さまざまな問題が噴出するなかで、国内REIT市場の動向も芳しくなく、新規上場が出来る状況ではありませんでした。

しかし、2012年はいくつかの新規上場が検討されていると聞いています。設立母体としては東急不動産、ケネディクスなどです。今年中に複数銘柄が上場してくるのではないかと期待しています。

 

REITの投資家別保有比率を見ると、
金融機関、外国人投資家で7割以上を占めています。
対して個人投資家の保有比率は13.5%ですが、
今後、個人投資家の保有比率はどうなるのでしょうか。

石澤確かに、投資家別保有比率を見ると、個人投資家の保有比率は13.5%と低くなっています。ただ、個人投資家の場合、ファンド・オブ・ファンズを通じて間接的にREIT投資しているケースもあります。ファンド・オブ・ファンズを通じて投資されている分は、金融機関の44.2%に含まれているので、実際のところ、個人投資家のREIT保有比率は、もう少し高くなると思います。

もっとも、そのような要因があるにしても、個人のREITに対する認知度は、まだそれほど高いとは言えません。恐らく、関心は持っていると思うのですが、REITへの投資はキャピタルゲインそのものを狙いに行くというよりも、配当利回りを重視して投資するものです。

ところが、日本の個人投資家は配当利回りを重視した投資が苦手のようで、途中でREITの価格が急落すると、動揺して売ってしまったり、あるいは全く投資しなくなってしまったりします。このような問題があるにしても、日本に不動産投資信託の上場マーケットが創設されて、昨年がちょうど10周年。今年は「新たな10年」のスタートを切った年です。10年も経てば、多少なりとも個人の認知度も上がってきていますから、順調にREITの取引価格が上昇していけば、投資対象として興味を持つ個人投資家も増えていくのではないかと考えています。

 

欧州債務危機は日本のREIT市場に、何か影響を及ぼしますか?

石澤基本的に、欧州債務危機の問題が、日本経済に直接影響する部分は僅かです。ユーロ経済圏と貿易などで密接なつながりを持っている米国、アジア各国が、ユーロ経済低迷の影響を受け、間接的に、日本経済にもマイナスの影響が及ぶことが中心です。ただ、それはあくまでも間接的な影響なので、ある程度まで軽減することができます。むしろ、騒ぎ過ぎともいえるでしょう。

また、不動産投資をする場合、アジアでは日本以外だと、なかなか投資しにくい面があります。中国の不動産はバブル化しているとの指摘がありますし、韓国には北朝鮮リスクがあります。タイは洪水の問題もありましたが、やはり政治面での不安定さがリスクになります。こうして考えると、日本は地震リスクが高いものの建物の耐震化を進めるなど一定の備えがあり、投資環境が安定している点が海外投資家の間でも再認識されつつあります。

その意味では、投資資金が再び日本に戻ってくる基盤が整ってきたともいえるでしょう。

 

日米欧が金融緩和を行うなか、だぶついたお金が不動産市場に流れ込み、
ミニバブル化することは考えられますか?

石澤その可能性はあると思います。というのも、2007年まで日本のREIT市場には、世界的な金融緩和局面でだぶついたお金が、どんどん流入してきました。結果、東証REIT指数も大幅に上昇してピークをつけたのです。現在も、米国では2014年末まで超低金利を維持する方針が打ち出されていますし、欧州でも3年物資金供給オペによって、莫大な資金が市中に放出されました。日本も1%を目途とする物価目標値を定め、実際に消費者物価指数の上昇率が1%に達するまで、金融緩和を継続する予定です。

これだけ金融緩和が行われるわけですから、だぶついたお金は必ずどこかの投資先に向かうはずです。そのひとつが日本のREIT市場になる可能性も否定できないでしょう。投資資金の急増には問題も多いのですが、今年の秋口にかけて日本のREIT市場が注目される可能性は高いといえます。

 

 

掲載日:2012年3月30日

石澤卓志(いしざわ たかし)氏プロフィール
みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。
慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。
長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。

 

 

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