専門家インタビュー

■第16回

秋口にかけて投資チャンス到来か?

東証REIT指数は4月5日に1,717ポイントまで上昇。その後、調整を経ながら、7月5日時点では1,395ポイントまで下がってきました。今後の展開はどうなるのか。SMBC日興証券のシニアアナリスト、鳥井裕史氏に話を伺いました。

株式市場と同様、J-REITのマーケットも調整をしています。
東証REIT指数は、4月5日のピーク時からすれば18%程度の下げになっていますが、
マーケットの地合いそのものはどうですか?

鳥井決して悪い環境ではないと思います。オフィスの空室率は堅調に改善へと向かっていますし、賃料の下げ止まり傾向も見られるようになってきました。さらに言えば、クレジット市場におけるリスクプレミアムも低下していますし、増資によって積極的に物件取得が進められてきたので、それによる外部成長で増配も期待できます。ファンドの運用環境そのものは非常に良い状況です。

ただ、気になるのは長期金利の推移ですね。仮に長期金利が0.5%〜1.0%程度で落ち着いた推移を続けてくれれば、東証REIT指数は1,550〜1,800ポイントをターゲットにすることができます。

■図表:利付国債(10年)週足
図表1

 

長期金利の上昇が、目下のところ懸念材料ということですか?


SMBC日興証券株式調査部
シニアアナリスト鳥井裕史氏

鳥井何しろ長期金利の動きに落ち着きがないものですから、それがJ-REITのマーケットにとってはかく乱要因になっているようです。

現在のJ-REIT市場は、日本の不良債権問題が一段落した2004年前半動きに似ています。この時は不良債権問題が解決したことから、長期金利が上昇へと転じ、J-REITの価格は下落しました。結果、J-REITの分配金利回りから10年国債利回りを差し引いた分配金利回りスプレッドは、2.5%〜3.0%程度で推移しました。

この分配金利回りスプレッドの前提で考えると、もし長期金利が1%で落ち着いた推移を続けてくれるなら、J-REITの分配金利回りは3.5%〜4.0%になります。そのうえで外部成長によってポートフォリオの収益性が改善し、クレジット市場の環境も好転すれば、1,550〜1,800ポイントが期待できます。これにオフィス賃料の上昇が加われば、東証REIT指数は2,050ポイント程度の上昇が見えてきます。

ただし、長期金利がさらに上昇し、クレジット市場の環境が悪化するというネガティブシナリオを想定すると、東証REIT指数は1,280ポイント程度まで下落するでしょう。したがって、これから長期金利がどうなるのかという点は、J-REITに投資するうえで重要な判断材料になります。

■図表:東証リート指数
図表1

 

オフィス賃料は上昇しそうですか。

鳥井まず、不動産賃貸市場の現状をオフィス、住宅、商業施設、物流・インフラ施設に分けて整理してみましょう。

オフィスは徐々に改善傾向を見せています。東京都心のオフィス空室率は2012年後半に比べて改善してきました。賃料も2013年後半には底入れすると見られています。実際、都心にあるAクラスのビルは、賃料が明らかに上昇しています。

問題は、実際にJ-REITに組み入れられている物件の賃料が上昇するかどうかという点です。というのも、J-REITに組み入れられている物件は2年契約、あるいは3年契約というパターンが多いため、今、賃料が上昇に転じたとしても、実際にJ-REITに組み入れられている物件の賃料が上昇するまでには、若干のタイムラグがあるのです。それがようやく反映されるのが、来年あたりからだと考えています。

次に住宅ですが、賃貸住宅の空室率は安定的に推移しており、東京圏への人口流入も継続していますから、需給関係は悪くありません。むしろ景気が悪化した場合、住宅は安定したキャッシュフローを生んでくれますから、こうしたディフェンシブ性に注目するべきでしょう。

そして商業施設、物流・インフレ施設ですが、こちらは消費環境が改善傾向にあることに加え、ネット通販の広がりによって物流施設に対するニーズが高まっています。
このように見ると、オフィス賃料に限らず、総じてJ-REITに組み入れられている物件の賃料は上昇の可能性が高いと考えられます。

 

そうなると、
今の価格水準はむしろ投資するには非常に良いところにあると考えられますか。

鳥井そうですね。4月5日に東証REIT指数は1,717ポイントまで上昇したわけですが、あそこまで急に上昇すると、いささか投資しにくい状況になります。

でも、今のように1,300ポイント台まで低下してくると、分配金利回りベースで投資できるようになります。現在、J-REITの分配金利回りは4%程度ですから、長期金利などに比べても優位です。長期で保有する投資案件として、J-REITは今、非常に魅力的な環境下にあると考えています。

実際、J-REITを長期保有した時のメリットは、すでに過去の運用実績からも十分に分かると思います。2001年から2013年までJ-REITを保有した場合のリターンは、配当込みで150%近くになります。もちろん、12年間の運用期間中には、価格が大きく上昇したり、逆に下落したりする場面もありますが、年4%前後の分配金を継続的に受け続けていけば、それだけでも高いリターンが期待できます。ちなみに年平均で4%という分配金利回りが得られたとすると、12年間の保有期間で得られるリターンは48%にもなります。これは、他の投資対象にはないメリットのひとつといえるでしょう。

さらに言えば、インフレ期待もJ-REITの運用実績を押し上げる要因になります。アベノミクスでうまくデフレ経済からインフレ経済への転換を図ることができれば、物価が上がり、インフレリスクヘッジとして不動産が買われます。言うまでもなくREITは不動産を組み入れた投資信託ですから、インフレ期待が高まればNAVが上昇します。したがって、J-REITが買われる可能性が高まります。

これらの要因を考えると、市場全体の価格が落ち着いている今は、J-REITに投資する好機ともいえるのです。

 

掲載日:2013年8月7日

鳥井裕史(とりい ひろし)氏プロフィール
SMBC日興証券株式会社株式調査部シニアアナリスト
大和総研及び大和証券SMBC(現・大和証券CM)において
年金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に従事した後、
2006年よりREIT専門のアナリスト業務に従事。
2010年10月より現職。
InstitutionalInvestor誌「2012All-JapanResearchTeam」REIT部門で1位を獲得。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認定マスター

 

 

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