専門家インタビュー

■第17回

目先調整 今後の上昇に期待

春先、1,200ポイント台まで低下していた東証REIT指数が、9月30日にかけて、1,510ポイントまで回復しました。その後、調整局面に入っていますが、2020年の東京オリンピック開催が決まり、東京の不動産に対する需要が高まりそうな気配も高まっています。今後のREIT市場はどうなるのか。SMBC日興証券の鳥井裕史氏に話を伺いました。

10月に入ってREIT市場が調整に入っています。
高値警戒感が浮上しているのでしょうか。


SMBC日興証券株式調査部
シニアアナリスト鳥井裕史氏

鳥井ポジション調整が進んだ結果の下げ相場と見ています。10月から下期に入るということもあり、REITを保有していた地方銀行などが利益を確定させるために売却してきたこと。投資信託も、9月の相場がかなり強かったため、利益が乗っている銘柄を売却して、利益を確定させる動きが散見されました。

REIT市場は8月まで弱い相場展開が続いていましたが、9月に東京オリンピックの開催が決まったことが、需給面にポジティブな影響を及ぼしました。J-REIT特化型ファンドの純資産残高は、8月末時点では1兆6,000億円程度でしたが、9月末には2兆円を突破し、27%も増えています。投資信託の純資産残高は、組入資産の値上がりによっても増加しますが、J-REIT特化型ファンドに1,600億円弱の資金流入が確認されています。

恐らく、東京オリンピックの開催が決まらなかったら、需給面はもっと厳しい状況になっていたでしょう。

 

そうなると、この下げ局面は一時的なもので済みそうですか。

鳥井ファンダメンタルズは非常にしっかりしていると思います。長期金利は0.6%前後で推移しており、今後、急激に上昇する可能性は極めて低いでしょうし、オフィスビルの空室率も低下傾向をたどっています。こうした点から見ても、10月に入ってからの下落は、一時的な調整局面だと考えています。

9月末時点におけるJ-REITの平均配当利回りは3.5%程度です。これに対して長期金利が0.6%前後ですから、一応、3%程度のスプレッドはあります。この程度のスプレッドがあれば、そうそうJ-REITが売り込まれるようなことにはならないでしょう。東証REIT指数で1,450ポイント程度まで下げたら、そこからしばらく上昇トレンドが続くと思います。

 

日銀による買いはこれからも続くのでしょうか。

鳥井日銀による買入額の実績を見ると、今年4月までは2ケタ億円の買いが行われていましたが、その後は急速に買入額が減少し、2013年6月4日以降、10月1日まで12回行われた買入れの金額は、各回とも1億円でした。

今後、マーケットが急落するような状況になれば、日銀による買入が行われるかも知れませんが、少なくとも現状、日銀が積極的にJ-REITを買う理由がありません。言うまでも無く、9月末にかけてJ-REIT市場が上昇トレンドにあったからです。

9月末時点における、J-REIT市場全体のNAV(ネットアセットバリュー)倍率は1.4倍です。この数字が1倍に近づくか、それを割り込むほどの状況になれば、改めて日銀による買入にも期待できそうですが、NAV倍率が1.4倍ということは、まだまだ増資しやすい状況にあります。資金調達面で状況に陥っているわけではないので、日銀としても当面は、静観するはずです。

もちろん、これから先、景気が大きく後退するようなことになれば、話は別です。消費税の増税が決まったことによって、景気が冷え込むようなことになれば、J-REITのマーケットも下落します。そうなれば、日銀によるJ-REIT市場の買い支えも行われますが、そうでない限り、日銀の買い支えはないとみて良いでしょう。

■図表:東証Jリート指数
図表1

 

東京オリンピックがJ-REITに及ぼす影響は?

鳥井個別具体的な事例を挙げると、ホテルを組み入れて運用するREITなどは、すでにマーケットで買われています。何しろオリンピックは世界最大のコンテンツですから、これを機に日本を訪れる外国人観光客も増えていくでしょう。ホテルREITというのは、ホテルの利益に対して価格が連動する傾向があるので、投資しやすい側面があります。現在のホテルREITの配当利回りはJ-REIT市場全体の中では高めです。今後の成長期待もあるので、当面、注目されるでしょう。

またホテルREITに限った話ではないのですが、東京オリンピックの開催によって東京都内の不動産価格は上昇するでしょうし、その特需によって景気が拡大すれば、オフィス賃料なども上昇していくはずです。その意味でも、日本のJ-REIT市場の先行きは堅調に推移していくと見ています。

年末にかけての動きはどうなるでしょうか。

鳥井今のJ-REITを取り巻く投資環境は、2004年から2005年にかけての状況に似ています。賃料の上昇は期待しにくいものの、長期金利と配当利回りとのスプレッドが3%程度あり、それがJ-REITの買い意欲を誘発するという構図が見られます。

年末の見通しですが、このまま長期金利とのスプレッドが3%で維持されるとしたら、東証REIT指数で1,550ポイントがひとつの目処になるでしょう。

そして、年明け以降は、オフィスビルなどの賃料が上昇するかどうかがポイントになります。長期金利が1%程度だと仮定した場合、賃料が10%上昇すれば、東証REIT指数は1,800ポイント。賃料が20%上昇すれば、東証REIT指数は2,000ポイントを目指すことになります。

ただし、あくまでも賃料が上昇しなければなりません。ちなみに東証REIT指数が1,800ポイントに達した時の配当利回りは3%、東証REIT指数が2,000ポイントに達すると、配当利回りは3%を割り込んできます。ここまで価格が上昇することを正当化するためには、賃料の上昇が何よりも求められます。

 

投資して安心できるJ-REITを選ぶ場合に注意するべき点は?

鳥井投資家動向を見ると、銀行は基本的に買いですし、投資信託も個人のJ-REIT特化型ファンドに対するニーズが非常に根強いので、全体的に買い意欲は高いと見ています。ただ、買われる、買われないというのは、やはり最終的には個別銘柄の成長度合いにもよるでしょう。

たとえば物件別に見ていくと、商業施設系のREITはやや一服感が強まってきていますが、ホテル系のREITはこれからもまだ成長が期待できそうです。

また、銘柄を選ぶ際には、内部成長力に注目すると良いでしょう。内部成長というのは、すでにファンドに組み入れられている物件による成長を指しています。具体的には、物件の賃料を引き上げる、あるいは物件の稼働率を引き上げる、といったことによって、より大きな配当金を投資家に還元できるかどうかという点が問われます。

それと共に、スポンサー企業といって、そのファンドの大株主が経営的にしっかりしているのかどうかという点や、継続的に物件を取得し続けられる力があるのかどうかという点も、見極めておくと良いでしょう。

 

いよいよNISAの口座開設受付がスタートしました。
J-REITをNISAの運用に活用するにはどういう方法が考えられますか。

鳥井正直なところ、J-REITの個別銘柄投資は、NISAの運用には不向きです。というのも、大手のJ-REITになると、最低投資金額が100万円を超えてしまうからです。NISAは年間100万円という投資金額制限が設けられているので、この手のメジャーな銘柄を買うことができません。

もし、個別銘柄に投資するならば、住宅系よりもオフィスビル系、商業系よりも物流系という順位で、銘柄を選別すると良いでしょう。住宅系の場合、確かに配当は安定していますが、これから先、大きく配当金が増えるかというと、なかなかそうはいきません。それに対して物流系は、今、大都市圏を中心にしてインターネット通販の物流拠点を設ける動きが活発化しています。空室率が0%にほぼ近い水準なので、賃料引き上げも十分に考えられます。

ただ、個人がNISAでJ-REITに投資するならば、現実的なところでは、やはりJ-REIT特化型ファンドを買った方が良いと思います。配当金がしっかり得られるだけでなく、さまざまな銘柄に分散投資されているので、リスクコントロールもしっかりしています。NISAは長期的な財産形成のために設けられた非課税制度です。その特性を活かすには、長期で保有できるファンドをしっかり選んだ方が良いでしょう。

 

参考コンテンツ

Fanet MoneyLife Jリート一覧 http://money.fanet.biz/reit/index.html

 

掲載日:2013年11月22日

鳥井裕史(とりい ひろし)氏プロフィール
SMBC日興証券株式会社株式調査部シニアアナリスト
大和総研及び大和証券SMBC(現・大和証券CM)において
年金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に従事した後、
2006年よりREIT専門のアナリスト業務に従事。
2010年10月より現職。
InstitutionalInvestor誌「2012All-JapanResearchTeam」REIT部門で1位を獲得。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認定マスター

 

 

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