専門家インタビュー

■第20回
SMBC日興証券のシニアアナリスト、鳥井裕史氏に聞く
ヘルスケア特化型REITの特徴と投資のポイント

「社会的意義は高い。投資対象としてどう見るか」

成長戦略の一環として注目されているのが「ヘルスケア特化型REIT」です。現状では、まだ上場はされていませんが、複数のファンドが立ち上がりました。今後、それらが上場に向けて動き出すでしょう。


SMBC日興証券株式調査部
シニアアナリスト鳥井裕史氏

ヘルスケア特化型REITは、「サービス付き高齢者向け住宅」と「有料老人ホーム」が投資主体になります。介護事業者等が、これらヘルスケア施設のオペレーターとして施設運営を行い、ヘルスケア特化型REITは、そのオペレーターと賃貸借契約を結び、分配金の原資となる賃料を得ます。

社会的な意義は非常に大きいと思います。現状はまだオペレーターの資金需要もそれほど高まっておらず、したがってヘルスケア特化型REITを通じて投資できる物件の数自体が少なくのですが、将来的には非常に大きなマーケットになるでしょう。何しろ、日本は超高齢社会に突入するのですから。

具体的に数字を上げると、2013年9月15日時点の65歳以上の高齢者人口は3,186万人。これが2020年には、3,612万人まで増加し、高齢者の単身・夫婦世帯は2010年の1,038万世帯から、2020年には1,319万世帯へ増加することが予想されています。

こうしたなか、2013年末には15万戸であるサービス付き高齢者向け住宅を、2021年までに60万戸にするのが政府の目標です。つまり現状比較で45万戸を増やすことになるわけですが、仮に1戸あたりの価格が2,000万円だとすると、45万戸で9兆円。1戸あたりの価格が3,000万円だとすると、13兆円の開発資金が必要になってきます。

これを、現在のオペレーターだけで資金調達をし、開発することが本当に可能なのかどうかを考えると、残念ながら厳しいと言わざるを得ません。

したがって、ヘルスケア特化型ファンドを通じて資金調達をし、ヘルスケア施設を作っていく必要があります。その意味において、ヘルスケア特化型ファンドは、極めて社会的意義があると言っても良いでしょう。

ただ、社会的意義はあるかも知れませんが、投資対象として見た場合、果たしてどこまで魅力的なのかという点は、熟考する必要があると思います。

第一に、仮に今後インフレになったとしても、賃料の上昇には期待できないこと。オフィスビルであれば、インフレの進行と共に賃料の上昇が期待できますが、ヘルスケア施設の場合、入居している高齢者の負担増につながる賃料の引上げをどんどん行うのは難しいでしょう。下手をすれば、社会的非難の対象になる恐れがあります。

第二に、オペレーターと20年という長期契約を締結する必要があること。ヘルスケア特化型ファンドの場合、1棟丸貸しになるため、もしオペレーターが破綻したら、賃料収入に大きな影響が及ぶ恐れがあります。100のキャッシュフローが、いきなり0になるリスクがあります。

したがって、オペレーターの信用力が何よりも重要です。オペレーターがしっかりしたところであれば、むしろオフィスビル特化型ファンドなどに比べても、はるかに安定した分配金収入が期待できます。

そう考えると、やはりオペレーターにはしっかりと経営内容などのディスクローズが求められます。オペレーター側からすれば、痛くもない腹を摩られる思いがあり、ディスクローズにはいささか消極的な声も聞こえてきますが、オペレーターの透明性を高めない限り、ヘルスケア特化型ファンドの市場拡大には期待できません。REIT側とオペレーター側との意識の差を刷り合わせる努力が、双方に求められます。

 

 

掲載日:2014年7月15日

鳥井裕史(とりい ひろし)氏プロフィール
SMBC日興証券株式会社株式調査部シニアアナリスト
大和総研及び大和証券SMBC(現・大和証券)において
年金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に従事した後、
2006年よりREIT専門のアナリスト業務に従事。
2010年10月より現職。
InstitutionalInvestor誌「All-JapanResearchTeam」REIT部門で2012年、
2013年ともに1位を獲得。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認定マスター

 

 

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