■第21回

東証REIT指数は年末1,800ポイントを目指す展開に

東証REIT指数は順調に値上がりし、3月20日に1,444.76ポイントを付けた後、上昇トレンドに入り、6月20日には1,617.07ポイントまで上昇。年初来高値を更新する動きも見られます。ヘルスケア特化型ファンドの上場も控えて活気づくJ-REIT市場。この上昇ムードは今後も続くのでしょうか。SMBC日興証券のシニアアナリスト、鳥井裕史氏にこれからの動向を伺いました。


SMBC日興証券株式調査部
シニアアナリスト鳥井裕史氏

上昇に加速が付いてきました。
若干、スピード違反という感じもしないではありませんが、
マーケットは過熱ぎみというわけではありませんか。

鳥井昨年末の東証REIT指数が1,515ポイントで、5月末が1,560ポイントでしたから、順調に上昇トレンドをたどっています。マーケットが過熱ぎみかどうかという点ですが、正直、まだ想定内の動きと見て良いでしょう。私どもは今年末にかけて1,800ポイントまで上昇すると見ています。

現在、J-REITを取り巻く環境は極めて良好です。ファンダメンタルズを見れば、オフィスビルの賃料は改善傾向を辿っており、分配金の向上が期待できます。

あるいは需給面に目を向けると、J-REIT特化型ファンドへの資金流入が続いており、これがJ-REITの旺盛な買い意欲につながっています。また今年に入ってから、昨年に比べてエクイティファイナンスが明らかに減少しています。これらの結果、J-REIT市場の需給バランスは、かなりタイトになっています。

現状、J-REITの分配金利回りは3.5%前後。これに対して長期金利は0.6%という低水準であり、長期金利とJ-REITの分配金利回りとの間には、依然として3%程度のスプレッドがあります。この水準なら、地方銀行などの買いも入ってくるため、堅調な動きが期待できそうです。

 

目先の目標値はいくらでしょうか。

鳥井東証REIT指数で言えば、年末までに1,800ポイントというのが当面の目標値でしょう。今、申し上げましたようにJ-REIT市場の外部環境は良好なので、年末1,800ポイントというのは、極めて現実的な水準です。

ちなみに、オフィスビルの賃料が20%上昇すれば、2,000ポイントも見えてきます。そうなると、賃料は今後どうなるのか、という点が注目されますが、現状、オフィスビルの賃料は、前述したように上昇傾向を辿っています。今年1月から、都内5区のオフィスビル賃料は、若干ではありますが、上昇してきました。結果、東証REIT指数が1,450〜1,500ポイントのボックス相場を上放れしてきたわけですが、今後、1,800ポイントを超えて2,000ポイントに達するためには、オフィスビル賃料の更なる上昇が必要になってきます。

ただ、オフィスビルの賃料が上昇するというのは、それだけ景気が好転していることを意味します。景気が好転すれば長期金利は上昇傾向をたどります。オフィスビル賃料の値上がりによって、分配金利回りに上昇期待が強まる半面、長期金利も上昇する可能性があるので、3%というスプレッドを維持できるかどうか、駆け引き状態になるでしょう。

■図表:東証リート指数
図表1

 

J-REITはオフィスビルだけでなく、
商業施設やレジデンス、物流施設などにも投資しています。
オフィスビル以外の不動産市況は、東証REIT指数にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

鳥井これまでJ-REITの成長戦略は、エクイティファイナンスを通じて集めた資金で物件を購入し、そこから得られる賃料収入によって分配金利回りを高めることによって支えられてきました。

しかし、現状は成長戦略に沿うだけの優良な物件がかなり不足しています。それは、海外ファンドが積極的に日本の物件を買い付けているからです。結果、物件価格が上昇してしまい、利回りが期待できる物件が減ってきています。したがって、今後の成長戦略は、J-REITが保有している物件の賃料上昇に掛ってきます。

それを考慮に入れると、賃料上昇に対する感応度の高い物件は何かという点が、東証REIT指数の先行きにとっては重要なファクターになってきます。

たとえば、オフィスビルの場合、賃料の見直しは2年に1度の頻度で行われます。したがって、オフィスビル特化型のJ-REITは、景気の好転に伴う賃料上昇が、分配金利回りに反映しやすくなります。

これに対して、他の不動産物件はどうなのかというと、たとえば商業施設の契約期間は10年超に及ぶものも多く、短期的な景気の波によって賃料相場が上昇しても、ファンドに組み入れられている物件には反映されにくいのが現実です。

また、レジデンスも同じく、景気の波の影響を受けにくいといえるでしょう。何しろ住む場所ですから、景気の浮き沈みで頻繁に賃料が改定されてしまうのは、望ましくありません。逆に、この手の物件というのは、景気の良し悪しに対して、分配金の額があまり影響されないとも言えます。

現状、オフィスビル並みに景気の影響を大きく受けるものとしては、ホテルREITが挙げられるでしょう。ホテルREITの場合、売上動向が分配金の額に影響を及ぼします。つまり、景気が好転してホテルを訪れるお客様の数が増えたり、宿泊料が上昇したりすれば、売上が増えて、分配金も増額されるという流れになるのです。

ただ、現状ではホテルREITは2本しか上場されていませんので、東証REIT指数への影響度は、それほどでもありません。結果、オフィスビルの賃料相場が、東証REIT指数には大きく影響すると考えられるのです。

 

東証REIT指数が1,800ポイントに達した後、
さらに上昇する可能性はありますか。

鳥井前述したように、2,000ポイントがひとつの山場になるでしょう。J-REITへの投資意欲を維持するためには、長期金利とのスプレッド3%というのが、ひとつの目安になっています。J-REITは長期国債に比べてリスクがありますから、そのリスクプレミアムを上乗せして3%、あるいは2.5%程度のスプレッドがないと、J-REITへの投資意欲が後退します。

しかし、これから先、東証REIT指数が1,800ポイントを超えて上昇すると、J-REITの分配金利回りは低下し、長期国債とのスプレッドも狭まります。だからこそ、東証REIT指数が1,800ポイントを超えて2,000ポイントを目指すためには、オフィス賃料の上昇が不可欠になるのです。

 

 

掲載日:2014年7月15日

鳥井裕史(とりい ひろし)氏プロフィール
SMBC日興証券株式会社株式調査部シニアアナリスト
大和総研及び大和証券SMBC(現・大和証券)において
年金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に従事した後、
2006年よりREIT専門のアナリスト業務に従事。
2010年10月より現職。
InstitutionalInvestor誌「All-JapanResearchTeam」REIT部門で2012年、
2013年ともに1位を獲得。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認定マスター

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