■第24回
みずほ証券経営調査部上級研究員 石澤卓志氏に聞く

不動産投資の形態が多様化する

堅調に推移している東証REIT指数。年内1800ポイントの声も高まっていますが、果たして今後の行方はどうなるのか。みずほ証券経営調査部上級研究員の石澤卓志氏に話を伺いました。

高値圏での推移が続くJ-REIT市場ですが、
東証REIT指数はまだ上昇の余地があるのか、それとも調整に入るのか、簡単な現状整理と今後の見通しを教えてください。


みずほ証券経営調査部
上級研究員 石澤卓志氏

石澤相変わらず安定運用が続いています。5、6月あたりから東証REIT指数は堅調に推移し、8月29日に1648ポイントまで上昇しました。多少、高値警戒感も浮上してきたのでしょう。指数の値動きはその後、横ばいが続いています。恐らく年末にかけて、1700ポイントを目指した動きになると思いますが、総じて安定的な値動きであり、大きく上昇することはないでしょう。現在、J-REITの配当利回りと長期国債利回りの差にあたるスプレッドは3%を切っています。J-REIT市場に参加している投資家は、もう少しスプレッドが欲しいと考えていますから、長期金利が横ばいだとしたら、多少、J-REITの市場価格は調整すると見て良いでしょう。恐らく来年1〜3月期にかけて調整する場面もあると考えています。

 

J-REITの投資環境は良くもなく、
悪くもなくというイメージですか。

石澤J-REITの価格変動要因は大きく3つに分かれます。現物不動産市場の動向、投資家の需給動向、そして金利動向です。このうち現物不動産市場は回復傾向を示しています。基準地価はやや過熱気味ではありますが、東京都心部ではオフィス供給が減少しており、需給バランスは改善傾向にあります。恐らく2016年くらいまで、オフィス市況は堅調に推移するでしょうし、2020年は東京オリンピックですから、その需要に絡めて、国内不動産市況は堅調だと思います。

次に投資家の需給動向ですが、地方銀行などの金融法人は、相変わらずJ-REIT投資に高い関心を示しています。が、やはり利回りが低下してきたこともあり、高値警戒感が高まってきたのも事実です。最近、金融法人は上場されているJ-REITよりも、私募REITに投資するケースが増えています。とはいえ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日銀など公的資金によるJ-REITへの投資が期待されます。また、企業年金がJ-REITに投資する例も増えてきたようです。

そして金利動向ですが、米国の金利は、これから上昇する可能性が高まってきます。しかし、当面の間、日本の金融政策に大きな変更はなく、金利が上がったとしても今後6か月から1年で最大0.5%程度とみています。したがって、日本の金利動向がJ-REITの値動きに及ぼす影響は、ニュートラルと考えています。

 

来年1〜3月にかけて調整すると考える根拠は?

石澤J-REITの投資主体別保有比率を見ると、金融機関の比率が49.1%で約半分を占めています。3月はその金融機関の決算が集中します。多くの金融機関は、決算対策で含み益を抱えている有価証券を売却するため、J-REITは全般的に値上がりしにくくなると見ています。

そのうえ、現在のJ-REITのNAV倍率を見ると、平均値は1.4倍超です。NAV倍率というのは、株式でいうPBRに似た指標です。NAV(Net Asset Value)とはファンドに組み入れられている不動産の時価を考慮した資産総額です。

NAV倍率とは、投資口価格を1口あたりNAVで割ることによって、現在の投資口価格が、純資産総額に対して割高か割安かを見るためのものです。この倍率が1倍を超えて上昇するほど、割高と考えられます。

つまりNAV倍率の平均値が1.4倍ということは、全般的にJ-REITが割高であることを意味します。そのぶん銀行の決算にともなって売りが増えれば、下げ余地が広がります。恐らく1600ポイントを割るかどうかの水準まで下げてくるでしょう。

 

J-REITの配当利回りと長期金利のスプレッドは
3%がリーズナブルと考えて良いのでしょうか。

石澤現状は3%が妥当と考えられていますが、かつてJ-REIT市場が安定していた2004年〜2006年半ばのスプレッドは2%程度でした。したがって、スプレッドが今以上にタイト化してもおかしくないという意見は、マーケット関係者の間でもあります。

ただ、2%のスプレッドは市場がまだそれほど大きくなかった頃の話です。今は市場規模も大きくなりましたし、不動産のリスクプレミアム(無リスク資産に対する利回りの上乗せ幅)が3%程度ですから、不動産事業の収益のほとんどを投資家に還元するJ-REITの配当利回りと長期金利のスプレッドが3%というのは、十分に妥当な数字だと思います。

したがって、来年1〜3月期にJ-REITが調整した場合、スプレッドが3%程度になる程度まで、J-REITの相場が下げることになるでしょう。

 

金融機関が投資している私募REITというのは、
どういうものなのですか。

石澤現在、運用されている私募REITは、全部で12法人あります。これに投資しているのは銀行、信託銀行、信用金庫、生損保などの金融機関が中心です。私募REITは、J-REITのように証券取引所には上場されません。したがって、その評価額は、上場REITのように変動せずに済みます。つまり、投資家は投資口価格の変動リスクを気にすることなく、長期にわたって安定的に配当金を受け取ることができます。

なお、私募REITのリターンは、現状ではJ-REITとほとんど同じです。本来ならレバレッジを高めたり、グレードの低い物件を組み入れたりして、ハイリターンが期待できる特性にすることもできるのですが、現在、設定・運用されている私募REITを見る限り、J-REITと同じように、レバレッジは低水準に抑え、かつグレードの高い物件を組み入れているのが大半です。なかなかリスクを取ったスキームに出来ないのは、投資家の大半が銀行をはじめとする金融機関だからだと思われます。

 

個人投資家の動向はいかがですか。

石澤REITを組み入れて運用するファンド・オブ・ファンズの運用本数を見ると、2013年11月くらいから大きく伸びています。これは、NISAへの対応が主な要因と考えられます。したがって、今年1月からNISA口座で投資できるようになってから、ファンド・オブ・ファンズの新規設定は、一時のブームに近い状態から比べれば、ピッチが落ちています。

ただ、個人投資家からすれば、REITそのものよりもファンド・オブ・ファンズを通じて投資するというスタイルの方が、恐らく性に合っているのだと思います。そもそもREITそのものを買おうとすれば、投資対象である不動産の種類によって異なる商品のリスク・リターン特性を把握しながら銘柄を選ぶ必要があります。これには、ある程度の知識も必要になりますし、何より最低投資金額が大きくなります。この点、ファンド・オブ・ファンズなら複数のREITへの分散投資が可能ですし、何よりも最低投資金額が1万円程度からで大丈夫です。その手軽さもあり、個人はファンド・オブ・ファンズを通じてJ-REITに投資するというスタイルが中心になっています。

したがって当面、個人の投資資金は、ファンド・オブ・ファンズを通じて流入するというスタイルが続くと思われます。

 

ヘルスケアREITの上場が注目されています。
今後のマーケットの活性剤になるでしょうか。

石澤物件取得が難航している例が多いようです。報道では、今年夏にはヘルスケアREITの第1号が上場されるという話もあったのですが、現在のところヘルスケアREITは1本も上場されていません。ただし、今年度中には、複数のヘルスケアREITが登場すると思います。

ただ、J-REITの種類は今後、大きく広がっていくでしょう。ヘルスケアREITは社会的な意義が大きいとして政府も支援を検討していますし、病院を組み入れる病院REITも今後、登場してくる可能性があります。

2020年のオリンピック関連で言えば、ホテルREITの上場も注目されています。これまで日本には、ジャパン・ホテル・リート投資法人と、星野リゾート・リート投資法人という2つのホテルREITが上場されていますが、この分野も徐々に本数が増えてくるのではないでしょうか。

そして、インフラファンドも、その実現に向けてさまざまな議論が行われています。具体的には、太陽光発電施設などを組み入れたファンドで、J-REITとは異なった制度になりそうですが、投資法人のスキームが有望と見られています。その点では、J-REITと似た投資形態になる可能性があります。

いずれにしても、ファンドを通じて投資できる不動産の幅が広がることによって、さまざまなJ-REIT、あるいはそれに近い性質を持つインフラファンドの登場も含め、ファンドを通じた不動産投資は、これからも注目を集めることになりそうです。

 

掲載日:2014年11月19日

石澤卓志(いしざわ たかし)氏プロフィール
みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。
慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。
長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。

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