■第25回
SMBC日興証券のシニアアナリスト、鳥井裕史氏に聞く

東証REIT指数は年末に向けて1800ポイントを目指す

今年に入ってから、東証REIT指数は順調に上昇しました。昨年3月は1700ポイントに乗せる場面もありましたが、その後、大幅に調整。2月4日に1444ポイントの安値を付けた後、9月30日にかけて1670ポイントまで回復。そこからもう一度調整をして、現在に至っています。10月23日時点の終値は1640ポイント。年末に向けて、どのような展開になるでしょうか。SMBC日興証券の鳥井裕史氏に話を伺いました。

日経平均の値動きに連動して、東証REIT指数の値動きも荒くなってきています。
年内の相場見通しは?

鳥井東証REIT指数の値動きは堅調です。2014年の前半は1500ポイントを挟んだ値動きを続けていましたが、10月6日には1655ポイントまで上昇してきました。その後、やや調整はしていますが、恐らく年末までに1800ポイントを目指す動きになるでしょう。これが、現時点におけるおおまかなビューです。

 

1800ポイントを目指す根拠は何でしょう。


SMBC日興証券株式会社
株式調査部シニアアナリスト
鳥井裕史氏

鳥井東証REIT指数が1800ポイントを目指して上昇する根拠は、大きく4つ考えられます。

第一に、足元でオフィスの賃料が上昇していることです。オフィス賃料の上昇は、特にオフィスビルを多く組み入れて運用しているJ-REITにとっては、分配金上昇期待が高まります。詳しくは後述しますが、賃料上昇によって外国人投資家の買いも期待できるでしょう。

第二はスプレッド。2014年10月3日時点のJ-REIT全銘柄の平均分配利回りは3.46%です。これに対して国内長期金利が0.5%ですから、両者のスプレッド3%程度確保されています。スプレッドは、地方銀行などの金融法人が、リスクを許容してJ-REITに投資資金を振り向ける、ひとつの基準になります。10月中旬にかけて、長期金利は低下傾向をたどり、0.5%を割り込む場面も見られました。当面、長期金利が急上昇に転じることは考えにくく、3%のスプレッドはしばらく維持されるでしょう。結果、地銀などの金融法人がJ-REITへの投資を進めてくるはずです。

第三は下値リスクが小さいことによる安心感です。J-REITが大幅に下落するような場面があれば、すかさず日銀が買いを入れてくるため、下値リスクはかなり限定的であり、買い安心感を強めています。

そして第四は市場の需給が良好であることです。投資信託をはじめ、地銀や外国人投資家の動きが堅調です。

 

J-REIT市場の主体となっている投資家の動向は、いかがですか。

鳥井地銀など金融法人による買いもさることながら、J-REITを組み入れて運用している「J-REIT特化型投資信託」を通じた資金流入も注目されます。特に個人の場合、J-REITへの直接投資ではなく、J-REIT特化型ファンドの購入を通じて、J-REIT市場に投資するケースが多く見られます。その資金流入は5、6月にいったん止まったものの、市場規模はJ-REIT市場全体の3分の1程度を占めています。

ちなみに地方銀行は、6月の買いこそ弱かったものの、7月以降は再び力強い買い越しへと転じました。

また外国人投資家の動向ですが、4月までは売り越しだったのが、5月以降は買い越しに転じています。オフィスビルに投資しているJ-REITの賃料収入が上向き始めたことが、外国人投資家のJ-REITに対する関心を高めたようです。

 

需給は今のところ良好で、
年内1800ポイントを狙える環境にあるとのことですが、
来年以降はどうなるでしょうか。

鳥井最も有力なシナリオは「横ばい」で、これにはさらに2つのシナリオが考えられます。
第一にオフィス賃料が大幅に上昇すること。賃料上昇はJ-REITにとってプラス材料ですが、問題は長期金利も大きく跳ね上がる恐れがあることです。オフィスビルの賃料上昇は、景気好調を意味します。景気が好調なら長期金利も上昇するでしょう。ただ長期金利の上昇は、J-REITに要求される分配金利回りの上昇にもつながり、賃料収入の上昇分が相殺されてしまいます。したがって、横ばいになります。

もうひとつの横ばいシナリオは、思った以上に景気が伸びなかった場合です。景気が悪ければオフィスの賃料収入は伸びませんが、恐らく日銀は追加の金融緩和政策を打ち出してくるでしょう。結果、オフィス賃料が伸びなくても、長期金利が低下するため、J-REITに要求される分配金利回りが下がり、横ばいになります。

メインシナリオは、年内に1800ポイントを達成した後、来年は安定的な横ばいで推移するというものです。状況次第は2000ポイントを狙える可能性もありますが、その場合は、オフィス賃料そのものが、現状に比べて大幅に値上がりしなければなりません。可能性はありますが、現状の景気見通しなどから判断すると、そこまで大きくオフィスビル賃料を引き上げるのは困難でしょう。したがって、1800ポイントを高値にして、しばらく横ばいで推移するというのが、最もリーズナブルなシナリオだと思います。

 

横ばい以外のシナリオは?

鳥井上昇シナリオの前提条件は、オフィスビルの賃料上昇に加えて、金融緩和が行われることです。J-REIT市場にとっては、これがベストシナリオです。あくまでもオフィスビルの賃料上昇が続くなかで、日銀が追加金融緩和などを行い、長期金利が現状以上に低下すれば、オフィスビルの賃料上昇と長期金利低下というポジティブ要素が重なるため、J-REIT市場はもう一段の上昇を目指すことになります。

一方、下落シナリオは、足元の景気が思った以上に悪く、さらに国内景気が冷え込むことを懸念して、消費税率の10%への引き上げを断念するというものです。景気が想定以上に悪ければ、恐らくオフィスビルの賃料引き上げが困難になるでしょう。加えて消費税率の引き上げを先延ばしにすれば、日本の財政再建に対する懸念が世界的に広まる恐れがあります。結果、日本国債が売られ、長期金利は上昇するでしょう。オフィスビルの賃料引き上げが出来ず、かつ長期金利も上昇したら、J-REITにとって悪材料が2つ重なることになります。

 

逆に、最悪シナリオを描いた場合、
東証REIT指数はどこまで下がるのでしょうか。

鳥井現状、J-REITの平均分配利回りが3.5%で、長期金利が0.5%だとすると、長期金利が0.5%幅で上昇して1.0%になった場合、J-REITの平均分配利回りは、長期金利とのスプレッドが3%で維持されるなら、4.0%まで上昇します。現在の東証REIT指数が1650ポイントだとして、平均分配利回りが0.5%分上昇したという前提で価格を逆算すると、指数は1450ポイントまで下落します。

さらに、長期金利の上昇が0.5%幅で止まらず、最終的に1%上昇して1.5%になると、J-REITの平均分配利回りは4.5%まで上昇するので、これを指数に当てはめると、1300ポイント程度まで下落します。つまり、オフィス賃料が全く上昇しないという前提のもと、長期金利が0.5%上昇した時の下値は1450ポイント。1.0%上昇した場合の下値は1300ポイントになります。

 

狙い目のREITはありますか。

鳥井個別銘柄を見極めるのが大変だと思うなら、複数のJ-REITを組み入れて運用しているJ-REIT特化型ファンドを購入すれば良いでしょう。

もし、個別銘柄を狙うなら、賃料収入の増加が期待されるオフィスビル系が面白いと思います。ただ、オフィスビルといっても、たくさんの種類があります。日本ビルファンド投資法人や、ジャパンリアルエステイト投資法人のような、Aクラスのオフィスビル系ファンドは高値圏にあり、分配金利回りも低くなっていますが、安心感という点ではお勧めです。

一方、もう少しアクティブな投資を考えているのであれば、中堅オフィスビル系のファンドでも良いでしょう。日本プライムリアルティ投資法人やケネディクス・オフィス投資法人などが、これに該当します。分配金利回りも、日本ビルファンド投資法人の2.69%、ジャパンリアルエステイト投資法人の2.72%に比べて、日本プライムリアルティ投資法人が3.25%、ケネディクス・オフィス投資法人が3.46%と、利回り面で見た魅力もあります(利回りは10月10日現在)。

 

掲載日:2014年11月26日

鳥井裕史(とりい ひろし)氏プロフィール
SMBC日興証券株式会社株式調査部シニアアナリスト
大和総研及び大和証券SMBC(現・大和証券)において
年金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に従事した後、
2006年よりREIT専門のアナリスト業務に従事。
2010年10月より現職。
InstitutionalInvestor誌「All-JapanResearchTeam」REIT部門で2012年、
2014年に1位を獲得。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認定マスター

HOME

Page top