専門家インタビュー

■第26回
みずほ証券経営調査部上級研究員 石澤卓志氏に聞く

2015年 国内REIT市場の動向

東証REIT指数は2014年12月3日、1881ポイントまで上昇した後、1830ポイント前後で調整を続けています。10月17日の1598ポイントから、2カ月あまりで230ポイントほど上昇したため、一部に割高感が浮上しているようです。1年間で32%上昇した2013年。そして2014年は12月18日時点で年初来21%上昇している東証REIT指数ですが、果たして2015年はどうなるのか。みずほ証券の石澤卓志氏に伺いました。

2014年も東証REIT指数は順調に上昇しています。
2015年もこの調子で上昇すると見ていますか。


みずほ証券経営調査部
上級研究員 石澤卓志氏

石澤まず、2015年は前半が調整期間になると見ています。というのも、恐らくこれから利益確定売りが出てくるからです。2014年の東証REIT指数は、20%も上昇しました。これだけ値上がりすれば、中にはそろそろ利益確定したいと考える投資家も出てくるでしょう。J-REIT全体の発行済み投資口数に対する保有比率では、国内金融機関が半分近くを占めていますが、これから3月に向けて、銀行などの金融機関は、含み益が発生しているJ-REITを売却してくると思います。したがって、金融機関の決算が集中する3月に向けて、J-REITの売り圧力が強まり、市場価格は調整すると見ています。

 

 

どの程度、調整するのでしょうか。

石澤J-REITの平均分配金利回りは、12月12日時点で3.07%です。これに対して長期金利は0.35%ですから、スプレッドは2.72%。現状では不動産投資のリスクプレミアムを考慮に入れると、スプレッドは3%が目安となっています。すでに長期金利は0.35%まで低下しているので、ここからの低下余地は限られます。したがって、3%のスプレッドが確保できる水準まで、J-REITの価格が調整することになります。そこまでの調整が終われば、再びJ-REITに買いが戻ってくるでしょう。東証REIT指数で言えば、1600〜1700ポイント程度までは調整する可能性があると見ています。

 

J-REITに組み入れられる物件の取得状況はどうですか。

石澤投資利回りの高い優良物件を組み入れて、外部成長を図るのも、J-REITの投資価値を高めるうえでは重要ですが、昨今の不動産市況を見ると、それが困難になりつつあるようです。なぜなら、地価が上昇しているからです。その背景にいるのが外国人投資家です。多くの外国人投資家は、投資物件を選ぶにあたって、巨額の資金を一度に投じることができるかどうかを重視します。あまり少額資金でチマチマ投資をしても、実績が上がりにくいからです。つまり、巨額の資金が動く不動産市場は、外国人投資家の資金が入りやすく、それだけ地価も上昇しやすいと考えられます。ただ、地価が上昇する一方、家賃収入はそれほど急激に上昇しないので、投資利回りが低下してしまいます。したがって、優良物件を組み入れてファンドの資産規模の拡大を図る、いわゆる外部成長は期待しにくい環境にあります。

 

オフィスビルの家賃を引き上げるという話も出てきていますが、
それでも投資利回りの向上は期待できませんか。

石澤一部の大手不動産会社が、オフィス賃料を10〜20%程度、引き上げるという話が出ていますが、現実問題としては難しいと思います。というのも、日本の不動産市場では、大家さんと店子の信頼関係がとても重視されるので、大家さんが一方的に賃料を引き上げることはできません。両者の話し合いのなかで、妥協できる賃料を決めていくことになるので、10%以上の賃料引き上げは困難でしょう。私は恐らく5〜8%程度の範囲に収まるのではないかとみています。つまり、外国人投資家の買いによって不動産価格が上昇する一方、賃料引き上げは緩やかなものになるので、物件ごとの投資利回りは、上昇しにくいと思います。

 

2014年10月末に日銀による追加緩和が発表されました。
J-REITの年間買入額を、
それまでの300億円から900億円に引き上げるということですが、
J-REIT市場にはどのような影響が生じるのでしょうか。

石澤年間の買入額を3倍に引き上げたわけですから、市場の需給関係に大きな影響が及ぶはずだと思ってしまいがちなのですが、恐らく東証REIT指数そのものに及ぼす影響力は、限界があると考えています。と言いますのも、日銀がJ-REITを買い入れる際には一定のルールがあるからです。そのルールの中でも問題になるのが、「5%ルール」と呼ばれているものです。これは、1銘柄の買入れ限度額を、発行済み投資口数の5%までに制限するというものです。現状、すでに買入額が発行済み投資口数の4%に達していると思われる銘柄が10銘柄以上あり、この手の銘柄はこれ以上、買い進めるのが難しくなっていると考えています。

 

そうなると、J-REIT市場を下支えする効果が無くなるということですか?

石澤すでに買入額が発行済み投資口数の4%以上になっていると思われる銘柄は、時価総額が大きい上位の銘柄が中心で、これらについては日銀による買い支え効果は薄くなるでしょう。ただし、中堅どころの銘柄や、上場してから日の浅い銘柄に関しては、まだそれほど買入れが進んでいないと思われるので、日銀による買入れが進む可能性があります。特に、2013年以降に上場した銘柄で、資産規模が比較的大きいものは、買入対象として有望と思われます。そうなると現状、地方銀行などは、スポンサーの信用度が高い上位の銘柄を中心に投資してきましたが、他の銘柄にも目が向いてくることも考えられるでしょう。2015年のJ-REIT市場は、このように日銀の買入れ対象がどのように変わっていくかという点が、大いに注目されます。

 

中堅どころで利回りが高い銘柄というと、
具体的にはどのあたりになるのでしょうか。

石澤選ぶ際の基準としては、NAV倍率が1.2〜1.5倍程度のものでしょうね。現在、J-REIT全体のNAV倍率は、平均で1.6倍を超えてきています。この平均値以上のものは、基本的に割高であると考えてよいでしょう。したがって、NAV倍率が1.2〜1.5倍程度の中から、相対的に利回りが高いものを選ぶと良いでしょう。たとえば過去にスポンサーが交替した銘柄や、不動産会社以外がスポンサーの銘柄には、割安なものが多く見られます。

 

ヘルスケア施設に投資するJ-REITも登場してきました。
今後、注目は高まりそうですか。

石澤11月に日本ヘルスケア投資法人が上場されました。日本ヘルスケア投資法人は、ファンドの規模が小さく、流動性の面ではやや劣りますが、このように新しいタイプのJ-REITが上場されたことは、今後、J-REIT市場がさらに拡大発展していくうえでは、重要な意味を持っています。現状、J-REITのスポンサー企業は、大半が不動産会社なのですが、たとえば介護施設を運営している会社がスポンサー企業になり、自前でファンドを立ち上げるというケースも考えられるでしょう。このように、これまでオペレーターの役割を果たしていた企業がJ-REIT市場に参入すれば、利益相反などの問題に配慮する必要はありますが、市場の活性化にもつながっていきます。

 

掲載日:2015年1月16日

石澤卓志(いしざわ たかし)氏プロフィール
みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。
慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。
長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。

 

 

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