■東証JリートViewインタビュー

Jリート これからの試み

2001年に創設されたJリート市場。現在の上場銘柄数は42銘柄となり、マーケット全体の価格動向を示す東証REIT指数も順調に値上がりしています。来年1月からはNISAの投資対象になることもあり、個人投資家の認知度が上がる可能性があります。今後のJリート市場について、東京証券取引所上場推進部アセットファイナンス統括の横田雅之氏と、同部の柴田崇史氏に話を伺いました。

 

東証REIT指数はこの1年で順調に値上がりしました。
Jリート市場を取り巻く環境は底堅いと考えて良さそうですか。

横田2012年11月8日の東証REIT指数は1,045ポイント。今年11月15日時点のそれは1,477ポイントですから、この間に41%上昇したことになります。不動産市況が堅調に回復してきたことに加えて、日銀の金融政策の後押しが非常に大きかったと思います。4月に黒田日銀総裁が異次元金融緩和の実施を公表してから、日本の長期金利は極めて低い水準で推移してきました。結果、Jリートの分配金利回り(配当利回り)との差が3%以上に広がり、それがJリートへの資金流入を促したと考えられます。

 

具体的に、誰がJリートを買っていたのでしょうか。


上場推進部
アセットファイナンス統括
横田雅之氏

横田多少のリスクはあっても、高い利回りを求めている投資家ですね。具体的に言うと、地域金融機関の資金が入っています。地銀など、地方の金融機関は、預貸率を見ても分かるように、預金で集めたお金を十分、貸出しに回せない状況にあります。それだけ、地方の資金需要が少ないということなのですが、当然、そうなるとお金が余るため、それを貸出し以外で運用しなければなりません。これまでは国債がその運用先になっていましたが、国債利回りが0.6%を割り込む水準にまで低下すると、国債投資の妙味も無くなります。この点、Jリートの分配金利回り(配当利回り)は4%程度あるので、投資先として魅力的に感じるところが多いのだと思います。

柴田投資部門別に見ると、銀行と投資信託の買いが目立つ反面、個人投資家は売り基調です。Jリートに直接投資している個人投資家は、比較的短期間で利食いの売りを出してくるケースが多く、それが売り越しにつながっていると思われます。外国人投資家は売り買い交錯ですが、出来高が非常に大きいため、市場の行方を左右しやすい存在になっています。

 

個人は直接Jリートを買うよりも、
投資信託を通じて投資している人が多いということですか。

横田そうですね。もちろん直接Jリートに投資している個人も多いとは思うのですが、それ以上に投資信託で、Jリート特化型と呼ばれるファンド・オブ・ファンズを購入している投資家が大勢いらっしゃいます。投資部門別で投資信託の買いが順調に増えているのは、投資信託を通じてJリート市場に投資している個人が多いということです。

 

東京オリンピック開催が決まったことによる効果なども見られますか。

横田東証REIT指数は5月20日に終値ベースで1,544ポイントを付けた後、株式市場全体が調整に入ったこともあり、9月くらいまで1,300~1,400ポイントの間を行ったり来たりしていましたが、9月に東京オリンピックの開催が決定してから一気に上昇し、9月末には1,510ポイントをつけました。オリンピック開催に伴うインフラ整備、新たな不動産物件の建設などが、その背景にあると見ています。指数的に見れば、東京オリンピック開催で100ポイント程度の押し上げ効果があったと思います。

■図表:東証Jリート指数
図表1

 

東証としてはJリート市場の活性化を考えていると思いますが、
具体的な方策は?

横田プロモーションの対象としては個人投資家、地域金融機関、海外の3つを中心にしています。もともとJリートは高い分配金(配当)を継続的に受け取れるという点で、個人が年金の代替に使うことを前提に開発された面があるので、今後も個人投資家に対する情報提供をしっかり行っていきたいと思います。特に昨今は年金に対する不安が高まっているので、老後資金を自助努力で作っていこうというニーズに合致していると考えています。

 

具体的に、どのような形で、
個人投資家への情報提供を行っていくのですか。

柴田ウェブサイトの「JリートView」に加えて、証券会社のセミナーや不動産証券化協会(ARES)と毎年共催している「Jリートフェア」、さらに来年2月21、22日に開催する、「東証IRフェスタ」のようなIRイベントを通じて、Jリートの魅力を個人投資家の方に伝えていきます。

横田Jリートフェアや東証IRフェスタは東京都内での開催になるので、地理的になかなか参加しにくいという地方在住の方に対しては、「JリートView」のようなウェブを通じて、積極的に情報提供を進めていきたいと思います。

 

地域金融機関や海外に対する情報提供は、
どのようなものを考えているのですか。

横田地域金融機関に対しては、実際にその地域に出向き、情報提供を行っていますが、個人投資家と違うのは、やはり制度改正の行方や、日銀によるJリートの買入れに関する情報提供が中心になるということです。また海外の投資家に対しては、マーケット全体の現状などに関する説明を行っています。

 

海外投資家というのは、
具体的にどういう人たちを指しているのですか。

柴田海外の投資信託会社や年金など、どちらかというと長期的な視点でJリートに投資している投資家になります。

横田各国のリート関連指数と比べると、この1年で日本のパフォーマンスが非常に良かったこともあり、その市場規模は9月末で世界第3位になっています。しかも、第2位のオーストラリアの時価総額8.8兆円に対して、日本のそれは7.1兆円であり、差が縮んできています。ここまでJリート市場の規模が大きくなってくると、海外の機関投資家にとっては、無視できない存在になってきます。たとえば、グローバルリートのポートフォリオを組むに際しても、Jリート市場を無視できなくなります。それだけに、海外の投資家の動向は、これから無視できない状況になっていくでしょう。

 

市場活性化策としては、
今後、新しい投資法人の上場なども検討課題のひとつになると思いますが、
新規上場の予定はいかがですか。

横田保有不動産をオフバランス化したいという希望を持っている事業法人に対して、そのニーズに応える仕組みのひとつとして、Jリート市場を活用するという方法があることを、これからもアピールしていきたいと思います。リートは、大きなロットで不動産のオフバランス化が可能ですし、資金調達も幅広くできます。そのメリットを企業側にアピールしていきたいですね。

 

どういうところが不動産のオフバランス化に関心を持っているのですか。


同部 柴田崇史氏

柴田昨年だと物流関連が関心を持っていましたが、現在は不動産市況が堅調ということもあるせいか、業態に関係なく幅広い企業が不動産のオフバランス化に関心を持っています。

横田そうですね。リーマンショック直後は、さすがに不動産市況そのものが大きく崩れたので、新規上場も無くなってしまいましたが、ここに来て再び新規上場を検討する動きも出てきました。今後は上場投資法人数の増加を目指していきたいと考えています。

 

日銀の異次元金融緩和によって、日銀はJリートの直接買入れも行っています。
この動きは今後も続くのでしょうか。

横田日銀によるJリートの買入れに関しては、一定の目標枠を決めて進められてきましたが、黒田日銀総裁自身は、上限を設けているつもりはないということを明言しています。ただ、実際にこれが発動されるのはJリート市場が大きく崩れて、投資法人のファイナンスに大きな影響が生じると懸念される時です。現在のように、マーケットそのものが堅調に推移している環境下において、日銀によるJリートの買入れは行われません。一時的には休止というところでしょう。とはいえ、いざという時には日銀による買い支えが期待できるという意味において、安心材料になっています。ただ、それ以上に安心材料につながっているのは、やはり国債の買入れで長期金利が低位安定推移しているということでしょう。Jリートへの直接投資に比べれば、むしろ長期国債の買入れの方が、Jリート市場にとってはプラス材料だと思います。

 

2014年1月からNISAがスタートします。
ただ、Jリートのなかには、金額的に高くて、NISAの枠では買えない銘柄もあります。
今後の改善点は?

横田NISAに関しては、値上がり益に対する非課税措置も魅力的ではありますが、やはり長期的に保有し、安定したインカム収入を非課税で受け取れるという点も、大きな魅力になります。この点、Jリートは、高い分配金利回り(配当利回り)が期待できるので、NISAの対象にも向いているといえるでしょう。ただ、確かに銘柄によっては、現在の投資口価格がNISAの年間投資枠である100万円を超えており、投資できないというケースも生じてきます。そうした投資法人の中にはNISAの年間投資枠への合致を目的とした投資口の分割を公表する動きもあり、そうすれば最低投資金額が下がるため、個人投資家の方たちにも投資しやすくなる他、流動性を高める効果も期待できます。今後、この動きが他の投資法人にも広まれば、Jリートに対する関心も高まっていくと思います。

 

最後に個人投資家に対するメッセージをお願いします。

横田過去の実績を見てもお分かりいただけると思うのですが、Jリートは非常に分配金(配当)が安定しています。そこに注目して、個人投資家の方に保有していただければと思います。ある程度、年齢の高い方にとっては、老後資金の運用に適していますし、若い方にとっては、インフレリスクをヘッジすることができます。将来、家を購入したいと考えている人にとって、物価の上昇は避けたいところですが、Jリートを購入していれば、インフレに連動して価格の上昇が期待できますから、ある程度、インフレリスクをヘッジできます。年齢によってもさまざまな使い方が考えられますので、保有資産の一部にJリートを組み入れることを是非、検討していただければと思います。

 

関連リンク

東証JリートView http://reit.tse.or.jp/
東証REITページ http://www.jpx.co.jp/equities/products/reits/outline/index.html
Fanet MoneyLife Jリート一覧 http://money.fanet.biz/reit/index.html

取材・執筆:Fanet MoneyLife (掲載日:2013年12月18日)

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