第4回

ヘルスケアリート入門/病院を対象とするリートの上場に向けて

1.はじめに

2015年6月26日に、国土交通省(以下、「国交省」)より「病院不動産を対象とするリートに係るガイドライン」(以下、「病院リートガイドライン」)が公表されました。これにより、Jリートによる病院不動産への投資が実質的に可能となり、これまで有料老人ホームが中心であったヘルスケアリートの投資対象が多様化する可能性があります。第4回では、病院リートガイドラインの概要を紹介するとともに、その意義を考えてみたいと思います。

病院リートガイドラインについて

(1)目的と対象

病院リートガイドラインは、病院不動産の取引を行うJリートの資産運用会社を対象とするガイドラインで、宅地建物取引業法上の取引一任代等の認可申請等に際して整備すべき体制や、病院関係者との信頼関係の構築、医療法等の規定及びこれに関連する通知の遵守等を示しており、2015年7月1日より適用開始となっています。

ここで、病院不動産とは、医療法に規定される病院の用に供されている不動産であり、その一部を病院の用に供されている不動産を含みます(以下、あわせて「病院」)。また、病院に投資しようとする資産運用会社も対象に含まれており、現に病院に投資していなくても適用対象となります。

(2)資産運用会社が整備すべき体制

Jリートが病院に投資する場合には、病院への投資業務等(融資業務や病院運営業務を含みます。)の経験により、病院の事業特性等を十分に理解し、病院関係者と調整を行うことができる専門家が、その資産運用会社に関与することが求められています。病院リートガイドラインには具体的な体制整備として、当該専門家の重要な使用人としての配置、外部専門家から助言を受ける体制、投資委員会等への外部専門家の配置を列挙していますが、これらはJリートによる病院への投資比率に応じて使い分けられることと思われます。

なお、この体制は、「認可申請等に際して」とあるとおり、認可申請時のみでなく認可申請後も病院を投資対象とする限り、整備されている必要があります。

(3)信頼関係の構築等

2014年7月に施行された「高齢者向け住宅等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン」においてもヘルスケア施設のオペレータとの信頼関係構築に努めることが求められていますが、病院リートガイドラインにおいても、Jリートによる病院への投資が病院関係者や病院利用者等に不安を抱かせることを防ぐため、同様に病院関係者との信頼関係の構築について触れられています。

また、資産運用会社にとってはこれまで馴染みのなかった医療法等の規定や関連通知に抵触しないことに留意する必要があり、病院リートガイドラインではいくつかの規定や通知が例示されたほか、国交省には資産運用会社や病院関係者からの照会のための相談窓口が設置されることとなりました。例えば、病院収入に連動する賃料は適当でない旨の通知や、賃貸借契約期間が更新を円滑にできる長期間のものであることが望ましい旨の通知は、Jリートにとっては一定の制約とも考えられますが、医療の非営利原則や医療計画といった病院の事業特性等を踏まえた対応が求められます。

病院リートの意義

ヘルスケアリートの投資対象が高齢者向け住宅でなく、病院であったとしても、大まかなスキームは第1回でご説明したとおりです。病院の場合、オペレータが病院運営者、入居者が病院利用者に置き換わります。ここではそれぞれにとっての病院リートの意義を考えてみましょう。

(1)病院運営者にとっての意義

病院運営者は、保有する病院をJリートに売却し、Jリートと賃貸借契約を締結することで、不動産管理を外部に委託し、病院運営に集中することが可能となります。また、売却によって得られた資金により、借入金の返済や医療機器の購入を行うなど、資金調達手段としての側面もあります。なお、Jリートは他のファンド等と異なり運用期間に定めがないため、長期の資金調達手段としての選択肢となります。

(2)病院利用者にとっての意義

Jリートは政府や取引所等の一定の監督下に置かれるため、情報開示を通じた病院運営の透明性向上や医療サービスレベルの維持等、投資者保護を通じ病院利用者の安心につながることが期待できます。また、資金調達手段の多様化によって病院の建替えや機能強化などが加速する可能性もあります。

(3)投資者にとっての意義

病院がJリートの投資対象となれば、Jリートの投資家にとってはさらなる分散効果が期待できます。高齢者向け住宅は、住居の機能に加え生活サービスや介護サービスが提供される資産でそのサービスの対価がJリートの得る賃料の原資となりますが、病院はそこで提供される医療サービスの対価が賃料の原資となります。また、一般に、高齢者向け住宅に比べて病院は、その価値がサービスに依存する比率が高いと言われており、高いサービス価値を持つ病院は、景気変動の影響を受けにくく安定した収益を生む資産となりえます。さらに、医療インフラとしての側面を持つため、所在する地域の特性などが影響を与える資産とも言えるでしょう。

おわりに

病院リートガイドラインが整備され、Jリートは新たに病院を投資対象として検討できるようになりました。これまで事例の少ない病院の証券化についても、Jリートによる取得が進むことで一般化する可能性があり、3で述べたようなメリットにも期待できます。一方でJリートによる病院の取得が急激に増加することは考えにくく、当初はヘルスケアリートによる部分的な取得に留まるものとの見方もあります。他の用途の不動産がそうであったように、Jリートと関係者とで信頼関係を築きながらトラックレコードを積み、いずれは病院に特化するヘルスケアリートが登場することに期待したいと思います。

 

ヘルスケアリート入門

 

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