第2回

資源エネルギー庁の山崎琢矢・新エネルギー課長に聞く
低価格化と長期安定化を追求して自立した再生可能エネルギーをめざす

太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを導入促進するFIT法(固定価格買取制度)が2017年4月に改正・施行された。インフラ投資を検討する投資家にとって再生可能エネルギー政策の動向は気になるポイントだ。再生可能エネルギーの現状と今後の展望について、資源エネルギー庁新エネルギー課長の山崎琢矢氏に解説していただいた。

我が国を含めて大変革期にある再生可能エネルギー

山崎 琢矢氏フォト

資源エネルギー庁
新エネルギー課長山崎 琢矢氏

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーはいまや、他の電源に比べても競争力のある電源になってきました。その理由のひとつに、発電価格の急低下が挙げられます。2009年時点での太陽光発電価格(世界平均)は1kWhあたり約40円でした。それが2017年現在で同約10円と10年弱で1/4まで下がっています。石炭火力やガス火力、原子力に比べても発電コストが遜色ないレベルになったといえます。

一方で再生可能エネルギーの発電容量は急速に増えています。2015年には、世界の主流だった石炭火力の設備容量をついに超えました。再生可能エネルギーをめぐる状況がいま、世界で劇的に変わっているわけです。競争力がありかつ地球温暖化に優しい電源として、再生可能エネルギーがどのように電力市場に統合していくのかが問われるフェーズに来ているのです。

再生可能エネルギーの大変革期にあるなかで、我が国は正直なところスタートが一歩遅れている感が否めません。たとえば、発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は、スペインが40.3%(2014年)、ドイツが27.6%(同)など。日本は2015年の段階で14.6%です。これからどんどん拡大しようとしているなかで、2012年7月には固定価格買取制度(FIT)をスタートさせました。それから導入量は2.5倍に増加しています。

我が国は、「2030年度に再生可能エネルギーの割合22~24%」というエネルギーミックスの水準の実現を目指しています。この目標数値には水力(大規模水力)発電も含まれていますが、大規模水力の新設は立地などを考慮すると現実的ではありません。現状の15%弱から目標の24%までの9%分を太陽光や風力、バイオマスなどで導入する必要があります。先行する諸外国では、低コスト化が進んだことをドライバーに導入量が急増しました。日本は価格がまだ少し高い。先例を学びながら導入拡大を図っているというのが現状です。

我が国の電力システムはこれまで、発送電一貫体制を採用してきました。これは諸外国も同様で、高度成長期はほぼ国営の電力会社が発送電をまとめて担ってきました。我が国では2015年の電気事業法の改正で発送電を分離、電力自由化によって需要家はさまざまな事業者から購入できるようになりました。また、さまざまな事業者が再生可能エネルギー発電事業に参入し、需要家も需要をコントロールしながら自分で電気をつくることもできるようになる等、電気の作られ方、使われ方が大きく変わってきています。これが2030年には当たり前の現実になるのです。

改正FIT法で進める「コスト効率的な導入」

FITでは、すべての電気需要家に等しく1kWhあたり2.64円を賦課金としてご負担いただいています。平均的なご家庭で月700円くらいでしょうか。この国民負担を延々と続けることはあり得ません。再生可能エネルギーの拡大には「低価格化」と「長期安定電源であること」をきちんと両立しなければなりません。電力事業者の方には、できる限り価格を下げて電力市場に参入していただくことが必須なわけです。

2017年4月に施行された改正FIT法では、太陽光発電で2030年度までに1kWhあたり7円、風力では同じく8~9円という中長期の価格目標を設定しました。入札制度も導入するなど「コスト効率的な導入」を促進しています。再生可能エネルギーを大量に導入するためには、他の電源に比べてコスト競争力がないと持続的ではありません。「コスト効率的な導入」がないと本当の再生可能エネルギーの拡大・普及にはならないという強い思いがあります。

事業者からは「価格は下がる、義務は増す。資源エネルギー庁はブレーキをかけているのではないか」という声が聞かれますが、当然のことながらそうではありません。たとえば、FITで価格を決めるとそれに基づいて資材価格なども決まってしまいます。そこで導き出されたコストが最適なのでしょうか。世界を見ると、同じ太陽光パネルや架台で半額まで下がっているケースもあります。土地が平坦でないなどの日本特有の抗えない条件はあるでしょうが、価格を下げる余地はまだまだ残されていると考えています。

制度を含めて持続的に大量導入できる道筋をつけていく

今年度の買取価格は、太陽光で1kWhあたり21円、風力も同じく21円です。この価格で十分に可能だという事業者さんはたくさんいます。改正FIT法で提示した買取価格が、誰でも簡単にクリアできる数値でないことは承知しています。しかし、少しだけチャレンジしていただければクリアできるレンジだと理解しています。私たちもさまざまな分析をしながら、再生可能エネルギーを持続的に大量導入できる道筋をつけて歩んでいます。

長期安定電源であることも重要です。今回の改正FIT法では、設備メンテナンスを義務化しました。これは、太陽光を含めた再生可能エネルギーをこの国の基幹電源にするために必須の施策であると考えたからです。また、我が国のエネルギー自給率は6%しかありません。再生可能エネルギーはCO2削減だけでなく自給率アップにも極めて重要な意味をもちます。だからこそ、発電事業者が投資のみを目的として参入し、稼げる分だけ発電し、メンテナンスも行いません――という姿勢では難しいわけです。

再生可能エネルギーには、制度側で乗り越えなければならない壁がまだまだ残されています。たとえば、電力系統(発電・変電・送電・配電を統合したシステム)の整備費用により採算性が合わなくなってくる案件も出てくると思われます。発電コストの競争力があるのに系統コストが不当に高くなったら、太陽光発電が拡大浸透しないこともあり得ます。このあたりのことは、資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会」で論点整理をし、2017年7月に発表しました。とくに、既存系統を有効活用する「日本版コネクト&マネージ」を早急に制度化すべきと提言しています。

技術革新との相乗効果で自立した基幹電源へ

最初に申し上げたいのは、再生可能エネルギーはFITがすべてではないということです。FITが事業者やインフラファンドにとって安定した収入源になっていることは事実です。それゆえに、投資家はFIT動向にとても関心が強くなっている。足元ではそれも致し方ない部分があるでしょう。しかし、再生可能エネルギーを我が国の基幹電源にするためには、もっともっと長いスパンでの視点やご理解が必要だと思われます。

私たちは、再生可能エネルギーがFITから自立し、FITに依存しなくなる状況を目指しています。2030年度のエネルギーミックス数値22~24%の内訳として、太陽光発電は6,400万kWを目安としています。現状が約3,800万kWですから大きな目標となりますが、これで終わりではありません。その先へ進む条件として、他の電源よりも競争力を高めていくさまざまな政策措置を今後もとっていきます。

そこでは技術革新へ寄せる期待が大です。太陽光のパネルを含めた発電技術と蓄電技術、エネルギーマネジメントシステム、そして電気自動車などです。ライフスタイル全体をシステムとして、あらゆるモノがネットにつながるIoTを活用しながらデザインすることが求められるでしょう。

今後は大規模集中電源から最適分散化への流れが進みます。すなわち、需要家自らが太陽光パネルを屋根・敷地に設置する自家消費モデルに蓄電池を組み合わせ、自らつくって自ら使い、残った電力を融通し合う社会です。そこでは予測と制御の技術が極めて重要になります。天候に左右される自然エネルギーはどうしても発電能力が不安定です。100%正確に予測することは難しいでしょうが、たとえば予測しきれなかった差分をAIやIoTで自動制御することは期待できます。太陽光発電では、つくった電気を効率よく電池に蓄えるインバーターをもっと制御に適したものに改良し、それを統括するソフトウエアの進化も待たれるところです。

最適分散型への転換はエネルギーとIoTの結びつきに相当なイノベーションが必要だろうし、事実起きてくると思います。そこで日本は負けるわけにはいきません。日本企業の海外戦略の意味でも、再生可能エネルギー関連の技術革新は極めて大事になっていくでしょう。

長期を展望した持続可能性で親和性高いインフラファンド

電力市場にとって資金調達の選択肢が増えるインフラファンドの活性化は大いに期待しています。金融×エネルギー(特に電力)=資金調達は、これまでコーポレートファイナンスかプロジェクトファイナンスが中心でした。発行する社債も極めて高い信用力を裏づけにした低金利かつローリスクな一般担保付社債です。この資金が発電や送電にも回るモデルが65年間続いてきたわけです。このモデルは電力需要がうなぎ登りの高度成長期には適していますが、我が国の現状にはそぐわない部分もあります。電力市場が大規模集中から最適分散化へシフトするなかで、資金調達にもさまざまな手法があっていいはずです。

インフラファンドには長期安定電源化の観点からもメリットがあります。事業者や設備のデューデリジェンス(資産査定)をきちんとやってもらうことで、メンテナンスなどのチェック機能にもつながります。金融の目(チェック)が入ることで持続可能性が付加されるイメージです。

私たちが目指しているのは、再生可能エネルギーのFITからの自立・卒業とさらなる拡大です。電力も関連した資金調達もこれまで以上にマーケットベースになるでしょう。インフラファンドも「FITに20年間守られる金融商品」では上場の意味が薄くなります。20年間きっちり運営するだけでなく、FIT後もしっかり運営できる事業者を選別できればいいですし、そのような事業者の参入を促す効果もインフラファンドには期待しています。

持続可能性という意味では、FIT以降の再生可能エネルギーとインフラファンドは親和性が高いと思います。FITという足元だけにとらわれることなく、我が国の未来社会とエネルギー市場という長期の視点で評価、投資判断していただきたいと思います。

 

 

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