第3回

太陽光発電所の各設備を徹底解説
- インフラファンドが所有する太陽光発電所の各設備について専門家が分かりやすく解説

銘柄数も着実に増加し、更なる発展が期待されるインフラファンド市場。現在上場する4銘柄は、全て、太陽光発電所に投資する銘柄ですが、実は、太陽光発電所は様々な設備・機器から構成されており、これらが効率的に組み合わさって電気を生み出しています。

今回の特集では、インフラファンドが具体的にどのような資産を保有し、それぞれがどのような機能を有しているのかについて、太陽光発電所の技術デューデリジェンスの第一人者であるイー・アンド・イーソリューションズ株式会社 池 知彦氏(以下「池氏」)と共に、タカラレーベン・インフラ投資法人(9281)のLS塩谷発電所を訪問し、ご解説いただきました。

太陽光発電所フォト

―本日はよろしくお願いいたします。まず、池さんのインフラファンドへの関わり方について教えてください。

池氏私が所属しているイー・アンド・イーソリューションズ株式会社では、現在、インフラファンドが太陽光発電所を取得する際にテクニカルレポートを提供しています。テクニカルレポートとは、技術的見地から太陽光発電所の機能等を評価し、収益性に影響を及ぼす様々なリスクを調査、指摘、説明するものです。加えて、発電量予測も実施しており、太陽光発電所の収益性を図るうえで欠かせない情報の作成・提供も行っています。テクニカルレポートの概要は各銘柄が公表している資産取得時の適時開示資料や有価証券報告書等を通じて投資家の皆様に情報開示されています。

それでは、早速、それぞれの設備を見ていきましょう。

―我々が太陽光発電所と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、この一面に広がるソーラーパネルです。このパネルが太陽の光を受けて電気を生み出しているのですね。

池氏そのとおりです。このパネル1枚1枚が「太陽電池モジュール」と呼ばれており、さらに、その中に「セル」と呼ばれる太陽電池の本体が数十枚、ブロックのように配列・配線されています。この「セル」が実際の発電を行っています。ちなみに、「電池」という文字が付いていますが、蓄電池のように電気をためておく機能はありません。

―パネルは全て同じ角度、同じ方向で整然と設置されていますね。

池氏日本では、南向きで、かつ、30度程度の傾斜角でパネルを設置すると発電効率が一番良くなるとされています。ただ、そうすると、パネル同士の距離を相当離さないと自己日影(あるパネルの影が他のパネルに落ちて日影を作ってしまうこと)が発生してしまい他のパネルの発電を阻害してしまいます。そこで、個々のパネルの発電効率は少し悪化しますが、設置できるパネル数を増やし、発電所全体としての効率を上げるために、傾斜角を10度程度にして設置する手法が普及しました。このLS塩谷発電所も、南向きで、かつ、10度の傾斜角で設置されています。このように設置すると、パネル同士の距離をそれほど取らなくても自己日影が生じにくく、効率の良い発電所になります。また、発電所全体をコンパクトに設計することができますので、結果的に管理のし易い発電所になります。インフラファンドの場合は、発電所を長期にわたって保有しますので、管理のし易さは重要な要素です。なお、雪の降る地域では、パネルに積もった雪が滑って落ちるようにもう少し傾斜角をつけていることが多いです。

太陽光発電所フォト

―パネルの架台の設置高もきちんと揃えられています。

池氏向き、角度、高さをきちんと揃えてパネルを設置するのはなかなか難しいですが、太陽光発電所の設計・調達・建設を請け負う業者(EPC業者)の技術によって調整され、設置されています。

高さは、作業性を重視して決めることが多いですね。ある程度の高さがないと設置工事や、その後の管理がしづらくなります。低いところでも70~80cm程度の高さは確保されています。ただ、架台を高くするとその分コストが高くなりますし、風に煽られて不安定になりやすいというデメリットも生じる点には注意しなければなりません。なお、雪の降る地域では、地面に積もる雪のせいでパネル上の雪が滑り落ちずに発電ができなくなるという事態も想定されるので、ある程度の高さが必要となります。

―パネルには様々な種類があると聞きましたが、どのように違うのですか。

池氏今回の取材にご協力いただいているタカラレーベン・インフラ投資法人は、「単結晶シリコン」、「多結晶シリコン」、「CIS」の3種類のパネルを保有されていますね。

「単結晶シリコン」型と「多結晶シリコン」型のパネルは、いずれも半導体であるシリコンを薄く削って発電素子として用いるものです。簡単に言えば、シリコンが太陽光を受けてエネルギーを生み発電するわけです。このうち、「単結晶シリコン」型は一枚のシリコンから削り出したもので、他方、「多結晶シリコン」型は単結晶シリコンを削りだす際に出たシリコンの粒を固め直したシリコンから作られたパネルということです。「単結晶シリコン」型のほうが純度も高く発電効率も高いですが、値段も高くなります。「多結晶シリコン」型は、「単結晶シリコン」型より発電効率は低いですが、価格が安く、最も普及している素材です。現在上場している4銘柄が保有する太陽光発電所においても、この型のパネルの使用率が最も高いですね。

一方で、「CIS」は、Cu(銅)、In(インジウム)、Se(セレン)を主成分とする化合物をガラスにコーティングして発電素子にしているもので、薄膜系と呼ばれています。シリコン型のパネルと比較して、発電効率の面では劣りますが、他方で、真夏の炎天下でも温度が上がりにくく高温による出力ロスが少なかったり、影がかかった場合でも発電量が落ちにくかったりする強みを有しています。また、太陽光のもとに最初に置いたときに、光照射効果と呼ばれる現象により、仕様書上の定格値よりも3~4%程度出力が向上するという特徴もあります。光照射効果によりどの程度効率が上がるかはメーカー自身も精緻には予測できないようで、定格値は光照射効果を考慮せずに表示しているようです。

―インフラファンドの有価証券報告書等では、各発電所に設置したパネルのメーカー名まで記載されていますが、メーカー毎に強み・弱みがあるのでしょうか。

池氏発電効率やコスト、保証内容など、メーカーにより様々です。

パネルの出力保証期間については、国内メーカーの場合は20年程度が多いのに対して、海外メーカーの場合は25年程度と、海外メーカーの方が長期保証を提供する傾向がありますが、現在普及しているおおよそのパネルにおいては、劣化に大きな違いはなく、毎年少しずつ発電効率は低下していくものの30年程度は十分に保つと言われています。

また、私もよく依頼を受ける仕事ですが、万一、将来的にパネルを他のメーカー製のものに置き換える必要が生じた場合に備えて、多くの発電所においてパネルの互換性の確認(他メーカー製のパネルでも発電を継続できるかどうかの確認)が行われています。

―発電効率は年々低下していくとのことですが、どれくらいのペースで劣化していくものなのですか。

池氏米国の国立再生可能エネルギー研究所による文献値では、仕様書で示された定格値に対して毎年0.5%ずつ劣化するとされています。一方、最近では日本でも研究が進んでいて、毎年0.3%程度の劣化に留まるのではないかとの研究結果も報告されているところです。メーカーによるパネルの出力保証は、シリコン系のパネルでは、初年度3%以内、2年目以降は0.7%以内の劣化率を前提にしているケースが多いですね。シリコン型のパネルは、最初に太陽光の下においた際に定格値よりも発電効率が落ちてしまう特性があるので、メーカーの出力保証においても初年度だけは高めの劣化率が前提にされています。

パネルの出力保証期間については、国内メーカーの場合は20年程度が多いのに対して、海外メーカーの場合は25年程度と、海外メーカーの方が長期保証を提供する傾向がありますが、現在普及しているおおよそのパネルにおいては、劣化に大きな違いはなく、毎年少しずつ発電効率は低下していくものの30年程度は十分に保つと言われています。

また、私もよく依頼を受ける仕事ですが、万一、将来的にパネルを他のメーカー製のものに置き換える必要が生じた場合に備えて、多くの発電所においてパネルの互換性の確認(他メーカー製のパネルでも発電を継続できるかどうかの確認)が行われています。

―このパネルだけ、日射計が付けられていますね。

池氏日射計やそのすぐ下に設置してある気温計は、パネルの発電効率を監視するために必要な機器です。日射量と気温で太陽光発電所の効率は決まりますので、重要な機器ですよ。

日射計は、パネルの傾斜角と揃えて設置されることで、各パネルが受けている日射量を正確に把握できるようになっています。万一、この日射計が汚れていたり、傾斜角が誤って設置されていたりすると、日射計で計測した日射量とパネルが実際に受けた日射量との間で乖離が生じてしまい、その太陽光発電所の発電効率を適切に把握・評価することができなくなってしまいます。太陽光発電所の売買に当たっては、発電所の発電効率が重要な判断材料となるので、私は日射計が適切に管理されているかどうかという点はしっかり確認するようにしています。一般的には、一つの発電所に1個の日射計が設置されているケースが多いですが、このLS塩谷発電所のように2個設置されているとダブルチェックが出来たり、故障した場合のバックアップ機能の役割を果たせたりするので好ましいですね。

この箱は、気象データ収集用の気象箱ですね。日射計や気温計が測定した各種データをインターネット経由でオペレーション&メンテナンスを請け負う会社(O&M会社)の下に送信しています。雨水等が侵入すると壊れてしまいますので、しっかりとシールドされていることが重要です。

日射系・気温計、気象計測器フォト

―日射量だけでなく、気温も重要なのですね。

池氏パネルは温度が上がると発電効率が低下してしまいます。シリコン型のパネルですと、1℃上昇すると定格値に対して概ね0.4~0.5%程度効率が低下すると言われています。

―真夏に一番発電量が多くなると思っていましたが、そうではなさそうですね。

池氏そうです。発電所のある地域にもよりますが、日射量が期待できつつ気温がそこまで高くない時期、具体的には5月~6月頃が発電量のピークとなる発電所が多いのではないかと思います。また、10月前後も比較的発電量を期待できる時期ですね。

―気象箱とは別に、パネルの裏側に一定間隔で小箱が設置されていますね。これはどういった機能があるのですか。

接続箱フォト

池氏これは、接続箱と呼ばれるもので、パネルが発電した直流電力を統合し、集電箱へ供給する機能を有しています。

また、接続箱の中には、遠隔モニタリングのためにインターネットを経由したデータ送信機能を有するセンサーも備え付けられています。パネルが何枚か繋がった単位を「ストリングス」と言いますが、このセンサーは、ストリングス単位で異常がないかどうかを常に監視しています。隣のストリングスと比較して出力に一定以上の差が生じたときには、資産運用会社であるタカラアセットマネジメント株式会社やO&M会社でアラームが鳴るようになっていて、24時間体制でモニタリングが行われています。

さらに、この接続箱には、SPD(Surge Protective Device)という安全装置も組み込まれていますね。雷の直撃は防ぎようがないですが、誘導雷に対しては、このSPDがパネルへの影響を遮断し、故障を防いでいるわけです。

それでは、続いて、集電箱とパワーコンディショナー(PCS)を見に行きましょう。

PCSフォト

池氏これは、PCSです。複数の接続箱から出力される直流電流は、まず集電箱に集められ、その後、PCSへ供給されます。次にPCSは、集電箱から送られてきた直流電流を、家庭で使用する交流電力に変換します。LS塩谷発電所では、これらが一体となった設備が備え付けられているということですね。PCSは日中全力で稼働していますので、冷却のためのファンの音などがしていますね。

ちなみに、LS塩谷発電所の2台のPCSは中央集約型のPCSですが、発電所によっては分散型のPCSを設置しているところもあります。先ほど説明した接続箱の機能と一体型になったPCSで、ストリングス単位で設置するものです。山中の広い敷地に広がる発電所では、各パネルからの送電ロスを回避するために分散型にしたほうが効率のよい場合もあるようです。

―これだけのパネルが生み出した電力をたった2台のPCSで処理しているとなると、定期的なメンテナンスも必要そうですね。

池氏そうですね。太陽光発電所の機器のなかで、特にメンテナンスが必要となるのが、このPCSです。PCSは概ね10年~15年の耐用年数を基準に設計されていまして、毎年の定期点検に加えて、5年毎に消耗品や空調機関連の小規模な部品交換、さらに、稼働後10~15年の間に大規模な部品交換と修繕を行うことで、20年以上の稼働が担保されるようになっています。こうしたメンテナンスには、概ねPCSの価格の20~30%程度の費用がかかります。

他には、先ほどご紹介した気象観測用の計器も2年に1度程度の校正が必要となります。

一方、パネルに関しては、汚れがあっても雨で流れたりしますし、部品交換も不要ですので、メンテナンスは楽ですね。

―このPCSの隣に設置されている設備について教えてください

池氏これは、高圧変電設備といって、断路器、遮断器、変圧器、制御装置等で構成されており、安全かつ確実に電気を電力会社に接続するための機器です。直ぐ隣には、モニタリング盤といって、PCSの発電量の計測や、異常検知時に影響を遮断しつつ連絡を行う機器も置かれていますね。

変電設備、モニタリング盤フォト

―監視カメラも設置されていますね。

監視カメラフォト

タカラアセットマネジメントLS塩谷発電所では、現場のモニタリングを、監視カメラ2台で実施しています。他の発電所でも、PCS付近には必ず監視カメラを設置するようにしています。監視カメラはO&M会社が1日に数回チェックしており、管理会社の東京のオフィスからも見ることができるようになっています。何か異常があるとアラームが点滅するので、現場に確認に行ったほうがよいと判断した場合には、O&M会社に連絡して2時間以内に駆け付けてもらえるようにしてあります。発電所の近辺で雷や地震が発生した場合には、まずは監視カメラをチェックすることにしています。

表示装置フォト

―太陽光発電所が効率的に発電できるように様々な工夫やモニタリング体制が施されていることが理解できました。
本日は生憎の曇り空でしたが、それでも一定程度の発電が出来ているのはこうした工夫等のおかげですね。
本日は丁寧な解説ありがとうございました。

 

池 知彦 氏フォト

池 知彦 氏
イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社

温暖化エネルギー対策グループ マネージャー
1985年に環境とエネルギーのコンサルタント会社であるイー・アンド・イーソリューションズに入社以来、環境調査、京都議定書CDMプロジェクト、再生可能エネルギー導入に係る技術調査等に従事。太陽光発電に係る技術評価業務経験多数。

 

LS塩谷発電所の概要(2018年2月28日時点)

所在地 栃木県塩谷郡
取得価格 1,315百万円
発電設備の評価額 1,396百万円
取得年月日 2016年6月2日
パネル出力 2,987.25kW
パネル設置数 11,949枚
発電出力 1,990.00kW
調達価格 40円/kWh
調達期間満了日 2033年7月30日
買取電気事業者 東京電力エナジーパートナー株式会社
稼働初年度想定年間発電電力量 3,254.193MWh
稼働初年度想定設備利用率 12.44%
オペレーター 株式会社タカラレーベン
EPC業者 シャープ株式会社
パネルメーカー シャープ株式会社
パワコン供給者 富士電機株式会社
O&M会社 東洋ビルメンテナンス株式会社
敷地面積 36,727㎡
敷地の権利形態 所有権
パネルの種類 単結晶シリコン

 

※今回の取材は2017年11月22日に行いました。また、写真の一部は、タカラアセットマネジメント株式会社より取材日とは別の日に撮影したものをご提供いただいて掲載しています

 

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