■Event Report
11月26日(土)、東京日本橋のベルサール東京日本橋で不動産証券化協会(ARES)と東京証券取引所(東証)が共催する「個人投資家のためのJリートフェア2016」が開催された。同フェアはJリート(J-REIT=不動産投資信託)の魅力を投資家に広く伝える目的で開催され、今回で8回目を迎えた。出展したJリートは42社で来場者は1,150人ほどにのぼり、いずれも過去最高を記録した。東証に上場するJリートは56銘柄(2016年11月末現在)なので、全社のうち4分の3が出展したことになる。
5つの会場に分かれた説明会と各社の出展ブースには多くの投資家が集まり、熱心に情報収集をおこなっていた。「多くのJリートと直接対話しながら説明を聞いたり、日ごろの疑問をぶつけたりできる絶好の機会」(主催者)ということもあり、参加者は日本各地から足を運んでいるようだった。会場を巡回している「Jリート相談員」(ARESと東証のスタッフ)と話し込んでいる参加者も見受けられた。
Jリート市場は今年創設15周年を迎えた。時価総額は約12兆円。市場規模としては米国に次いで世界2位まで成長してきた(いずれも2016年11月末現在)。株式などと比べて分配性向が高いJリートは、個人における中長期の資産形成の選択肢のひとつとして大きな期待が寄せられており、投資家が保有・売買できるチャネルも拡大している。Jリートを直接買い付けることはもちろん、東証REIT指数などに連動することをめざす投資信託やETF、さらには確定拠出年金やNISA(少額投資非課税制度)を通じて、Jリート市場へアクセスすることが可能になっている。
投資家がJリートをさらに上手に活用していくためには、投資対象ごとに異なる特徴を正しく把握して銘柄選択の目を養うことが求められていくだろう。たとえば、Jリートには、「オフィス」「商業施設」「住宅」「ホテル」「物流施設」「ヘルスケア施設」という大きく6つのタイプと、これらを組み合わせた「総合型」が存在する。当然のことながら、各Jリートのリスク・リターンはそれぞれ異なっている。その違いを見極めて自らの投資対象を決定していくプロセスが重要になっていくわけである。
Jリートは法定開示に加えて、投資法人ごとにホームページなどを通じた情報提供を積極的におこなっている。それらの定量情報だけでなく、Jリートの投資哲学や戦略などといった定性的な情報も得られたほうが納得して銘柄選びができるはずだ。その意味でも、「Jリートフェア2016」は投資家にとって大いに意義のあるイベントになったようだ。
説明会やブース展示を通じて、積極的に情報提供をおこなっていた各社。今年はエントランスホールに多めのイスや机を配置。相対的に多いシニア投資家にも優しい会場設定となっていた。
東京証券取引所 上場推進部
柴田 崇史氏
Jリートの2014年と2015年における配当込みリターンの分布を比較すると、2014年の平均リターンが41.76%、2015年が-4.57%となっています。2014年はリターンがマイナスになった銘柄はありませんでしたが、2015年は-30%近い銘柄や+40%超という銘柄がありました。銘柄によってパフォーマンスに大きなばらつきが生じるようになり、投資家の皆さんがこれまで以上に個別銘柄をきちんと選んでいく必要性が出てきています。
東京証券取引所 上場推進部
柴田 崇史氏
一般に、リターンはリスクの対価・見返りであるため、投資にあたってはリスクを正しく理解することが重要になります。Jリート投資のリスクには、「商品性リスク」「金融市場リスク」「不動産市場リスク」「不動産現物リスク」「制度リスク」などがあるといわれていますが、Jリートは法令もしくは東証のルールによって、一定の情報公開が義務づけられていますので、開示された情報を上手に活用してリスク・リターンを認識することが必要です。
情報開示の核となるのが「法定開示」です。有価証券報告書や資産運用報告を見ると、決算期末時点のJリートの状態などを確認することができます。また、東証のルールで義務づけられている「適時開示」も確認した方がいいでしょう。Jリートや運用する不動産の情報など、投資上、重要なことが発生、決定した場合、直ちに情報を出さなければならないルールになっています。
東証のホームページでは、1か月分の適時開示情報を無料で見ることができますので、ぜひご活用ください。http://www.jpx.co.jp/listing/disclosure/index.html
(この後、開示された定量情報を用いてJリートを評価する、NAV倍率、FFO倍率、分配金利回り、LTVについて、求め方や確認のポイントが紹介された。)
ボトムアップに投資対象を考えるだけでなく、それぞれのアセットタイプごとの特徴を理解し、トップダウンでも分析を行うことで、より良い投資判断を行っていただければと考えています。今回は、アセットタイプによって6種類に分け、それぞれの特徴を簡単に紹介していきます。
取材・執筆:K-ZONE (掲載日:2016年12月22日)
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