■Event Report
いちご投資顧問株式会社 上席執行役 グリーンインフラ本部長 日色隆善氏
カナディアン・ソーラー・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 大竹喜久氏
タカラアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 髙橋 衛氏
アールジェイ・インベストメント株式会社 戦略事業部長 日暮太一氏
タカラアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長 髙橋 衛氏
髙橋氏インフラファンドの仕組みはJ-REITと似ていますが、J-REITは不動産が投資対象、インフラファンドは太陽光発電設備などのインフラ資産が投資対象になっています。それが大きな違いです。インフラの整備や運営に民間の資金が活用されるようにするために2015年に市場が創設されました。国の成長戦略にもインフラファンド市場の成長が政策課題として挙げられており、今後の規模拡大が期待できると考えています。
J-REITと同様、導管性(一定の要件を満たす投資法人について実質的に法人課税を免除し、投資家における配当課税等との二重課税を回避する仕組み)を確保しながら、安定的に分配を出すという特徴を有しています。インフラファンドは、施設を保有する投資法人が、当該施設をオペレーターと呼ばれる発電事業者に賃貸し、当該オペレーターが発電事業により得た収入を基に賃料を支払うことで投資法人が収入を得る仕組みです。
インフラファンド市場は、社会的ニーズの高さなどから現在は再生可能エネルギー発電設備の中でも特に太陽光発電設備に投資する銘柄が全てです。しかし、今後、たとえば空港や上下水道、道路などに投資する銘柄が現れる可能性は十分にあるとみています。
カナディアン・ソーラー・
アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長 大竹喜久氏
大竹氏CO2(温室効果ガス)排出抑制については、1997年の京都議定書や2015年のパリ協定などで世界的に合意形成されています。日本も2030年度までに2013年度比で26%削減、2050年には80%削減する目標を掲げています。
しかしながら、日本の再生可能エネルギー導入はあまり進んでいませんでした。たとえば2014年現在の導入率はドイツで23%でしたが、日本は3.2%しかありません。なかでも東日本大震災後は原発停止が進み、火力発電のために化石燃料の使用が増えています。
日本のエネルギー自給率は、OECDによると以前は10%くらいでしたが2012年には6%にまで低下し、その後再生可能エネルギーの導入によって2016年には8.2%まで回復しました。ノルウエーなどの再エネ大国では自国で使う以上に発電して電気を輸出していますが、それとは大きな違いがあります。原油価格が高騰したら、世界のなかで日本が最も大きな影響を受けるような状況です。
政府は2030年のエネルギーミックスで太陽光発電の比率を7%くらいにまで高める計画です。そのためには64ギガワットの太陽光発電所が必要になります。2016年段階で稼働しているのは31ギガワット。その2倍の発電容量を確保するためには、インフラファンド市場を通じた民間資金の更なる活用が不可欠です。
再生可能エネルギー市場の根幹となるのは、国が定める再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)です。電気の買取価格は2012年に40円/キロワット、2017年は21円(同)で、2018年には18円(同)に見直されます。ここで大事なことは、発電施設の稼働開始時期ではなく認定を取った時点の買取価格が20年間採用されるということです。つまり、最近稼働を開始した発電施設でも40円の買取価格が適用されている施設はあるということ。2012年に認可を取って2017年に稼働を始めても売電価格は40円になります(※この段落中で言及されている金額は10キロワット以上の事業用太陽光発電施設の場合を前提にしています。)。
アールジェイ・インベストメント株式会社
戦略事業部長 日暮太一氏
日暮氏発電施設の敷設や運営には独特のノウハウが必要となります。1つめは現地調査と権利関係の「分析」。たとえば立地条件ですね。電力会社の鉄塔まで遠いと自社で電線を引く必要がありコストがかかります。2つめが「資金調達」のメドを立てる。そして、実際に施設を造る「企画」。最後が、効率性と経済合理性を追求して売電する「運営・管理」です。
場所や立地条件にもよりますが、1~2メガワットクラスの施設なら通常1年くらいでスタートできます。ちなみに1メガワットの太陽光パネルなら、サッカーコート1面くらいの土地が必要になります。
いちご投資顧問株式会社 上席執行役
グリーンインフラ本部長 日色隆善氏
日色氏当法人では分配金などの10カ年予想を公表しています。インフラファンドが保有する発電施設を賃借してオペレーターがおこなうメガソーラー事業では、FIT制度で買取価格が20年間固定されています。オペレーターは、生み出した電気を売電して収入を得るわけですが、販売価格の単価はFIT制度の下で固定化されていますので、収入を左右するのは、どれだけ電気を発電できたか、つまり、日射量なわけです。雨の日の売上はほぼゼロとなりますが、過去の天候データから、半年などの長期間でみれば、その期間の日射量は過去30年間の平均日射量にほぼ収れんすることがわかっています。結果として、オペレーターによるメガソーラー事業の収益は安定的に見込めますので、オペレーターから当法人に支払われる賃料も同様に安定的に見込めるわけですね。
また、上場4法人で少しずつ違いますが、各法人は賃料の最低保証制度を導入しています。日射量が平年より少なくても最低限の基本賃料をオペレーターから支払ってもらえるわけです。たとえば当法人では平年の95%を下回る日射量でも賃料は変わらないように決めています。一方で、インフラファンドでは日射量が多ければ多いほどオペレーターから得られる賃料が増え、結果として分配金が増えます。
インフラファンドの利益超過分配についても少し解説します。太陽光発電施設は地価の安い地方に造ることが多く、インフラファンドのバランスシート上の資産に占める発電設備の比率が相対的に大きくなりますので減価償却費も比較的大きくかかります。しかし、減価償却費は実際に現金が投資法人から流出するものではなく、減価償却費分の現金が手元に残りますので、これの一部を原資として投資家の皆さんに分配することで分配金の安定性を高めています。
さらに、インフラファンドは、保有する施設の地域分散を図ったり、故障しにくい施設を保有するとともにきちんとモニタリングができるような体制を構築したりすることで、収益安定性をさらに向上させています。
髙橋氏収益のベースになるのは確かにFIT制度ですが、制度の期間が終わっても施設が使えなくなるわけではありません。当法人ではFIT期間が終わっても保有施設を使い続けるシナリオを立てています。オペレーターの収入はFIT価格ベースより下がるでしょうから、オペレーターから受け取る賃料も下がると思われます。一方で当法人の借入は20年間ではなく17年間で完済するようになっていますので、金利負担といった費用も低下する見通しです。
日暮氏髙橋さんがおっしゃるようにFIT期間が終わっても利益は得られるでしょうし、これから電気の需要が減ることはないでしょう。いま現在、電気を使っている皆さま全員に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を負担いただいています。経済合理性を考えると、これを減らしていくことが重要です。その意味でも、インフラファンドの存在意義は大きいと思います。
大竹氏風力や地熱発電が考えられますが、時間がかかりそうです。バイオマスも拡大中ですが国内需要がなかなか追い付いてこない現状です。太陽光発電が最も現実的なのでしょう。当法人は太陽光発電設備に加えて、風力発電設備の取得に向けた検討を始めています。
日色氏大竹さんと同意見です。当法人のスポンサーも東北地方や中部地方で風力発電開発に着手しており、2022年には竣工の運びになっています。今後は上下水道や道路、競技場などの公共施設、石油コンビナートなどが投資対象になる可能性はあるでしょう。J-REIT市場は2001年に始まって、いまでは時価総額で約12兆円の市場に育ってきました。インフラファンドも今後、大きな成長を遂げることを期待しています。
【特別講演】J-REIT投資のポイントと2018年のマーケット展望 >>>
取材・執筆:K-ZONE (掲載日:2018年4月16日)
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