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J-REIT・インフラファンドの最新情報が集まる!

「J-REITファン オンラインwebセミナー」

 

 

2020年11月21日(土)、「J-REITファン オンラインwebセミナー」が開催された【主催:東京証券取引所(日本取引所グループ)、日経ラジオ社、プロネクサス】。これまでは、東京証券取引所を会場にしたイベント形式だったが、今回は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、オンラインによるwebセミナーとなった。参加者は事前登録のうえウェブサイトから配信される動画を視聴する。

出展社はJ-REIT2法人とインフラファンド2法人。事前登録時に出展社への質問を募って動画配信時にその質問に回答するなど、オンラインwebセミナーの双方向性を最大限に活用した仕組みだ。基調講演やトークセッション、特別講演など従来と変わらないプログラムが提供された。

J-REITもインフラファンドも2020年3月には投資口価格の大幅下落を経験しながらも、総じて安定分配を維持している。比較的安定して高い分配金が支払われるというJ-REITやインフラファンドの魅力は健在といえる。コロナ禍や米国大統領選挙の行方など不確定要素が多い投資環境だが、視聴者は各社の最新運用状況や見通し、識者の意見を見聞きしたことで、安心材料や投資のヒントを得ることができたのではないだろうか。

 


 

【基調講演】
J-REIT・インフラファンドの基本と魅力

東京証券取引所 上場推進部 課長
大島 行氏

 

時価総額13兆円で東証一部に次ぐ規模のJ-REIT市場


東京証券取引所
上場推進部 課長 大島 行氏

J-REITは2001年にできた比較的新しい市場です。東証第一部の時価総額は2020年10月末で約600兆円という非常に大きなマーケットですが、J-REITはそれに次ぐ約13兆円の規模まで成長しています。上場数は62社(銘柄)で比較的少なく、1社あたりの規模が大きいことが特徴のひとつと言えます。

J-REITをひとことでいうと、不動産賃貸業に特化した不動産会社(投資法人)。幅広い投資家の皆さんから資金を調達して、そのお金を用いてオフィスビルや賃貸マンション、ショッピングセンターなど不動産に投資します。そのテナントからもらう賃料をもとに投資家へ分配する仕組みです。

J-REITは配当可能利益のほとんどを配当するという特徴があります。通常の事業会社の場合、事業活動で得た収入からコストを引いた利益の約30%を法人税として払わなければなりません。残ったお金も必ずしも投資家に配当するわけではなく、一部は内部留保として会社が残しておき、そこで残った部分を投資家へ配当する仕組み。東証第一部の平均配当利回りは2.1%(配当をおこなっている企業の単純平均)になっています。

 

株式と比べて相対的に高い分配金利回り

一方のJ-REITは、不動産賃料などの収入からコストを差し引いた利益をすべて分配するのが基本です。厳密には配当可能利益の90%超を分配金として払うことにより法人税が実質的に課税されないこととなっており、事実上ほとんどのJ-REITがほぼ100%を分配しています。結果として、平均分配利回りは4.35%(各J-REITの予想分配金を基に時価総額を加重平均した値。2020年10月末時点)と、株式と比べて相対的に高い水準となっています。

J-REITのタイプを大きく分けると、単一用途の不動産に投資する特化型リートと、複数用途の不動産に投資する複合/総合型リートに分けることができます。特化型リートは、ひとつのタイプに投資しているので比較的リスク・リターンが見やすい特徴があります。複合/総合型リートは複数のタイプに投資しているので、投資の分散が図られているといえます。

▪️J-REITのタイプと特徴

配当込東証REIT指数、配当込TOPIXの相対指数推移(2009年12月末〜2019年12月末日時)グラフ

J-REITはさまざまな要因で分配金や価格が影響を受け、リスクも存在します。主なリスクは、商品性リスク、不動産売買市場のリスク、不動産賃貸市場のリスク、不動産価値毀損リスク、制度リスク、金融市場リスクの6つ。こうしたリスクについて十分理解のうえ判断することが必要になります。

 

年2回決算が多く、株式の配当時期との分散も可能

J-REITのの値動きを直近10年で見ると、配当込み東証REIT指数は配当込みTOPIXを上回っています。コロナ禍の影響を受けて今年3月には東証REIT指数が大きく下落する局面もありましたが、その後一定程度回復しています。また、近年のJ-REITの平均的利回りは4%前後で推移しています。J-REITの配当利回りは国債や銀行預金などの金利水準と比較して見ることが大事で、国債利回りとの差=イールドスプレッドがひとつの指標となっています。直近のイールドスプレッドも4%超となっており、これも相対的に魅力的な水準となっています。

現在は62銘柄が上場していますが、銘柄ごとに利回りが違うので投資の判断基準になるでしょう。また、決算期は1銘柄を除いて6か月決算になっています。決算期に投資口を保有していれば配当を受けられるわけですが、株式の場合、多くは3月決算で中間決算があれば9月。J-REITは3月と9月に決算が偏っていないので、分配金や配当金を受け取る時期を分散させることを考慮しながら銘柄選びをすることもできます。

 

低金利下でのメリットもあり、ETFとして購入・保有も

金利水準が非常に低い現状でのJ-REIT投資のメリットを2つ挙げてみます。1点目は金融商品としての相対的な魅力の向上です。安定的な賃料収入をもち、税制上のメリットのあるJ-REITは安定的な分配金利回りを獲得できる金融商品ということができます。爆発的な伸びは期待しにくいですが、安定的な利回りを獲得できることが魅力といえます。

2点目は資金調達コストの低下です。J-REITは借入金によって効率的・機動的な物件取得をおこなっており(平均的な有利子負債比率は40~50%)、良好な資金調達環境の下、借入れの長期・固定化を進めることで財務体質の強化を図ることで、分配金の向上が期待できます。

J-REITははETF(上場投資信託)としても購入・保有することができます。ETFは取引所で取り引きされる投資信託で、いわば取引所に上場しているインデックスファンド。具体的には、東証REIT指数に連動するETF(10銘柄)、東証REIT Core指数に連動するETF(3銘柄)、日経ESG-REIT指数に連動するETF(1銘柄)、野村高利回りJ-REIT指数に連動するETF(1銘柄)、東証REIT物流フォーカス指数に連動するETF(1銘柄)などがあります。

 

コロナ禍でも安定分配が期待できるインフラファンド

最近注目を集めているのがインフラファンド市場です。J-REITが不動産を保有するのと違って、インフラファンドはインフラ施設を保有します。現状全てのインフラファンドは太陽光発電施設を保有する投資法人で、その施設を借りたオペレーターが売電事業をおこなって収益を得ます。そこで得た売電料をもとにインフラファンドが賃貸料を得て、それを投資家の皆さんに分配する仕組みです。電力会社が同じ価格で20年間、電力を買い取る固定価格買取制度(FIT制度)によって、インフラファンドが得る賃貸料は安定しているといえます。

2020年10月末現在で7銘柄が上場しています。各ファンドの投資口価格は今年3月に下落しましたが、J-REITに比べると下落幅は小さく抑えられています。インフラファンドの賃料収入の原資となるオペレーターの売電料収入は、日照状況に影響を受けます。コロナ禍があっても日照には影響しないので、このあたりが評価された結果だと思われます。

2020年4月27日から算出・公表している東証インフラファンド指数はJ-REITと比べると安定的に推移しており、利回りは現状6%台とJ-REITより高い水準で推移しています。時価総額は足元で1000億円超。相対的に市場はまだ小さいですが、今後も安定利回りが継続できるのではと見られています。投資家別の保有比率は比較的個人が多くなっていますが、市場が成長するに連れて機関投資家も参入してきているようです。

当然のことながらインフラファンドにもリスクが存在します。FIT制度に起因するリスク、資産属性に起因するリスク、導管性に起因するリスクなどが主なリスクですが、これらをよく考えたうえで投資していただきたく思います。

▪️インフラファンド投資の主なリスク

配当込東証REIT指数、配当込TOPIXの相対指数推移(2009年12月末〜2019年12月末日時)グラフ

 

※本記事は登壇者の発言を記者が独自に取り纏めたものであり、登壇者の発言内容を正確かつ網羅的に記したものではありません。

 

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取材・執筆:K-ZONE (掲載日:2020年12月21日)

 

 

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