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オンライン無料ガイダンスセミナー

上場インフラファンドの実務

~風力発電設備の組入れに向けて~

 

 

東京証券取引所(日本取引所グループ)とプロネクサスは2021年3月25日と30日、オンラインによる無料ガイダンスセミナー「上場インフラファンドの実務~風力発電設備の組入れに向けて~」を開催した。上場インフラファンドの組成に興味のある事業者に対し、主にいま注目を集めている風力発電設備を組入れるための最新動向を提供する機会となった。当日の内容をサマリーでレポートする。

Ⅰ.上場インフラファンド市場について
 (東京証券取引所 上場推進部 大島 行 氏)

Ⅱ.風力発電の現状と今後の展望について~洋上風力の産業競争力強化に向けた取組を中心に~
 (経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 武智 翼 氏)

Ⅲ.上場インフラファンドの実務

 パート1:制度概要と実務上の留意点
  (森・濱田松本法律事務所 弁護士 佐伯 優仁 氏)
 パート2:建設・運営のポイントと組み入れに関する論点
  (森・濱田松本法律事務所 弁護士 岡谷 茂樹 氏)

 


Ⅰ.上場インフラファンド市場について

東京証券取引所
上場推進部
大島 行氏

 

投資対象の拡大が期待される上場インフラファンド市場

本セミナーのサブタイトルは「風力発電設備の組み入れに向けて」です。最初に海外における風力発電の保有事例を紹介します。

風力発電設備は海外においても、必ずしもファンド形態に限ったものではありませんが、上場している事例はございます。仮に、日本でもギガWh規模の開発を行う場合、数千億円程度の資金が必要になるといわれています。これらを自己資金や銀行借り入れなどの間接金融でまかないつつ機動的に開発を行おうとすると限界も出てくるでしょう。今後は日本でも、洋上風力を中心にギガWh規模の開発を想定するのであれば、ぜひ上場インフラファンド市場の活用を考えていただきたいと思います。

上場インフラファンド市場は2015年に創設されました。まず事業者がインフラ設備を開発・完成・稼働させていき、新たな設備開発に臨みます。しかし、自己資金を積み上げて、新たな開発に臨む場合、時間を要することが考えられます。そこで、インフラファンドを組成し、設備を売却し、その資金をもとに新たな設備の資金に回します。こうしたサイクルを通じて、投資家に対しては多様な投資先の提供、事業者に対しては開発資金の提供を進めることができるわけです。

上場インフラファンドと私募ファンドを比較して考えてみましょう。一般的にインフラファンドは、私募で組成されるケースが非常に多いと認識しています。特に現在は、私募ファンドでも低金利で十分な資金が調達しやすい環境にあるといえるでしょう。私募ファンドは、期限が定められており、一般的には、5年や10年、あるいは最長で20年程度の運用期限を設定しています。

しかし、インフラ設備そのものの運営となると、恐らく20年で終了することはありません。長いスパンで見ると、世界経済や金融市場にはさまざまな事象が発生していきます。究極的には、ゴーイングコンサーン(継続して企業が続くこと)を前提にしたビークルである上場インフラファンドは、インフラ設備の保有先として相性がいいのではないかと思います。

インフラファンドは投資家から資金を募ってインフラ設備を保有します。保有したインフラ設備をオペレーターに賃貸し、賃貸先からの賃貸料を原資に投資家へ分配金を支払う仕組みです。ちなみに得られる賃貸料は、再生可能エネルギー設備であれば電力会社などへの売電料が原資となります。

東証が想定している上場インフラファンド市場は、さまざまな資産を念頭に置いています。現在は太陽光発電施設のみですが、風力や地熱を含めた再生可能エネルギー発電設備、コンセッション(公共施設等運営権)、道路などの運輸関係資産、パイプラインなどのエネルギー関係資産、その他(上下水道など)が想定されています。これまで上場インフラファンドに組み込まれていない資産についても、意欲的に取り組みたいという声があれば、ぜひお聞かせいただければと思います。

 

規模拡大へ公募・売出で追加取得できるメリット

上場インフラファンド市場は、インフラファンド投資法人が直接保有する形態と、特別目的会社(SPC)などを通じて保有する形態の2通りのスキームがあります。

直接保有の場合を念頭に概要をご説明しますと、インフラファンド投資法人とは別に資産運用会社があり、ここに運用委託することになります。この資産運用会社は通常、スポンサーの子会社等として設立され、インフラファンド投資法人の“頭脳”として運用面のアドバイスをします。インフラ設備そのものの保有はインフラファンド投資法人ですが、スポンサーは資産運用会社を通じてインフラ設備のマネジメントに携わることになります。なお、間接保有の場合も想定し、上場制度として整備しておりますが、投信法上または税法上の制限等もあるので留意していただきたいと思います。

2021年3月時点での上場銘柄は7社。2019年2月、2020年2月に上場した直近2銘柄はともに商社系スポンサーを母体とした投資法人です。資産規模が最も大きいのは足元では約590億円となっています。上場インフラファンド市場の時価総額は全体で1400億円弱ですが、2年前が約700億円なので、2年で約2倍に成長しました。東証としても今後の拡大に向けて積極的に取り組んでいく予定です。

上場インフラファンドは発行体によって、スポンサーの開発状況などに応じてファイナンスを行って設備取得=規模拡大を図っています。これまで6銘柄が合計13回のPO(公募・売出)を行いました。このように、市場で資金を調達して、設備を追加取得ができるのが上場インフラファンドのメリットのひとつではないでしょうか。

 

ESG資金の獲得に向けた仕組みが積極化

上場インフラファンドは多様な規模の発電施設を保有しています。規模の大小や地域については事業者おのおのの考え方によりますが、なかにはFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)価格の低い発電所も散見されます。足元では20円前後の発電所があり、将来的にはFIT制度に依拠しない案件も組み込まれるかもしれません。

直近で金融機関の方と話すと、利回りやESGなどの視点に着目し、インフラファンドに投資しようという信金・信組などの金融機関の注目も高まっているようです。しかし、上場インフラファンドにおける投資口保有比率をJリートと比べると、まだまだ機関投資家の比率が低く、個人投資家が主体となっています。東証としても、市場規模の拡大とともに幅広い投資家に投資していただけるように取り組んでいきます。上場インフラファンド各社もESG資金の獲得に向けた取り組みを始めています。さまざまな発行体がグリーン評価を受けたり、グリーン・エクイティを実施したりしています。

2020年4月には東証インフラファンド指数の算出、公表を始めました。世界的にも投資資金がパッシブに流れているなか、指数の算出は不可欠でした。将来的には年金などを含めた幅広い資金の受け皿になるような市場をめざしていく考えです。

 

(次ページ) Ⅱ.風力発電の現状と今後の展望について >>>

※本記事は登壇者の発言を記者が独自に取り纏めたものであり、登壇者の発言内容を正確かつ網羅的に記したものではありません。

 

 

 

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