■Event Report
楽しみながらREITを学ぶ個人投資家応援イベント
2023年9月30日(土)、「J-REITファンin東京」が東京・千代田区のJA共済カンファレンスホールで開催された。東京でのリアル開催は2020年2月以来。識者の講演や人気パーソナリティと投資法人との掛け合いによるプレゼンテーションなど、来場者は従来通りのプログラムに満足した様子で聞き入っていた。
今回の参加REITは以下の5法人。
・コンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)
・CREロジスティクスファンド投資法人(3487)
・SOSiLA物流リート投資法人(2979)
・フロンティア不動産投資法人(8964)
・平和不動産リート投資法人(8966)
(五十音順)
ここでは当日のプログラムの一部を抜粋して紹介する。
主催:株式会社東京証券取引所(日本取引所グループ)
株式会社日経ラジオ社
株式会社プロネクサス
株式会社東京証券取引所
上場推進部長
荒井 啓祐氏
株式会社東京証券取引所 上場推進部長 荒井 啓祐氏
東証J-REIT市場の時価総額は16.1兆円。株式のプライム市場が826.8兆円、スタンダード市場が24.3兆円、グロース市場が7.8兆円ですので、一定の存在感のある市場だと言いことができます。世界的にも、米国に次いで2番目に大きな市場になっています。
J-REIT市場には今、60銘柄が上場しています。単純計算で1銘柄あたりの時価総額は2600億円。グロース市場では同じく142億円ですから、圧倒的に大きいということが言えます。なかには、時価総額1兆円を超えるような大きいREITもあります。
REITはReal Estate Investment Trust=不動産投資信託のことですが、投資信託というよりは「自社で保有する不動産の賃貸に特化した不動産会社のようなもの」と考えていただくとイメージしやすいと思います。会社に近い「投資法人」という法律上の制度を利用しており、賃貸に出す不動産(オフィスビル、住宅、物流施設など)を投資法人が購入、保有しています。
投資法人が不動産を購入するにあたっては、投資家さんからの出資金と金融機関からの借り入れが原資になります。借り入れがあるということが1つのポイント。賃貸不動産から得た賃料や売却益がすべて、分配金として投資家さんに還元されるのではありません。利息が支払われた後に分配されるので、金利の上昇局面では影響を受けることになります。
J-REITは不動産賃貸に特化しているので、一般の不動産会社のように開発などにかかる費用は発生しません。シンプルに安定した収益が期待できるということが言えると思います。加えて、複数の不動産を保有してポートフォリオ運用をしていることで、テナントの一部が抜けたりしてもダメージが少なくなる仕組みになっています。
J-REITは相対的に利回りが高いという印象がありますが、その利回りの高さには制度的な根拠があります。
一般の上場会社の場合、事業収入からコストを引いたものが利益になり、利益には3割程度の法人税かかります。そこから内部留保を除いた残りが配当金として投資家さんに分配される仕組みです。直近のデータでは、プライム市場上場会社の平均利回りは2.26%。これに対して、J-REITは4.09%になっています。
J-REITでは、不動産賃料などの収入からコストを差し入ったものが利益なのは一般の上場企業と同じですが、法人税がかかりません。なぜかと言うと、投資法人の仕組みにおいて利益の90%以上を分配金にすれば法人税がかからないことになっているからです。専門用語でいうところの「導管性」という仕組みです。各REITさんはきっちり90%以上を分配に回すようにしており、これがJ-REIT最大の特徴と言うことができるでしょう。
J-REITタイプを大別すると、特化型と複合・総合型に分かれます。特化型は、例えばオフィス、住宅、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケアなどに区別できます。それぞれの市場環境が違っており、タイプによって価格がいい時もあれば悪い時もあるということです。
J-REITの魅力は大きく3つあります。1点目は安定した分配、2点目は比較的手の届く金額で投資が可能ということ。現状、数万円前後からの投資が可能になっています。実物不動産への投資と違って、手の届く金額と言えると思います。不動産への実物投資には、管理やメンテナンスなどのコストがかかります。J-REITには当然かかりません。そして、3点目の魅力は、株式と同様に売買できること。4桁の証券コードも株式と同じです。
東証の市場には一定の流動性があるので、売りたい時にすぐ売れることが実物不動産への投資とは違うところです。不動産は換金が難しいですから。このあたりもJ-REITのメリットの1つと言えるでしょう。
J-REITのリスクは大きく分けると6つあります。1つ目が「商品性のリスク」。市場環境や金利情勢などさまざまな要因で変動します。元本、分配金ともに保証されていません。価格推移は見ておく必要があります。2つ目が「不動産価値毀損リスク」です。日本には地震などの自然災害が多いので、不動産価値が急に毀損(きそん)してしまうリスクがあります。以下、「不動産売買市場のリスク」「不動産賃貸市場のリスク」「制度リスク」「金融市場リスク」の6つです。
最近では日銀の金融政策がどうなるかで、価格は影響を受けます。各REITが想定するリスクについては、目論見書に記載されています。
TOPIXと東証REIT指数を配当込みで比較すると、過去の実績では総じてJ-REITが上回っており、長期保有による分配金の収入を考慮するとJ-REITの魅力を再確認できると思います。
J-REIT市場には現在、60銘柄が上場、そのうち30銘柄が特化型です。投資口価格は銘柄によってばらつきがありますが、数万円から60万円台で購入できる水準となっています。
J-REIT投資の1つの着目点として決算期があります。事業会社の場合は3月か9月に集中していますが、J-REITの決算期は偏っていません。つまり、決算期の違う複数のJ-REITに投資することで、分配金を毎月得ることも可能になります。こうした工夫をしている投資家さんもいらっしゃるようです。
J-REITは現在、ESG課題への取り組みも進んでいます。ESG対応には機関投資家だけでなく、昨今は個人投資家の方も高い関心を寄せるようになりました。各REITとも国際的な認証取得を積極的に進めており、例えば、GRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark=グローバル不動産サステイナビリティ・ベンチマーク)は現在、57銘柄が認証取得しています。
すでにご存知の通り、J-REITに投資するETF(上場投資信託)もあります。J-REIT関連のETFは現在18本。そのうち、東証REIT指数に連動するETFが10本あります。他には、東証REITCore指数や東証REIT物流フォーカス指数に連動するETFなどがあります。銘柄によって違いますが、数千円台から数万円で投資可能。信用取引も利用できるので、各銘柄の流動性に留意しつつご検討いただければと思います。
(出典:東京証券取引所。数字や金額はいずれも2023年8月末現在)
【特別講演①】 不動産市況の現状と今後のJ-REIT市況の見通し >>>
※本記事は登壇者の発言を記者が独自に取り纏めたものであり、登壇者の発言内容を正確かつ網羅的に記したものではありません。
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