専門家インタビュー

■第41回
SMBC日興証券アナリスト 鳥井裕史氏に聞く

2021年のJ-REIT市場と2022年の展望

SMBC日興証券株式会社 株式調査部
シニアアナリスト 鳥井裕史 氏
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員
一般社団法人 不動産証券化協会認定マスター

 

2021年のJ-REIT市場パフォーマンス」

岩佐浩人氏フォト

鳥井裕史氏

2021年12月末の東証REIT指数は2,066.33ポイントとなり、2020年12月末(1,783.90)との比較で15.8%上昇、配当込みのトータルリターンでは20.0%上昇した。2021年の東証REIT指数は1月から7月まで全ての月でプラスのパフォーマンスとなり堅調に推移した。しかしながら、8月から11月にかけてはJ-REITによる増資の増加による需給環境の悪化や金利上昇懸念等を背景に軟調な展開となった。そして12月後半に若干持ち直して2021年を終えた。2021年12月末時点のJ-REIT市場全体の時価総額は16兆9957億円となり、2020年12月末時点の14兆3980億円の比較で18%増加した。

2021年の東証REIT用途別指数を見ると、オフィス指数が11.7%上昇、住宅指数が19.2%上昇、商業・物流等指数が19.1%上昇、物流フォーカス指数が22.3%上昇。用途別では物流フォーカス指数、商業・物流等指数、住宅指数が相対的に堅調であった一方、オフィス指数が軟調であった。なお、商業・物流等指数には商業施設型、物流施設型の他、ホテル型も含められている。用途別指数だけではタイプ別のパフォーマンス特徴を正確に把握することが難しい場合があろう。

そこで、筆者は各タイプの主要2銘柄の単純パフォーマンス比較を行っている(図表2参照)。それによると、2021年の相対パフォーマンスは物流施設型が堅調であった一方、中堅オフィス型やホテル型が軟調であった。2021年も新型コロナ問題がJ-REIT市場全体の動きに大きな影響を与えた。つまり、コロナ禍においても底堅い収益が期待できる物流施設型が選好され、逆に収益が悪化しているオフィスやホテル型は回避される傾向が続いたと言えよう。


 

■図表1:2021年の東証REIT指数、TOPIX、東証不動産業指数の推移(2020年12月末=100)
図表1:2021年の東証REIT指数、TOPIX、東証不動産業指数の推移(2020年12月末=100)

 

■図表2:2020年以降のJ-REIT各タイプ主要銘柄のパフォーマンス(2019年12月末=100)
図表2:2020年以降のJ-REIT各タイプ主要銘柄のパフォーマンス(2019年12月末=100)

 

「J-REIT市場分配金利回り及び長期金利との差、NAV倍率の推移」

2021年12月末時点のJ-REIT市場全体における平均弊社予想分配金利回りは3.5%、長期金利に対する分配金利回りスプレッドも3.5%であった。2020年12月末時点(分配金利回り:4.1%、同スプレッド:4.1%)との比較では2021年に東証REIT指数が15.8%上昇したこともあり、分配金利回り及び分配金利回りスプレッドはそれぞれ57bps、62bps低下した。これにより、2019年12月末水準(分配金利回り:3.5%、分配金利回りスプレッド:3.5%)と概ね同水準となった。

J-REIT市場及びそれを取り巻く外部環境が安定していた2013~15年での同スプレッドは3.0~3.5%で推移していた。クレジット市場が継続的に安定推移し、かつ安定的な分配金の確保が確認されれば、J-REITの分配金利回りスプレッドが3.0~3.5%のレンジで推移すると考えられる。現状はこのレンジ内の上限近辺にあったと言えよう。

■図表3:J-REIT市場全体の分配金利回りと長期金利に対する分配金利回りスプレッドの推移
図表3:J-REIT市場全体の分配金利回りと長期金利に対する分配金利回りスプレッドの推移

2021年12月末時点のJ-REIT市場全体におけるNAV倍率(鑑定評価額ベース)は1.17倍であった。2020年12月末時点のNAV倍率1.01倍との比較では投資口価格上昇によりNAV倍率は上昇した。

2019年12月末までの過去10年間及び過去7年間における平均NAV倍率はそれぞれ1.12倍、1.21倍であった。2021年12月末時点のNAV倍率は同2期間の中間に位置しており、新型コロナ問題発生前である2019年12月末時点(1.19倍)に比較して若干低水準となった。2021年12月末時点のNAV倍率から判断すると、現在のJ-REIT市場に過熱感や割高感は特になく、概ね適正水準にあると考える。

各REITが決算毎に公表する鑑定評価額をベースとした含み損益率は2011年後半以降改善が続いた。新型コロナウイルス問題が発生後の2020年3月から一時横ばいもしくは若干の低下となったが、2021年に入ると再び含み益率は上昇に転じた。2021年10月末時点でJ-REIT市場全体の含み益(鑑定評価額ベース)は4.34兆円、含み益率は+21.8%と高水準にあり、J-REIT市場発足来の最高水準にある。

足元では新型コロナ問題の影響により全般的に空室率が上昇し、賃料上昇を見込みにくい。ただし、低金利環境の継続やグローバルでのオルタナティブ投資ニーズの高まり等から不動産売買市場には資金流入が継続しており、キャップレートは低下基調が続いている。キャッシュフローの低下圧力の緩和とキャップレートの低下基調継続から、今後の鑑定評価額は引き続き高値推移となるだろう。

 

■図表4:J-REIT市場全体のNAV倍率の推移(鑑定評価額ベース)
図表4:J-REIT市場全体のNAV倍率の推移(鑑定評価額ベース)

 

「2021年におけるJ-REIT市場を取り巻く投資家動向について」

2021年のJ-REIT市場を取り巻く需給構造を見ると、以下の注目点が挙げられる。

  1. 2021年1~3月の個人投資家によるJ-REIT特化型投信への資金流入超過の動きは終始旺盛であった。一方、4月から9月前半にかけては同投信から資金流出超過となった。投資口価格が上昇し、東証REIT指数は2019年12月末(2,145ポイント)水準に到達したこと等により利益確定売りの姿勢が目立った。9月後半から10月にかけては投資口価格の下落により押し目買いの動きも見られたものの、本腰を入れて買う姿勢には至らなかったものと思われる。
  2. 2021年3月までの地域金融機関は全般的に様子見姿勢であった。2020年3月の東証REIT指数急落もあり、リスクテイクしづらい状況であったと察することができる。一方、新年度入りした2021年4~5月はREIT-ETFへの資金流入も確認されており、インカムゲイン獲得ニーズから買い姿勢であったと見ることができる。6月は投資口価格上昇で利益確定売りも、2021年後半における投資口価格の下落局面では押し目買いが確認された。
  3. 海外投資家について、2021年3月及び6月に関してはFTSEグローバル株式指数シリーズへのJ-REIT組入れに伴う買い需要が膨らんだ。2021年前半から9月前半にかけては低金利下でのインカムゲイン期待から買い姿勢であったと考えられる。しかしながら、9月後半から10月にかけては米国をはじめとした金利上昇懸念から資金が逆回転して売り越しに転じる局面もあった。一方、11月に関しては同問題の落ち着きから再び買い越しとなった。

<投信・個人の売買動向>

投信協会や弊社収益データに基づくと、主に個人投資家向けの公募型J-REIT特化型投信(除くREIT-ETF)への資金流入超過額は2020年通年で2,613億円に上った。2021年1~3月についても+500億円強と資金流入超過が継続し、根強いインカムゲインニーズがあったものと推察される。一方、2021年4~12月では一転して同投信から約1,100億円の資金流出超過となった。10月単月では20億円弱の資金流入超過に転じる場面も見られたものの、総じて売り越し姿勢であったと言えよう。

<銀行(含む証券自己)の売買動向>

最近の地方銀行をはじめとした地域金融機関はREIT-ETFを通じてJ-REITに投資する傾向がある。東証が公表している「ETF/ETN Factsheet 2021」によると、2020年7月末時点での地銀をはじめとした国内金融機関におけるREIT-ETFの保有シェアは9割を超える。そこで、以下ではREIT-ETFへの資金流出入動向から地域金融機関のJ-REITへの投資姿勢を探りたい。

2021年4~5月における東証REIT指数もしくは東証REIT Core指数をベンチマークとするREIT-ETF16本の純資金流入額は+260億円となり、2021年度に入ってからは超低金利下でのインカムゲインニーズが確認された。ただし、2021年6月は東証REIT指数が上昇を続けたこともあり利益確定売りのために450億円の大幅な資金流出超過となった。一方、同年7~12月の同ETFへの資金流入超過額は約+1,700億円に上った。

新型コロナ問題が収束に向かうことでJ-REIT市場を取り巻く環境に安心感が確認でき、かつ国内長期金利が低位にとどまる状況であれば、今後も継続した買いが期待できよう。ただし、あくまで地域金融機関は「インカムゲインニーズ」での投資であるため、「押し目買い姿勢」になることも想定される。

<外国人の売買動向>

東証によると、外国人は2021年1~12月は2,606億円の買い越しであった。うち、3月及び6月はそれぞれ810億円、598億円の大幅買い越しであったが、これの大半はFTSEグローバル株式指数シリーズへのJ-REIT組入れに伴う買い需要と言えよう。同組入れは2020年9月、12月、2021年3月、6月の4回に分けて実施された。一方、このインデックスは2021年6月に完了した。

その特殊要因を除いても9月前半までは買い越し姿勢であった。これは世界的な低金利環境によりグローバルインカムファンドへの資金流入が継続し、これらファンドからJ-REIT市場へも資金が向かったものと思われる。ただし、9月後半から10月にかけては米国金利上昇が懸念されたことにより資金が逆流したことにより売り越しに転じたものと言えよう。

そのような観点から、これらグローバルインカムファンドについては引き続き世界的な金利動向が重要であろう。仮に世界的に長期金利が低位安定となればインカムファンドへの需要が高まることを通じてJ-REITへの資金流入継続が期待できよう。一方、逆の動きとなれば資金の逆流も懸念されるため注意したい。

他方、国内長期金利が相対的に他国よりも低位安定し、かつ国内における新型コロナ問題が他国に比べて良好な状態が保たれれば、相対的にJ-REITはグローバルREIT市場に比較してアウトパフォームすることは十分に考えられる。そのような状況となれば、グローバルリアルエステイトファンドからJ-REIT市場に資金流入することが期待できよう。

 

■図表5:J-REIT特化型投信への純資金流出入状況(単位:億円)
図表1:J-REIT特化型投信への純資金流出入状況(単位:億円)

 

■図表6:投資部門別売買動向(単位:億円)
図表2:投資部門別売買動向(単位:億円)

 

「J-REIT市場におけるデット調達状況」

J-REIT市場におけるデット調達環境は引き続き良好であり、問題はないと考える。2021年12月末時点のJ-REIT市場全体の有利子負債残高は9兆5467億円と2020年12月末(9兆2150億円)、2019年12月末(8兆6165億円)及び2018年12月末(8兆1008億円)に比較してそれぞれ3,316億円(+4%)、9,301億円(+11%)、1兆4459億円(+18%)増加。金融機関による貸し渋りの様子は引き続き見受けられず、残高は増加傾向を維持している。ただし、一部ホテル系銘柄では物件売却で借入金を返済するケースや借入期間の短縮化、融資関連費用の増加が見られる点には一定の留意をしたい。

2021年12月末時点におけるJ-REIT市場全体の有利子負債調達コストは0.59%であり、2020年12月末の0.61%、2019年12月末の0.65%、2018年12月末の0.70%に比較してそれぞれ2bps、7bps、12bps低下。超低金利環境下において借換え金利が従前の調達コストを下回る事例が大半であり、同市場全体のデットコストは低下を続けている。新型コロナウイルス問題を発端とした資金繰り懸念は顕在化していないと言えよう。平均残存年数は2021年12月末時点では4.3年であり、2019年以降横ばい傾向を維持している。

2021年のESG債(グリーンボンド、ソーシャルボンド、サスティナビリティボンド)の発行額は1,105億円、投資法人債発行額全体の71%となり、ともに過去最高を更新した。2017年3月にジャパンリアルエステイト(8952、JRE)がJ-REITで初めて「DBJ Green Building認証付私募債」を発行、2018年5月に日本リテールファンド(8953、JRF、現・日本都市ファンド)がJ-REITで初めてグリーンボンドを発行した。それ以降、J-REIT市場においてESG債の発行が増加。2021年の同発行市場ではその流れが加速した。投資法人債発行市場においてESG債が既に主流となり、資金調達においてもESGに着目する動きが浸透してきたと言える。

 

■図表7:J-REITの投資法人債発行額及びESG発行額の推移
図表7:J-REITの投資法人債発行額及びESG発行額の推移

 

「J-REIT市場におけるエクイティ調達状況」

2021年のJ-REIT市場におけるエクイティファイナンス実績は払込ベースで4,564億円(新規上場時の売出し含む)。2020年通年実績の6,112億円に対して25%少ない水準であった。2021年前半(1~6月)、物流施設型ではスポンサーによるキャピタルサイクルニーズをとらえた物件取得及びエクイティファイナンスが継続したものの、その他サブセクターでは2020年末段階でインプライド・キャップレートが十分に低下した水準でなかったことから、エクイティ調達は1,488億円と低調であった。

一方、投資口価格の回復により2021年6月末時点のJ-REIT市場全体でのインプライド・キャップレートは3.7%と新型コロナ問題発生前である2020年初時点とほぼ同水準にまで低下。2021年後半(7~12)月は物流施設型だけでなく、商業施設型や複合・総合型でも公募増資を実施する動きとなった。これにより、同年7~12月のJ-REIT市場全体でのエクイティファイナンス額は3,076億円と同年前半の2倍超の水準に達し、旺盛な状況となった。

また、2021年1月に日本プロロジスリート(3283、NPR)がJ-REIT初となるグリーンエクイティ・オファリングの実施を発表、374億円を調達した。同年11月には2回目のグリーンエクイティ・オファリングの実施を発表。グリーンエクイティ・オファリングの実施は、同REITのESGへの強いコミットメントを示すものであるとともに、投資家層の更なる拡大及びエクイティ資金調達力の中長期的な強化に資するものであったと言えよう。また、同年9月にCREロジスティクスファンド(3487、CRL)もグリーンエクイティ・オファリングの実施を発表、131億円を調達した。投資法人債発行市場ほどではないが、投資口発行市場においてもESGに着目する動きが始まっている。

 

■図表8:J-REITによるエクイティファイナンス実績(2021年12月30日時点、払込ベース、OA分含む))
■図表8:J-REITによるエクイティファイナンス実績(2021年12月30日時点、払込ベース、OA分含む))

 

「2021年のJ-REIT市場トピック①:J-REIT市場創設20周年」

J-REIT 市場は2021 年9 月10 日に市場創設20 周年を迎えた。2001 年9 月10 日に日本ビルファンド(8951、NBF)とジャパンリアルエステイト(8952、JRE)が東証に上場してスタート。様々な外部環境の変化により安定期、活況期、低迷期をそれぞれ経つつ、また、市場未整備の課題を改善させながらJ-REIT 市場は着実に資産規模と時価総額を拡大してきた。2001 年9 月末時点におけるJ-REIT 市場全体の時価総額は2,500 億円、取得価格総額は3,200 億円程度にすぎなかったが、2021 年9 月末時点ではそれぞれ17.1 兆円、21.1 兆円へと拡大した。

J-REIT市場のパフォーマンスは各年で良し悪しはあったものの、分配金というインカムゲインは着実に積み上がり、2001年9月10日から2021年9月末までの約20年間での配当込みのトータルリターンは+400%となり、TOPIXの+178%を大きく上回る結果となった。あらためてJ-REITの複利効果を含めた「インカムゲイン」の大きさは注目に値しよう。

 

■図表9:J-REITとTOPIXのパフォーマンス比較(2001年9月10日=100)
図表9:J-REITとTOPIXのパフォーマンス比較(2001年9月10日=100)

 

「2021年のJ-REIT市場トピック②:2018年以来3年ぶりにJ-REITによるオフィスの取得額及び取得シェアが物流施設を上回る」

2021年のJ-REITによる物件取得実績は1兆5921億円(優先出資証券等は除く、追加取得は含む)となり、2020年通年実績の1兆3925億円を14%上回った他、2019年通年実績の1兆4525億円も10%上回り、旺盛であったと言えよう。特に、2021年7月以降は幅広いタイプのREITでエクイティファイナンスが活発化したことも背景にあろう。

そして、オフィスの取得シェア(取得価格ベース、以下同様)は全体の47%を占めた。2020年実績(24%)との比較では大幅に上昇し、2018年以来3年ぶりにオフィスの取得額及び取得シェアがタイプ別で最大となった。このうち、NBFの大型3物件(新宿三井ビルディング、グラントウキョウサウスタワー、飯田橋グラン・ブルーム)の取得がオフィス全体の40%を占め、同3物件を除いたベースでは全体に占めるオフィスのシェアは35%であった。物流施設のシェアは24%(2020年:45%)と2020年に比較して大幅に低下しているように見える。ただし、NBF3物件を除くベースで見ると全体の30%を占めた。住宅は11%(2020年:10%)とほぼ横ばい。商業施設は9%(同6%)と回復し、ホテルは1%(同4%)と取得シェアが大きく低下したままであった。

オフィス賃貸市場は空室率上昇等で厳しい環境であったものの、物件入替等によりポートフォリオの質を高めることを目的として各REITのオフィス投資への意欲は強かった。物流施設に関しては国内外デベロッパーが積極的に物流施設開発を行い、これらデベロッパーがスポンサーとなるREITに物流施設を売却する動きは引き続き継続された。

商業施設型については、2020年前半に各商業施設型REITの投資口価格は大きく下落し、増資を実施して資産規模拡大をできる環境でなかったため取得事例は少なかった。一方、2021年に入ると投資口価格は回復してインプライド・キャップレートは低下。それにより、各商業施設型REITは公募増資により物件取得を実施して外部成長を再開する動きが見られた。

ホテルは星野リゾート・リート(3287、HRR)を除けば、新型コロナ問題等の影響を受けて同収益環境は低迷が継続。新規で資金調達可能な環境では無かったことから物件取得を実行できるような状況に無かったと言えよう。

 

■図表10:-REITによる物件取得実績(暦年ベース)
図表10:-REITによる物件取得実績(暦年ベース)

 

 

「2021年のJ-REIT市場トピック③:J-REITによる物件売却額が過去最高となる」

2021年のJ-REITによる物件譲渡総額は4,492億円であり過去最高の売却額となった。従来の最高額であった2018年(譲渡価格総額:3,657億円)を834億円上回った。用途別の譲渡実績(譲渡価格ベース)を見るとオフィスが2,280億円(全体の51%)、住宅が489億円(11%)、商業施設が1,052億円(23%)、物流施設が68億円(2%)、ホテルが277億円(6%)、その他が325億円(7%)であった。特にオフィスと商業施設の物件売却が目立った他、ホテルの売却事例も成立した。

代表的な売却事例は、日本ビルファンド(8951、NBF)による「中野坂上サンブライトツイン(譲渡価格:400億円、譲渡日:2021年9月)」や「NBF南青山ビル(316億円、2021年3月)」の他、東急リアル・エステート(8957、TRE)による「世田谷ビジネススクエア(228億円、2021年12月)」、NTT都市開発リート(8956、NUD)による「スフィアタワー天王洲(180億円、2021年12月)」等が挙げられ、オフィスの売却事例が目立った。

これら物件売却は一部を除きポートフォリオの質向上を目的とした物件入替や不動産売買市場の活況を活かした売却益の計上が物件売却理由として挙げられる。今後についてもこのような流れが続くことは十分に考えられよう。

 

■図表11:J-REITによる物件譲渡実績(譲渡額ベース)(暦年ベース))
図表11:J-REITによる物件譲渡実績(譲渡額ベース)(暦年ベース)

 

「2022年のJ-REIT市場展望」

2022年前半の東証REIT指数見通し

2022年1~3月はJ-REIT市場の需給環境悪化懸念や金利上昇リスク等により不安定な相場となるとみている。例年1~3月は他四半期に比較してJ-REITによるエクイティファイナンスが高水準に上ることが背景にある。2021年の同四半期はコロナ禍で資金調達環境に不透明感があったため低水準にとどまったものの、2022年は通常パターンに戻ると想定。2015~18年における同四半期の同指数を振り返ると100ポイント前後の調整は視野に入れる必要があろう。実際、東証REIT指数は1月に入り2,000ポイントを下回り、また同月中旬には1,800ポイントに近づく局面も見られた。その局面ではインカムゲインニーズや割安感からの押し目買いを期待したい。

2022年4月以降は需給環境や金利環境に落ち着きが見られれば、メインシナリオの妥当レンジで掲げる2,100~2,200ポイントで推移することを想定。他方、オフィス市況の反転が見えないうちはJ-REITに対する減配懸念が払拭されづらい、もしくは確かな増配期待が持ちづらいという状況により、上値を大きく追う展開も描きづらいと考える。逆に、オフィス市況に反転の兆しが見えてくれば、2,200ポイントを上回るポジティブシナリオも視野に入ってくると考える。

2022年後半から年末年に向けて東証REIT指数見通し

2022年のJ-REIT市場にとって重要な項目は(1)長期金利、(2)外部成長(物件取得による分配金成長)の有効性、(3)オフィス市況、のそれぞれの動向と言えよう。仮に国内長期金利が0.0~0.2%の範囲内で低位安定し、かつ先行きもその傾向が続くということであれば、J-REITに対するインカムゲインニーズは衰えることなく下値の固い展開は継続しよう。まずは弊社がメインシナリオとして掲げるターゲット東証REIT指数レンジ2,100~2,200ポイントで推移しつつ、2,200ポイントを目指す展開を期待したい。

その上で、2021年半ば以降活発化している物件取得(+増資)が一口当たり収益性の向上に寄与し、それが継続的に実施されることが見通せれば「外部成長」が投資口価格上昇のエンジンになり得よう。そして、その外部成長が低調なオフィス市況による「内部成長のマイナス」を補うものではなく、オフィス市況改善に伴い「外部成長と内部成長」がともに増配寄与することとなれば、東証REIT指数2,500ポイントも見えてくると期待したい。そのため、目先は各REITが実施するエクイティファイナンスが外部成長に寄与するのかという点と、オフィス市況動向を注意深く見守りたいと考える。

 

■図表12:ターゲット東証REIT指数に対する考え方
図表12:ターゲット東証REIT指数に対する考え方

 

 

鳥井裕史氏プロフィール
大和総研、大和証券SMBCを経て2010年より現職。15年超にわたりJ-REIT市場の調査・分析に従事。Institutional Investor誌「All-Japan Research Team」REIT部門で2012~21年で10年連続1位。日経ヴェリタス誌「アナリストランキング」REIT部門で2016~2021年で6年連続1位。一般社団法人不動産証券化協会認定マスター。一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員。

 

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