ヘルスケアリート

第1回 SMBC日興証券シニアアナリスト鳥井裕史氏に聞く J-REITにとってESGは欠かせない

昨今、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の重要性がますます高まってきています。とりわけ国内外において、経済・社会・環境を巡るグローバルな課題に関する17の目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」への関心が高まっており、こうした課題に対する有力な手段として、ESG投資が注目されています。こうした状況を踏まえ、SMBC日興証券シニアアナリスト鳥井裕史氏に、J-REITにおけるESGに関連する取組みやその意義についてご説明いただきました。

J-REITにとってのESGの重要性は増している

ESGとは「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取ったものである。2015年9月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「資産運用においてESGの視点を反映させる国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)」に署名したこと、2017年7月にESG指数をベンチマークとした運用開始を発表したこと等を背景に、同分野への注目が高まっている。今後J-REIT市場及び国内不動産市場が質の向上を伴って成長していくためにはESGに対する取組みの重要性は高いものと考える。

●図表1:PRI 6原則(国連の責任投資原則)

1 私たちは、投資分析と意思決定プロセスにESG の課題を組み込みます。
私たちは、活動的な所有者となり、所有方針と所有慣習にESG 問題を組み入れます。
私たちは、投資対象の主体に対してESG の課題について適切な開示を求めます。
私たちは、資産運用業界において、本原則が受け入れられ、実行に移されるよう働きかけを行います。
私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

出所: 国連、SMBC日興証券

 

J-REITにとってのE(Environment)への取組み

鳥井裕史氏フォト

SMBC日興証券株式調査部
シニアアナリスト鳥井裕史氏

各J-REITが環境に配慮した運用を行うことは様々なメリットがあると考える。まず、保有する物件において館内照明器具のLED化、温室効果ガス排出量削減、再生可能エネルギーの活用として屋根等に太陽光発電システムを導入すること、施設の外壁に断熱素材を採用すること等により、水道光熱費等のコスト削減が期待できる。また、このような低コストが期待できる物件に入居したいという企業やESG投資を重視する金融機関等のテナントを誘致することにより、物件の稼働率向上や賃料の上昇も期待できよう。

2015年7月に国土交通省が実施した「環境不動産普及促進検討委員会」でザイマックス不動産総合研究所が発表した資料によると、環境認証を取得している物件はこれを取得していない物件よりも新規成約賃料が4.4%高いというデータが示された。また、同資料によると、大規模築浅物件では環境認証の有無による新規成約賃料への影響は明確に確認されなかった一方、中規模物件では環境認証を取得したオフィスビルは未取得物件に比べて新規成約賃料は9.6%高いとの分析結果が出たと紹介されている。

大規模築浅物件は規模や質等でテナントにとって魅力を感じる要素を備えており、環境認証が加わることによる賃料へのプラス効果には結びつきにくいのだろう。他方、中規模ビルでは性能等で環境認証を持つことでの差別化が働きやすいと言える。今後、質の高い物件の新規開発が続く東京オフィスマーケットにおいては、テナントからの満足度が低く環境への配慮が低い物件は競争力が低下し、これら物件の低パフォーマンスが続くこととなるだろう。

現在は日銀による超金融緩和政策の下でほぼ全てのREITはデット調達に窮していない。ただし、通常の金融市場環境に戻った場合、「DBJ Green Building認証」や「SMBCサスティナブルビルディング認証」等各金融機関から認証を得た物件を組み込んでいた場合の方がこれらレンダーからの信頼は高いと言え、デット調達の面でもポジティブになると考えられる。また、2018年5月に日本リテールファンド(8953、JRF)がJ-REIT市場で初となるグリーンボンドを80億円発行。5年債で利率は0.21%と非常に低利率であった。同投資法人債はグリーン適格資産である「Gビル吉祥寺02」に係る取得資金の一部に充当。大手保険会社や金融機関、学校法人等が同投資法人債への投資を表明した。

このような点からJ-REITが「E:環境」に配慮した運用をすることは持続可能性及び競争力の高いポートフォリオの構築に加え、資金調達の面でも有利に働くと考えられる。

J-REITにとってのS(Social)への取組み

不動産は人々にとって「住む(住宅)」、「働く(オフィス)」、「消費する(商業施設、ホテル)」ことに関してなくてはならない重要な資産である。また、それらを支えるインフラ(物流施設等)も必要不可欠である。人々が快適に過ごすために、不動産はまさに社会にとってなくてはならないものである。

「住み心地」、「働きやすさ」、「消費・レジャーの充実」、それらを支える「物流インフラの構築」という場所を提供することは不動産オーナーであるJ-REITが重要な役割を担うと言えよう。この役割を担い、「テナント満足度の向上」を通じて高水準な稼働率及び対価としての適性賃料を確保することがJ-REITの収益源泉となる。J-REIT市場がさらに拡大し、国内不動産の「最大の買い手」としての存在感のみならず、「最大の保有者」に成長した際はまさに国の根幹を担うこととなるだろう。

また、J-REITは賃料収入を源泉とした利益を原則としてほぼ全額投資家に分配することにより、法人税を実質的に免除された金融商品である。国債等他の国内金融商品に比較して高いインカムゲインを実現している。分配金という形で投資家に分配することも社会に貢献する仕組みと言える。

「重要インフラの構築及び提供」と「投資家に分配金として還元」という役割は各J-REITの社会に対する大きな貢献とともに「法人税免除」と引き換えに社会に対して責任を負っているとも言える。

●図表2:社会を支えるJ-REITの役割

社会を支えるJ-REITの役割

出所: SMBC日興証券

 

J-REITにとってのG(Governance)の重要性

J-REITにとっての「ガバナンス」とは「投資主利益の最大化を目的として運用を行う」という点に尽きるだろう。逆に、ガバナンスが欠如する場合に多く見られる点はスポンサーとの利益相反問題である。REITが物件を取得及び保有できるのは投資主が出資するからに他ならない。スポンサーからの物件パイプラインを活用した資産規模拡大は投資主利益を拡大させるためにあるべきだろう。決してスポンサー保有物件の出口としてREITを活用し、投資主利益を毀損させるものであってはならないことは言うまでもない。

2008年の金融危機から脱した2012~2015年頃について、J-REIT市場では大手・中上位の不動産会社がスポンサーのREIT【アクティビア・プロパティーズ(API)、ヒューリックリート(HLC)等】や外資系大手物流不動産会社がスポンサーのREIT【GLP J-REIT、日本プロロジスリート(NPR)等】の新規上場が続いた。当時のJ-REIT市場はいわば病み上がり状態にあり、従来よりも投資主利益の最大化を意識しなければ資金調達しにくい状況にあった。そこでGLP J-REITやNPRは投資主利益に連動した資産運用報酬体系の導入や効率的なキャッシュマネジメントの一環とした利益超過分配の導入等を実施した。これはグローバルマーケットで培った投資主目線の運用を取り入れたガバナンスの強化に大きく貢献したと言える。

一方、その後の超金融緩和政策での環境下、J-REIT市場で比較的資金調達が容易となった2016年以降は中小不動産会社やファンドが出口を目的としたJ-REITの組成及び新規上場が散見されるようになった。また、これら新規REITの中には利益超過分配をキャッシュマネジメントの効率化を目的としたものではなく、単に見た目の分配金を高く見せるための道具に使われることもあったと考える。投資主利益の最大化ではなくスポンサーの出口としてJ-REITを利用しているようにも見えた。そして投資家はそれを見逃さず、投資口価格は新規上場時の公募価格を下回る状況が散見された。

2018年6月1日、金融庁は「投資家と企業の対話ガイドライン」を公表した。同ガイドラインはJ-REITの運用にとっても非常に参考になる。同ガイドラインを一部抜粋し、J-REITの運用に則して読み替えたい。

「経営環境の変化に対応した経営判断」として、

【1-1(抜粋)】「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するための具体的な経営戦略・経営計画等を策定・公表しているか。また、こうした経営戦略・経営計画等が、経営理念と整合的なものとなっているか」

単にスポンサーの出口としての役割ではなく、REIT自らが理念を持って運用しているかを問いたい。

【1-2(抜粋)】「経営陣は資本コストを的確に把握し、企業価値向上に向けて収益力や資本効率等に関する目標を設定し、資本コストを意識した経営が行われているか」

各REITはインプライド・キャップレートという投資口価格から逆算された資本コストを意識して物件取得を実施しているかということであろう。単に資産規模拡大を優先するのではなく、一口当たり収益性の向上に資する物件売買ができているかが重要であろう。

【1-3(抜粋)】「事業を取り巻く経営環境や事業等のリスクを的確に把握し、新規事業への投資や既存事業からの撤退・売却を含む事業ポートフォリオの組換え等、果断な経営判断が行われているか」

各REITは現状の不動産投資市場や賃貸市場を的確に分析し、外部成長戦略や内部成長戦略を柔軟に対応しているかが重要であろう。単に資産規模拡大を目的とするのではなく、不動産売買市場が過熱しており、将来の物件価格の下落リスクを懸念するのであればポートフォリオの入替や物件売却による売却益の確保も選択肢の一つとして挙げられよう。また、単独での運営では投資主利益の最大化に資することができないのであれば「身売り」ということも重要な選択肢となるだろう。

【2-2(抜粋)】「経営戦略や投資戦略を踏まえ、資本コストを意識した資本の構成や手元資金の活用を含めた財務管理の方針が適切に策定・運用されているか」

インプライド・キャップレート等の資本コストを踏まえ、仮に投資主利益の最大化に資する物件取得機会がなく、かつ必要以上の手元資金があるのであれば自己投資口取得等の柔軟な資本政策を真剣に考えるべきである。

【3-4(抜粋)】「会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続きが確立されているか」

投資主利益の最大化に資する運営ができない資産運用会社のCEOは解任されてしかるべきである。

 

●図表3:金融庁が発表した「投資家と企業の対話ガイドライン」の一部抜粋
(2018年6月1日発表)

1-1 持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するための具体的な経営戦略・経営計画等が策定・公表されているか。また、こうした経営戦略・経営計画等が、経営理念と整合的なものとなっているか。
1-2 経営陣が、自社の事業のリスクなどを適切に反映した資本コストを的確に把握しているか。その上で、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、収益力・資本効率等に関する目標を設定し、資本コストを意識した経営が行われているか。また、こうした目標を設定した理由が分かりやすく説明されているか。中長期的に資本コストに見合うリターンを上げているか。
1-3. 経営戦略・経営計画等の下、事業を取り巻く経営環境や事業等のリスクを的確に把握し、新規事業への投資や既存事業からの撤退・売却を含む事業ポートフォリオの組替えなど、果断な経営判断が行われているか。その際、事業ポートフォリオの見直しについて、その方針が明確に定められ、見直しのプロセスが実効的なものとして機能しているか。
2-2 経営戦略や投資戦略を踏まえ、資本コストを意識した資本の構成や手元資金の活用を含めた財務管理の方針が適切に策定・運用されているか。
3-4 会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続が確立されているか。

出所: 金融庁、SMBC日興証券

 

J-REITにとってのESGのまとめ

J-REITの投資主構成は投信を含めると個人投資家や年金資金が大半である。国民の資産形成にとってJ-REITは重要な投資対象であろう。J-REITにおけるガバナンスの強化は非常に重要である。また、ガバナンスが欠如し投資口価格が低迷すればJ-REIT自身も資金調達ができずに運営に行き詰まり、サスティナビリティ(持続可能性)が保てないことになる。長期にわたってJ-REITが安定的に運営されるためには「ガバナンスの強化」は非常に重要である。

環境に配慮した物件でポートフォリオを組成すれば結果として競争力が高くなり、高稼働率の維持や賃料が持続的に安定もしくは上昇することにつながると期待される。それは分配金の向上をもたらすことにつながり、投資口価格の上昇を通じて円滑な資金調達を実現し、各REITの資産規模拡大を可能にすることにつながるだろう。

また、環境に配慮したポートフォリオのJ-REITが主要な不動産オーナーへと成長すれば、人々が快適な生活を送ることができる都市を長期にわたり実現できるだろう。美しい都市の不動産を有するREITはその資産価値の向上にも寄与しよう。一方、環境に悪い汚い都市に人々は魅力を感じるだろうか?「E」と「S」が充実してこそ不動産市場は持続可能であると言える。そして、「持続可能な社会」があってこそ。その国の経済は機能する。

●図表4:J-REITにとってのESGとその効果

J-REITにとってのESGとその効果

出所: SMBC日興証券

図表5:各J-REITにおけるESGへの取組みに関する開示や認証獲得状況
(あり:○、取得なしor公表なし:-or×)

    直近決算
説明会資料で
ESGへの
取組みを記載
ホームページでESGへの
取組みを記載
GRESBリアルエステイト評価
(2017年)
DBJ Green Building
認証物件
CASBEE
不動産評価
認証取得物件
BELS評価の
取得物件
8951 日本ビルファンド Green Star 4 -
8952 ジャパンリアルエステイト Green Star -
8953 日本リテールファンド Green Star 4
8954 オリックス不動産 Green Star 3
8955 日本プライムリアルティ Green Star 4 -
8956 プレミア Green Star 2
8957 東急リアル・エステート Green Star 3 -
8958 グローバル・ワン不動産 × - - -
8960 ユナイテッド・アーバン Green Star 3
8961 森トラスト総合リート Green Star - -
8963 インヴィンシブル × × - - - -
8964 フロンティア不動産 Green Star 5 - -
8966 平和不動産リート Green Star - -
8967 日本ロジスティクスファンド Green Star -
8968 福岡リート - - -
8972 ケネディクス・オフィス Green Star 5
8975 いちごオフィスリート Green Star 4
8976 大和証券オフィス Green Star 4
8977 阪急リート × × - - -
8979 スターツプロシード × × - - - -
8984 大和ハウスリート Green Star - -
8985 ジャパン・ホテル・リート - - -
8986 日本賃貸住宅 - - -
8987 ジャパン エクセレント Green Star 5 -
3226 日本アコモデーションファンド Green Star 2 - -
3227 MCUBS MidCity Green Star 4
3234 森ヒルズリート Green Star 4 -
3249 産業ファンド Green Star 5
3269 アドバンス・レジデンス Green Star 3 - -
3278 ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト Green Star - -
3279 アクティビア・プロパティーズ Green Star 4
3281 GLP J-REIT Green Star 4
3282 コンフォリア・レジデンシャル × × - - -
3283 日本プロロジスリート Green Star 5
3287 星野リゾート・リート × - - - -
3290 Oneリート - - -
3292 イオンリート Green Star 3 -
3295 ヒューリックリート Green Star 4 - -
3296 日本リート Green Star
3298 インベスコ・オフィス・ジェイリート × - -
3308 日本ヘルスケア × × - - - -
3309 積水ハウス・リート Green Star 3 - -
3451 トーセイ・リート × - - -
3453 ケネディクス商業リート Green Star 3 - -
3455 ヘルスケア&メディカル × × - - - -
3459 サムティ・レジデンシャル - - -
3462 野村不動産マスターファンド Green Star 5 -
3463 いちごホテルリート × × - - - -
3466 ラサールロジポート Green Star 3
3468 スターアジア不動産 × × - - - -
3470 マリモ地方創生リート × × - - - -
3471 三井不動産ロジスティクスパーク - -
3472 大江戸温泉リート × × - - - -
3473 さくら総合リート × × - - - -
3476 みらい × - - - -
3478 森トラスト・ホテルリート × × - - - -
3481 三菱地所物流リート × × - - -
3487 CREロジスティクスファンド - × - -
3488 ザイマックス・リート - × - - - -

注:2018年6月末時点
出所: 会社資料、SMBC日興証券

 

 


 

参考:GRESB及びDBJ Green Building認証の概要

参考として、環境やサスティナビリティへの配慮が充実しているREITや不動産会社を評価するベンチマークとして、GRESB及びDBJ Green Building認証の概要を紹介したい。

GRESB(グローバル不動産サスティナビリティ・ベンチマーク)

GRESBは、不動産会社・ファンドのESG配慮を測る年次評価である。責任投資原則(PRI)を主導した欧州の年金基金グループが中心となり2009年に創設された。欧米・アジアの主要機関投資家が投資先を選定する際に活用している。GRESBは今後各国の環境規制が強化されることやテナントの環境配慮要望が高まることを見据え、不動産投資におけるリスク調整後リターン向上を企図している。

2017年1月現在、GRESBは約55社の投資家メンバーや120社以上の不動産会社・運用機関メンバー等から構成され、各地域の不動産関連協会等のサポートを受けている。日本では日本政策投資銀行(DBJ)が投資家メンバーとして、不動産証券化協会(ARES)と日本サステナブル建築協会(JSBC)がサポーターとして加盟。

GRESBリアルエステイト評価参加者は増加傾向にあり、グローバルでは2017年には850(2016年:759)に、日本では53(2016年:46)となっている。そのうち、J-REITでは合計34社が参加しており、参加率はJ-REIT市場の85%(時価総額ベース、2017年9月6日時点)に達している。

GRESBでは「実行と計測」と「マネジメントと方針」の2軸のスコア(0~100)により結果が表示され、その両軸ともに50以上の好スコアを獲得した参加者には「グリーンスター」の商号が与えられる。2015年に「グリーンスター」が半数を超えたため、2016年からは相対評価の「GRESBレーティング」が導入された。総合スコアでグローバルの上位20%が「5スター」、次の20%が「4スター」などに区分されている。

GRESBで評価される項目は、サスティナビリティに関する委員会等の体制整備や、目標設定、ESG情報開示、ポリシーの有無等から、物件におけるエネルギー・GHG・水・廃棄物のデータ把握状況、省エネ・節水の診断実施、テナントとのグリーンリースの締結状況、自社の従業員への研修や満足度調査の実施等、多岐にわたる。

2017年のアジアにおけるセクター・リーダーとしてJ-REITからは日本プロロジスリート(上場・産業施設(物流倉庫)、積水ハウス・レジデンシャル(住居)(2018年5月1日に積水ハウス・リートに吸収合併されたため上場廃止済み)、アクティビア・プロパティーズ(複合型(オフィス・商業))が選出された。

●図表6:GRESB参加者数の推移

社会を支えるJ-REITの役割

出所: CSRデザイン環境投資顧問、SMBC日興証券

 

●図表7:2017年にGRESBに参加したJ-REIT及びその評価

    GRESBリアルエステイト評価(2017年)
8951 日本ビルファンド Green Star 4
8952 ジャパンリアルエステイト Green Star
8953 日本リテールファンド Green Star 4
8954 オリックス不動産 Green Star 3
8955 日本プライムリアルティ Green Star 4
8956 プレミア Green Star 2
8957 東急リアル・エステート Green Star 3
8960 ユナイテッド・アーバン Green Star 3
8961 森トラスト総合リート Green Star
8964 フロンティア不動産 Green Star 5
8966 平和不動産リート Green Star
8967 日本ロジスティクスファンド Green Star
8972 ケネディクス・オフィス Green Star 5
8975 いちごオフィスリート Green Star 4
8976 大和証券オフィス Green Star 4
8984 大和ハウスリート Green Star
8987 ジャパン エクセレント Green Star 5
3226 日本アコモデーションファンド Green Star 2
3227 MCUBS MidCity Green Star 4
3234 森ヒルズリート Green Star 4
3249 産業ファンド Green Star 5
3269 アドバンス・レジデンス Green Star 3
3278 ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト Green Star
3279 アクティビア・プロパティーズ Green Star 4
3281 GLP J-REIT Green Star 4
3283 日本プロロジスリート Green Star 5
3292 イオンリート Green Star 3
3295 ヒューリックリート Green Star 4
3296 日本リート Green Star
3309 積水ハウス・リート Green Star 3
3453 ケネディクス商業リート Green Star 3
3462 野村不動産マスターファンド Green Star 5
3466 ラサールロジポート Green Star 3

出所: 会社資料、SMBC日興証券

 

DBJ Green Building認証

DBJ Green Building認証とは環境・社会への配慮がなされた不動産を支援するために、2011年4月に日本政策投資銀行(DBJ)が創設した認証制度である。対象物件の環境性能に加えて、防災やコミュニティへの配慮等を含む様々なステークホルダーへの対応を含めた総合的な評価に基づき、社会や経済に求められる不動産を評価・認証し、その取組を支援している。2014年2月より日本不動産研究所(JREI)との業務提携を深化し、共同認証体制を構築することで、同認証の一層の普及と認証制度の不動産価値への反映を進めている。

DBJは同認証の普及を通じて、事業者と投資家・金融機関との対話や協調を進めていくことも目指している。同認証は2011年4月に創設されて以来、日本全国で2018年3月末までに539件の認証実績を有している。これは総延床面積で東京ドーム569個分に相当する。

同認証を獲得するための流れとして、まず日本不動産研究所に秘密保持契約書を提出し、その後スコアリングシートに物件情報を記入・提出する。このスコアリングシートは物件タイプごとに80程度の質問項目がある。提出されたスコアリングシートをもとに日本不動産研究所の職員が物件の実査と物件所有書・管理者等へのインタビューを行う。そして実査担当者を含む複数の職員で認証判定会議が行われ、認証付与に至る。

上記の認証付与をするにあたり、ソフト面・マネジメント面を含めた5つの視点での総合評価がなされる。この5つの視点とは、「Ecology(建物の環境性能)」、「Amenity/Diversity(テナント利用者の快適性・多様性)」、「Risk Management(リスクマネジメント)」、「Community(周辺環境・コミュニティへの配慮)」、「Partnership(ステークホルダーとの協議)である。

この5つ視点から算出されたスコアリングモデルに基づく評価の結果、「環境・社会への配慮」がなされたと認められた物件に対して5段階の認証が付与される。最高評価は「★★★★★(5つ星)」で国内トップクラスの卓越した「環境・社会への配慮」がなされたビルと評価され、「★(1つ星)」は十分な「環境・社会への配慮」がなされたビルとなる。なお、DBJによると、現在の国内不動産市場には「★(1つ星)」に届かない物件が大半を占めている。

 

●図表8:DBJ Green Building認証での5つの視点の総合評価

DBJ Green Building認証での5つの視点の総合評価

出所: 日本政策投資銀行(DBJ)、SMBC日興証券

 

●図表9:DBJ Green Building認証での5段階の認証

DBJ Green Building認証での5段階の認証

出所: 日本政策投資銀行(DBJ)、SMBC日興証券

 

鳥井裕史(とりい ひろし)氏プロフィール
大和総研および大和証券SMBC(現・大和証券)において年金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に従事した後、2006年よりREIT専門のアナリスト業務に従事。2010年10月より現職。InstitutionalInvestor誌の「All-JapanResearchTeam」REIT部門で2012〜2018年に1位を獲得。日経ヴェリタス誌「アナリストランキング」REIT部門で2016年〜2018年に1位を獲得。(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認定マスター

 

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