インフラファンド

第5回 森・濱田松本法律事務所解説 上場インフラファンドの投資リスク

 比較的安定した利回りを提供する金融商品として注目を浴びるインフラファンドですが、投資に当たっては、そうした安定した分配金を支える仕組みやそのリスクについても十分に理解しておく必要があります。
 今回の特集では、これまで多くのインフラファンドの組成・運営・取引に携わってきた森・濱田松本法律事務所の先生方に、上場インフラファンドの投資リスクについてご解説いただきます。

森・濱田松本法律事務所
弁護士 佐藤 正謙氏
弁護士 尾本 太郎氏
弁護士 岡谷 茂樹氏
弁護士 佐伯 優仁氏

 

上場インフラファンドの投資リスク

 

1はじめに

 2015年4月に東証インフラファンド市場が開設され、2016年6月に1号案件が上場しました。2022年8月末日現在、6銘柄のインフラファンドが上場しています。いずれも太陽光発電設備を中心とする再生可能エネルギー発電設備に投資を行うファンドです。

 上場インフラファンドは、J-REIT同様、投資法人という器を用いる上場投資商品です。再生可能エネルギー発電設備に投資を行う上場インフラファンドは、投資口(株式会社の株式に相当します。)の発行を通じて投資家から調達した資金及び借入金等を用いて再生可能エネルギー発電設備を取得した上で、これを発電事業を行う賃借人に賃貸することで賃料という形で収益を得ます。そして、この収益から借入金の利息や減価償却費、運用報酬等の費用を控除した利益のほぼ全額を投資家に分配するという仕組みによっており、基本的な投資スキームはJ-REITと共通しています。このような仕組み上の共通性からJ-REITと比べられることが多い金融商品ですが、他方で、不動産に投資するJ-REITには見られない特有の投資リスクも存在します。本稿では、このような上場インフラファンドに特有の投資リスクのうち特に留意すべきと考えられる事項について解説します。

 なお、本稿の内容は、2022年8月末日現在の法令・諸規則等に基づくものであり、その後の法令・諸規則等の改正により変更される可能性があることにご留意ください。また、個別の上場インフラファンドへの投資に際しては、各インフラファンドの開示資料等を確認の上、自己責任で行っていただくようお願いいたします。

 

2再生可能エネルギーに関連する制度

 気候変動問題への対応や我が国のエネルギー自給率の向上のため、国は再生可能エネルギーの導入を促進するための様々な制度を用意しています。とりわけ後述する固定価格買取制度(Feed in Tariff = FIT制度)及びFIP制度(Feed-in Premium制度)は、再生可能エネルギー発電設備を用いて発電を行う事業者の収入を支える制度であり、賃借人である発電事業者の収入を賃料収入の源泉としている上場インフラファンドにとっても、その収益を支える重要な制度となっています。また、再生可能エネルギーの導入促進等を目的とする国の補助金を活用して建設される再生可能エネルギー発電設備も増加しつつあります。

これらの制度は、それぞれの適用により享受できる補助・支援の特性や内容が異なります。これらの制度を利用して建設・運営される発電事業は、当該制度を利用するための要件を充足し、当該制度に定められる規制やガイドラインを遵守する必要があるため、実施に当たりそれらの制限を受けます。したがって、上場インフラファンドへの投資に際しては、当該インフラファンドが投資を行う再生可能エネルギー発電設備に適用される制度の内容やそれに内在するリスクを把握しておく必要があります。そして、FIT制度の適用を受けない場合(FIP制度の適用を受ける場合を含みます。)は、電気や環境価値の売却の方法及び条件は様々なものがあるため、当該方法及び条件を把握しておく必要があります。

 また、発電事業を行うに当たっては、FIT制度又はFIP制度の適用を受けるか否かにかかわらず、電気事業法その他の電気事業又は再生可能エネルギー発電設備の保安、維持管理及び廃棄等に関連する法令、電力広域的運営推進機関や一般送配電事業者が定める規程や約款等に定められる電力系統の接続・利用ルール等に関するルールに従う必要があります。

 上記のような制度やルールは、国の政策、国際情勢、市場動向等を受けて変更又は廃止される可能性があり、かかる変更又は廃止は、発電事業の収益性や事業継続性に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、FIT制度やFIP制度については、これらが変更又は廃止されたとしても、基本的には、その時点で発電事業計画の認定を受け運転を開始している再生可能エネルギー発電設備に対しては影響が及ばないように所要の手当てがなされるものと想定されます。しかし、当該制度の変更又は廃止の結果、それ以降に新規に開発・建設される再生可能エネルギー発電設備の数が減少する可能性があります。また、再生可能エネルギー発電設備が新規に開発・建設される場合でも、当該再生可能エネルギー発電設備の採算性が低下するなどして投資に適さないものとなる可能性があります。結果として、上場インフラファンドによる新規の再生可能エネルギー発電設備の取得に支障をきたす可能性があることに留意が必要です。

 また、上記想定に反し、既に運転を開始している再生可能エネルギー発電設備に影響を与える形でFIT制度やFIP制度が変更又は廃止されることとなった場合、賃借人である発電事業者が発電事業を継続できなくなる可能性や、従前と同様の条件で電力会社から売電収入を得ることができなくなる可能性があります。これらの事情が現実に生じた場合、上場インフラファンドが既に保有するポートフォリオにおいて、売電収入に連動する形で定められている賃料額が減少したり、連動しない形で定められている賃料についても、その支払原資が不足することにより賃料の支払が滞る可能性があります。そのため、上場インフラファンドの賃料収入が減少し、最終的には、上場インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があります。

 

3固定価格買取制度(FIT制度)

(1)上場インフラファンドの収益を支えるFIT制度

 J-REITにはない、上場インフラファンドの特徴として、賃料収入の源泉である、再生可能エネルギー発電設備の賃借人の売電収入の大部分がFIT制度という法律上の制度に支えられているという点が挙げられます。

 FIT制度は、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年8月30日法律第108号。その後の改正を含みます。)(以下「再エネ特措法」といいます。)に基づき、発電事業計画について経済産業省の認定を受けた再生可能エネルギー発電設備を用いて発電された電気について、固定の調達価格で、固定の調達期間にわたり買い取ることを、電力会社に義務付ける制度です。電力会社による電気の買取費用の一部は電気の利用者から賦課金という形で集められているため、電気の利用者が再生可能エネルギー発電の導入についての最終的なコスト負担者となります。

 上場インフラファンドが保有する再生可能エネルギー発電設備は、基本的に、FIT制度に基づく認定を受けた設備であるため、上場インフラファンドから再生可能エネルギー発電設備を賃借して発電事業を行う賃借人は、電力会社から安定的かつ継続的に売電収入を得ることができ、その結果、上場インフラファンドはかかる売電収入を背景として安定的かつ継続的な賃料収入を得ることができることになります。

(2)FIT制度に内在するリスク
FIT制度には以下のようなリスクが内在しており留意が必要です。

① 固定の調達価格・調達期間

 FIT制度の認定を受けて運転を開始した再生可能エネルギー発電設備については、運転開始時に適用された調達価格及び調達期間は、原則として事後的に変更されることはないため、上場インフラファンドは、同制度が適用される再生可能エネルギー発電設備に投資することで、安定的かつ継続的な収益を見込むことができます。

 また、再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した電気の調達価格及び調達期間は、原則として、毎年度、経済産業大臣が調達価格等算定委員会の意見を聴いた上で定めるものとされています(なお、発電設備の種類・規模によっては、入札により調達価格が定められる場合があり、その対象が年々拡大する傾向にあります。)。技術革新や市場競争による建設コストの低下を反映して、調達価格又は入札価格の上限は年々引き下げられており、今後、更に引き下げられる可能性があります。将来のFIT制度の運用において、調達価格若しくは入札価格の上限が低く設定された場合、又は調達期間が短く設定された場合、新規に建設される再生可能エネルギー発電設備の数が減少する可能性や、新規に開発・建設される再生可能エネルギー発電設備の採算性が低下するなどして投資に適さないものとなる可能性があり、その結果、上場インフラファンドによる新規の再生可能エネルギー発電設備の取得に支障をきたす可能性があることに留意が必要です。

② インフレに対する脆弱性

 FIT制度に基づく調達価格は固定されているため、インフレにより物価が上昇した場合でも、売電価格を増額することができず、発電事業者である賃借人の売電収入が実質的に目減りする可能性があります。その影響は、売電収入を原資とする上場インフラファンドの賃料収入にそのまま及び、後者の実質的な目減りを招く可能性があります。また、インフレによる物価の上昇に伴い、再生可能エネルギー発電設備の管理・運営に関する費用等が増加する可能性もあります。これらの場合、上場インフラファンドの収益が悪化し、その結果、上場インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

③ 出力制御

 昨今、上場インフラファンドの投資する太陽光発電設備において、出力制御が実施される事例が見られるようになってきました。出力制御とは、電気の需要と供給のバランスを確保するため、電力会社が太陽光発電設備について出力の抑制を要請し、出力量を制御する仕組みです。電力会社における電気の供給量がその需要量を上回ることが見込まれる場合等、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(平成24年経済産業省令第46号。その後の改正を含みます。)に定められる一定の事由に該当する場合に出力制御が求められます。かかる出力制御が実施される場合、発電事業者である賃借人の売電収入が減少する可能性があり、その結果、これを原資とする上場インフラファンドの賃料収入が減少し、上場インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

④ 調達期間満了後の売電

 IT制度に基づく調達期間が満了すると、再生可能エネルギー発電設備はFIT制度の適用対象外となるため、電力会社は、それ以降当該再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した電気を一定の価格で買い取る義務を負いません。したがって、調達期間が満了した再生可能エネルギー発電設備で発電事業を継続するためには、電力会社と交渉して価格や条件を合意した上で売電を継続するか、卸電力取引市場で売電するか、又は自ら売電の相手方を探して売電する必要があります。このような場合、適切な売電先が見つからない可能性があることはもとより、売電先が見つかった場合又は市場で売電する場合であっても、FIT制度に基づく従前の買取価格や条件に比して不利な買取価格や条件で売電することを強いられ、発電事業者である賃借人の売電収入が減少する可能性があり、その結果、これを原資とする上場インフラファンドの賃料収入が減少し、上場インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

(3)FIT制度に関する動向

 後述するFIP制度の導入以降、一定の電源種別・規模の再生可能エネルギー発電設備については、新規認定でFIP制度のみを認める対象とし、前述のとおり発電事業者にとって有利な条件での売電を可能としていたFIT制度の適用を受けられないものとされ、その対象は年々拡大する傾向にあります。

 これらにより、今後、新たに設置される太陽光発電設備及び風力発電設備が減少し、又は建設されても投資に適さず、上場インフラファンドが希望どおりに太陽光発電設備及び風力発電設備を取得できなくなる可能性はあります。

 

4FIP制度

(1)FIP制度

 2022年4月1日に強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(令和2年法律第49号。その後の改正を含みます。)が施行され、競争力ある電源への成長が見込まれる再エネ電源(競争電源)を対象として、他の電源と同様に市場等で取引する仕組みを導入するとともに、市場価格に一定のプレミアムを上乗せして交付する制度(Feed in Premium = FIP制度)が創設されました。FIP制度は、発電した電気を卸電力取引市場や相対取引で取引させつつ、基準価格(FIP価格)(固定)と市場価格に基づく価格(参照価格)の差額(プレミアム。同改正後の再エネ特措法では、「供給促進交付金」と定義されています。)を上乗せして交付する制度です。

(2)FIP制度に内在するリスク

 FIP制度の適用を受ける場合には、以下のようなリスクが内在しており留意が必要です。なお、FIP制度の適用を受ける場合も、前記3.(2)③の記載と同様に出力制御のリスクがあります。

① 売電方法と売電先への依存

 FIP制度の下では、FIT制度の下でのように買取義務を負う者はなく、発電事業者は、卸電力取引市場を通じて売電するか、又は自ら売電の相手方を探して売電する必要があります。なお、発電事業者が卸電力取引市場に参加するためには、純資産額その他の一定の要件を満たす必要があります。この点は、特に、電気事業者の財務状況が悪化したり、電気事業者について倒産手続等が開始されたりした場合や、売電契約が解除、解約その他の理由により終了した場合に問題となります。これらの場合、新たな売電先が見つからず、かつ、卸電力取引市場を通じて売電できず、当該電気を売却できない可能性があり、仮に売却できたとしても、売電の価格その他の条件は従前の条件より劣後する可能性があります。なお、FIP制度の適用を受ける1,000kW未満の電源の場合、売電先の破産等その他認定事業者の責めに帰することができない事情により再生可能エネルギー電気の供給に支障が生じた場合、認定事業者は、一時調達契約を締結し、一般送配電事業者に売電できるものとされています。但し、一時調達契約に基づく売電については、買取価格はFIP制度における基準価格の80%とされ、利用可能な期間は連続最長12か月とされています。

 そして、FIP制度の下では、売電の方法及び条件によっては、短期的な市場価格の変動により売電収入が変動する他、発電事業者は、自ら発電の計画量を一般送配電事業者に通知し、当該計画量と実際の発電量の差分について一般送配電事業者との間でインバランス料金による精算を要します。

 このように、FIP制度の下で発電事業を実施する場合、FIT制度の下では生じない手間、コスト及びリスクを発電事業者が負うことがあります。

② 基準価格と入札の動向

 前記3.(2)①に記載のとおり、FIT制度の調達価格は年々引き下げられており、今後、更に引き下げられる可能性がありますが、FIP制度における供給促進交付金(プレミアム)の算定の基となる基準価格又はその入札価格の上限も、FIT制度の調達価格と同様に、今後、引き下げられていくことが予想されます。さらに、基準価格を入札により決定する対象は拡大する傾向にあります。その結果、事業者により新たに設置される再生可能エネルギー発電設備が、投資採算等の観点から減少する可能性があります。

③ 環境価値の処分による収入との連動

 FIP制度の適用を受ける場合、発電事業者は非化石価値証書の売却その他環境価値の処分による収入を得ることができますが、再生可能エネルギー発電設備の賃料がかかる収入と連動したものである場合、本投資法人は、発電設備の稼働状況や非化石価値証書等の価格変動による賃料収入の影響を受けます。

 

5コーポレートPPA

(1)コーポレートPPA

 需要家である企業が再生可能エネルギーで発電された電気を調達するニーズの高まりを受け、特定の需要家への電気や環境価値の売却を目的とする取引(いわゆるコーポレートPPA)を行うことを前提として建設・運営される再生可能エネルギー発電設備が増加しています。なお、コーポレートPPAのうち、需要場所から離れた場所で発電を行い、電力系統を介して電気を供給するオフサイトPPAの場合、電気事業法の規制の関係で、原則として小売電気事業者を介して売電を行う必要があります。また、コーポレートPPAのうち、小売電気事業者又は卸電力取引市場を介して売電する場合は、FIP制度の適用を受けるものもあります。

(2)コーポレートPPAに内在するリスク
コーポレートPPAには以下のようなリスクが内在しており留意が必要です。

① 売電方法と売電先への依存

 コーポレートPPAによる売電を行う事業においては、FIP制度の適用を受けるか否かにかかわらず、FIT制度の下でのように買取義務を負う者はいないことから、そのことに伴う前述のリスク(前記「4. FIP制度」参照)が存在します。また、コーポレートPPAの主要条件は需要家との間で合意されており、電気の引取りや売電等の対価の支払いも需要家の経営状況や資力等に依拠していることが多いことや、コーポレートPPAの契約期間はFIT制度の調達期間やFIP制度の交付期間より短い場合が多いことから、需要家の経営状況や資力等が悪化したり、需要家について倒産手続等が開始されたりした場合や、需要家との契約が解除、解約、期間満了その他の理由により終了した場合に、新たな取引相手を探す必要が生じることがあります。これらの場合、新たな取引相手が見つからず、かつ、卸電力取引市場を通じて売電できず、電気や環境価値を売却できない可能性があり、仮に売却できたとしても、取引の価格その他の条件は従前の条件より劣後する可能性があります。

② 規制やルールの整備の動向

 コーポレートPPAは、我が国では最近になって広がった取引であるため、これに関する電気事業法その他の法令による規制、電力系統の接続・利用ルール、いわゆるバーチャルPPAの一環として関係者間で差金決済を行う場合に適用されうるデリバティブ取引規制、需要家による非化石価値の直接取得に関連するルールその他の規制やルールが整備途上にあり、今後の取引はその動向に影響を受ける可能性があります。

 

6資産特性

(1)償却資産としての特性

 既存の上場インフラファンドは、再生可能エネルギー発電設備の中でも太陽光発電設備を主な投資対象としていますが、太陽光発電設備を始めとする再生可能エネルギー発電設備はJ-REITの投資対象である建物とは異なる資産特性を有しています。

 まず、多くの再生可能エネルギー発電設備は地方に所在しているため、再生可能エネルギー発電設備及び敷地の取得価格において、土地の価格が占める割合が相対的に低い一方で、再生可能エネルギー発電設備の価格が占める割合が相対的に高く、その結果、上場インフラファンドの総資産に占める償却資産の比率が高い傾向にあります。また、再生可能エネルギー発電設備の法定耐用年数は15年~20年程度であり、建物(例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の事務所棟の用途を有する建物の法定耐用年数は50年とされています。)と比較して短い年数が設定されています。そのため、上場インフラファンドにおいては、J-REITと比較して相対的に多額の減価償却費が計上される傾向にあります。減価償却費は支出を伴わない費用であるため、上場インフラファンドの手元にはその分現金が残ることとなります。かかる状況が継続すると、再生可能エネルギー発電設備の帳簿価格が減価償却の進行により減少する一方で、現金が増加するため、上場廃止基準のうち資産組入比率の基準(「運用資産等の総額に占めるインフラ資産等の額の比率が、上場インフラファンドに係る毎営業期間の末日において70%未満となった場合において、1年以内に70%以上とならないとき」)に抵触する可能性が生じることに留意が必要です。かかる事態を避けるためには、新規資産を追加取得することにより資産組入比率を維持する必要があります。

 また、上記のとおり、上場インフラファンドにおいては、減価償却費の計上に伴い手元資金が増加する傾向があります。かかる手元資金を用いた取組みとして、保有資産の修繕・増設や新規資産の追加取得といった再投資や借入金の返済が考えられるほか、投資家への還元策として、減価償却費に相当する資金の一部を、利益を超えた金銭の分配(以下「利益超過分配」といいます。)として投資家に分配することが考えられます。株式会社における剰余金の配当と異なり、投資法人においては利益超過分配が認められており、実際に、多くの上場インフラファンドにおいて利益超過分配が継続的に行われていますが、利益超過分配は出資の払戻しとしての性質を有します。

 かかる出資の払戻しの性質を持つ利益超過分配が継続的に実施された場合、上場インフラファンドの資産総額(現金)及び純資産総額(出資総額)が減少することとなり、上場廃止基準(「資産総額が、上場インフラファンドに係る毎営業期間の末日において25億円未満となった場合において、1年以内に25億円以上とならないとき」、「純資産総額が、上場インフラファンドに係る毎営業期間の末日において5億円未満となった場合において、1年以内に5億円以上とならないとき」)に抵触する可能性が生じることに留意が必要です。 更に、上場インフラファンドが多額の減価償却費を用いて利益超過分配を実施する結果、上場インフラファンドの分配金に占める利益超過分配の割合が高くなる場合があることにも留意が必要です。その場合、手元に分配される金額が多額であっても、会計上は、利益の分配の額自体は少額であり、実際上は多額の出資の払戻しが行われていることになります。したがって、投資採算を検討する際には、単なる分配金利回りのみならず、利益の分配額及び利益超過分配額の内訳を適切に把握することが必要となります。

(2)オペレーショナル・アセット

 上場インフラファンドの取得する再生可能エネルギー発電設備は、オペレーターが当該設備を管理・運営することにより収益が生じるという、いわゆるオペレーショナル・アセットとしての特性を有しています。すなわち、再生可能エネルギー発電設備の収益性は、オペレーターの管理・運営能力による影響を受け得ます。したがって、上場インフラファンドのスキーム上、オペレーターの役割が重要となります(オペレーターは、賃借人が兼任する場合と、SPCが賃借人となり、SPCがオペレーターに別途資産の管理・運営を委託する場合があります。)。かかる点を踏まえ、東京証券取引所の諸規則等においてオペレーターの選定や情報開示についてのルールが定められており、インフラファンドの上場に当たっては、オペレーターの選定基本方針や選定基準の策定や実際の選定状況について審査され、また、オペレーターに関する一定の事実が適時開示事由とされています。

 オペレーターについて財務状況の悪化や倒産手続の開始等の事由が生じた場合、再生可能エネルギー発電設備の管理・運営に支障が生じる可能性があります。その場合、オペレーターの交代に踏み切る必要を生じ得ますが、オペレーターとしての業務には専門的な知識・経験が求められることから、十分な知識・経験を有するオペレーターを適切なタイミングで選任することができない可能性があります。その結果、売電収入や賃料収入が減少し、上場インフラファンドやその投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

(3)再生可能エネルギー発電設備の特性

 本稿における他の箇所における記載は、いずれも再生可能エネルギー発電設備に共通の資産特性ですが、本項では、以下の①から⑤のとおり、各電源特有の主な資産特性について記載します。既存の上場インフラファンドが主な投資対象とする太陽光発電設備及び今後投資対象となる可能性が高い風力発電設備を中心に記載し、水力発電設備、地熱発電設備及びバイオマス発電設備についても触れることとします。

 なお、一般論として、太陽光発電設備以外の再生可能エネルギー発電設備に関する特有のリスクとしては、発電事業者の数が少なく、立地上の制約があり、取引市場が未成熟であること等から、太陽光発電設備に比してさらに流動性が低く、上場インフラファンドが希望した価格、時期その他の条件で取得及び売却ができないリスクや、太陽光発電設備に比して技術的に維持管理・運営が難しいため、当該種類の再生可能エネルギー発電設備の維持管理・運営を行う業者が少なく、上場インフラファンドの希望する条件で、十分な能力と専門性を有するオペレーター又はO&M業者が選任できないリスクがあります。

① 太陽光発電設備

太陽光発電設備は発電量が日射量によって変動しますが、周辺に新しい建物等が建築されたり、周辺の植物の成長等により事後的に太陽光発電設備への日照が制限されたりすることにより、太陽電池モジュールへの日射が遮られる状態になる等、太陽光発電設備の周辺環境が上場インフラファンドの支配できない事由により悪化する可能性があります。また、天候不順が続いた場合や積雪等により太陽電池モジュールへの日射が遮られる状態となる可能性もあります。また、強風又は落雷等により太陽電池モジュールの破損等が生じるリスクがあります。

 太陽光発電設備の劣化等に備えて、EPC業者又はメーカーに対して、表明保証責任、瑕疵担保責任若しくは契約不適合責任、性能保証、稼働率保証又はメーカー保証の履行を求める権利を有する場合がありますが、権利行使期間又は通知期間の満了、EPC業者又はメーカーが解散したり無資力になっていること、その他の理由により実効性がない場合もあります。

 上記の他、太陽光発電設備に関しては、土地の造成、太陽光パネルの反射光、景観上の問題等により近隣住民との紛争が生じるリスク等があります。

② 風力発電設備

 風況により発電量が変動するリスクがあります。また、暴風、落雷等により風車の破損等が生じるリスクがあります。

 風車の修理・交換には、技術・手間を要し、技術者の派遣や交換部品の調達に時間を要することがあります。また、故障、破損等により一又は複数の風車を停止しなければならない場合、その間、発電事業者の売電収入が大きく減少する可能性があります。そして、風力発電設備の復旧に要する時間は、修理を担う風車メーカーやO&M業者の能力・技術や国内における人員体制及び交換用部品の保管状況によって左右されます。また、風車メーカー又はO&M業者が十分な能力、体制等を備えていたとしても、それらが将来にわたって維持される保証はなく、O&M業者が、財務状況の悪化や倒産手続等により履行能力を喪失する可能性があります。さらに、風力発電設備の修理に一定の能力、体制等を有する業者は少ないため、風車メーカー又はO&M業者が履行能力を喪失した場合に、本投資法人の希望する条件で、十分な能力、体制等を有する代替のO&M業者を選任できないリスクがあります。

 また、風車メーカー又はO&M業者が一定の期間において一定の性能(パワーカーブ)や稼働率を保証する場合がありますが、保証期間の終了、当該風車メーカー又はO&M業者の財務状況の悪化や倒産手続等により、かかる保証が受けられなくなる可能性があります。

 上記の他、風力発電設備に関しては、風車による騒音、電波障害、景観の変化、部品等の脱落・飛散等により近隣住民との紛争が生じるリスク等があります。

③ 水力発電設備

 水力発電設備に特有のリスクとしては、水量の変化による発電量の変動等のリスクや、洪水によるダム・堰の決壊等により発電ができなくなるリスク等があります。

④ 地熱発電設備

 地熱発電設備に特有のリスクとしては、温泉の利用に関する権利に関する法制度が未整備であること等から当該権利を調達期間にわたり確実に確保することができないリスクや、温泉の継続的な利用や近隣の土地における温泉の利用により温泉が枯渇し又は湧出量が減少するリスク等があります。

⑤ バイオマス発電設備

 バイオマス発電設備に特有のリスクとしては、十分な燃料が安定的に調達できないリスク及び輸入バイオマス燃料を利用する場合における為替変動リスクや、無制限に無補償の出力抑制が行われるリスク等があります。

 

7税務上の導管性

(1)20年の限定期間

 J-REITにおいては、一定の要件(以下「導管性要件」といいます。)を満たす場合、税務上、配当等の額を損金に算入し、投資法人の法人税を実質的に非課税とする取扱いが認められており(いわゆるペイスルー課税)、上場インフラファンドにおいても同様の税務上の取扱いが認められています。かかるペイスルー課税により、投資法人に対する課税と投資家に対する課税が重複する二重課税を回避することが可能となります。

 しかし、J-REITと異なり、上場インフラファンドの導管性は、現在の制度上、再生可能エネルギー発電設備を賃貸した場合に限り、かつ、上場後約20年に限り認められていることに留意が必要です。すなわち、再生可能エネルギー発電設備に投資する上場インフラファンドの場合、導管性要件を満たすために一定の特例を受ける必要がありますが、かかる特例の適用は、再生可能エネルギー発電設備を最初に取得した日から、再生可能エネルギー発電設備の貸付けを最初に行った日以後20年を経過した日までの間に終了する各事業年度に限るものとされています。現行制度上、上場インフラファンドは約20年に限り導管性を有するにとどまり、恒久的な導管性を有していないこととなっています。したがって、かかる特例の適用期間の経過後は、上場インフラファンドが導管性要件を満たさない場合が生じることが予想され、その場合、上場インフラファンドの税負担額が増大し、ひいては投資家の利益に悪影響が生じる可能性があることに留意が必要です。

(2)賃貸スキームの強制

 上場インフラファンドが上記特例の適用を受けるためには、上場インフラファンドが直接又は匿名組合出資を通じて投資する再生可能エネルギー発電設備の運用方法を賃貸に限定する必要があるという制約があるため、上場インフラファンドの投資方法が一定程度限定されることに留意が必要です。

 例えば、私募ファンド等において開発・建設された再生可能エネルギー発電設備について、当該設備を保有・運用する資産保有SPCに対する匿名組合出資持分を上場インフラファンドに組み入れるケースを考えてみましょう(いわゆる間接投資の事例)。

 まず、上記制約の下では、資産保有SPCは再生可能エネルギー発電設備を第三者に賃貸しなくてはならず、既存のスキームを変更する必要があります。すなわち、当該第三者が爾後、売電事業を営むことになりますが、そのためには、資産保有SPCのレンダー(プロジェクトファイナンスが組まれていることが通常です)の承諾はもちろんのこと、同設備に係る認定及び売電事業に関わる各種契約上の地位の承継が必要となり、その手続には負担が伴います。また、投資法人は、導管性要件として、他の法人の発行済株式又は出資(匿名組合出資を含みます。)の総数又は総額の50%以上を有していないことが求められており、かかる観点からも上場インフラファンドによる匿名組合出資持分の譲受スキームには制約が伴うことになります。

 このように、上場インフラファンドが導管性要件を満たすために賃貸スキームを強制される結果、再生可能エネルギー発電設備の円滑かつ機動的な取得が妨げられる場合があり得ることに留意が必要です。

 

8おわりに

 再生可能エネルギー発電設備に投資する上場インフラファンドには、FIT制度やFIP制度等の再生可能エネルギーに関連する制度が関係する等、これまでに述べたようなJ-REITとは異なるリスクがあります。上場インフラファンドに投資をする際には、かかる上場インフラファンド特有のリスクを把握した上で、投資判断を行うことが大切です。本稿が、かかる上場インフラファンドに対する投資リスクに対する理解を深める一助となれば幸いです。

 

 

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