第5回

アイビー総研・関大介氏に聞く
コロナ禍においても魅力的なインフラファンド投資の着目点

再生可能エネルギーをはじめとした様々なインフラ資産への投資が可能なインフラファンド。上場7銘柄はすべて太陽光発電を保有しており、時価総額1,300億円超(2021年1月末現在)と規模はまだまだ小さいながら、市場拡大へ期待が寄せられている。昨今の投資環境や今後の展望を踏まえた銘柄選びの注意ポイントについて、Jリート/インフラファンドの動向に詳しいアイビー総研の関大介氏に解説していただいた。

 

ここ1年の投資環境はどのアセットクラスでも大きな動きがあったわけですが、インフラファンド市場に関してはどのように見ていますか。

大村 恒平氏フォト

アイビー総研代表
関 大介氏

日経平均株価は2020年3月のコロナショックで、一時16,358円という3年4か月ぶりの安値をつけました。東証REIT指数も、2019年末比でマイナス46.2%と大幅に下落しましたが、同時期のTOPIXはマイナス28%程度なので、株式に比べてリートの下落幅が大きかったと言えるでしょう。

一方のインフラファンド。東証インフラファンド指数の算出・公表は2020月4月からでしたが、2019年末時点での上場6銘柄のうち最も下落した銘柄でも20%程度と、下落幅は株式やJリートと比べて限定的で、これは最大の安心感に繋がる動きだったのではないでしょうか。インフラファンドは収益の原資が太陽光による発電という、景気とは関連しないというメリットが出たとも言えそうです。

東証インフラファンド指数は2020年秋に一時やや上昇しましたが、その後は投資家のリスクオンが進むも横ばい状態といえます。インフラファンドは分配金に期待して投資することが一般的なので、価格が上昇し切ると利回りが低くなってしまいますが、現在の利回りは5%後半から6%半ばと、依然として比較的高い水準にあります。株式もJリートも高値警戒感がつきまとうなかで、インフラファンドは価格が大幅に上昇していないという点でちょっと違うかもしれません。投資市場として相対的に見て、十分に投資妙味はあると考えており、これから新たに投資を始めたい方にとっても追い風なのではないでしょうか。

―インフラファンドを投資対象にする公募投信の新規設定があったり、政府による再生可能エネルギー推進の積極化など、ポジティブと思われるニュースがありました。

公募投信が設定されたことは、少ない金額で投資できたり、長期的に時間を分散して投資ができるなど、投資家の選択肢が広がるという意味でメリットでしょう。しかし、信託報酬の負担があるなどの投信ならではのデメリットがあることも覚えておきたいですね。なお、一部の銘柄では、6万円程度から購入できるインフラファンドもありますし、ほとんどの銘柄も10万円程度から購入可能ですので、個別銘柄への投資も比較的手の届く金額で可能です。

菅義偉首相が2020年10月に、2050年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言したことは、インフラファンド市場にとってプラス要因だったことは間違いないでしょう。インフラファンドといいながらも、現状はすべての銘柄が太陽光発電のみに投資しています。今後の施策によっては、風力などを含めて投資先の多様化が進む可能性が高まってきました。今後の規制緩和に期待しつつ、市場拡大の追い風のひとつといえます。

―総じてポジティブな環境といえるなかで、現状のインフラファンド市場で特筆すべき動きはありますか。

規模拡大を目指す銘柄と、現状の資産規模でFIT(固定価格買取制度)による高い売電価格を維持していく銘柄に、くっきり分かれてきたことです。価格や利回り面ではない、インフラファンドの2極化が進んでいます。

規模拡大の最大のメリットは地域・発電施設などの分散効果が高まること。さらに、新しい発電施設がポートフォリオに加わることです。これは一見、ポートフォリオ全体としての売電価格が低くなるデメリットに見えますが、20年間の買取期間が長くなるという側面もあります。投資家にとっては、売電価格が低くなっても同じレベルの分配金が長期安定的に期待できるのであればデメリットはありません。

一方で現状維持のメリットは、インフラファンドがこれから買うであろう発電施設の多くは売電価格が比較的低い施設が入ってくる可能性が高いこと。「比較的高い売電価格による安定収益だからインフラファンドを買った」という投資家もいるはずです。そう考える投資家にとって、売電価格の低い発電施設が入ってくる可能性が小さいことはメリットといえるでしょう。

拡大志向か現状維持志向かを見分けるのは、そう難しくありません。決算説明会資料をおおよそ1年分(ほとんどのインフラファンドは半年決算なので2期分)見ていただき、増資しているかどうかを確認します。増資している場合は、資料のなかで必ずアピールしていますから、比較的分かりやすいのではないかと思います。増資していれば拡大志向と言えるのではないでしょうか。また、どこかのタイミングで現状維持志向から拡大志向に変わる可能性もあるので、そのチェックという意味でも増資のあるなしは確認したいところです。

ここで注意ポイントがあります。増資すると口数が増えるので需給面でマイナス効果が生まれ、一時的に価格が弱含む傾向があります。また、インフラファンド市場の規模がまだまだ小さいので、拡大志向の他銘柄の増資の影響を受けて、増資をしていない銘柄の価格が弱含むこともあります。各銘柄は増資で価格が下がっても分配金に影響が出ないように運営しているはずなので、増資で価格が下落しても分配金に動きがない限りは、あわてて狼狽売りしないようにしましょう。増資した資金で大規模な発電施設を購入することは分散効果を高め、中期的には価格は戻る——このような基本シナリオを把握しておくと安心して投資できるはずです。

―インフラファンドの銘柄選びや投資基準において、チェックすべきポイントはあるのでしょうか。

大きく3点挙げたいと思います。1点目は、発電施設の地域分散を考えること。その理由のひとつは天候不順への対応です。インフラファンドがもつ発電施設のある地域を分散すれば、天候不順の日照不足による発電量低下=収益の下落リスクをある程度コントロールできます。天候不順は10年単位で見れば平準化するので長期的な統計値をもって収益の見通しは可能です。しかし、短期的には天候不順は収益に影響を及ぼす可能性もありますし、現実的に10年間不安なしで投資し続けることは難しいのではないでしょうか。

もうひとつの理由は、電力会社の分散につながるからです。太陽光発電には電力会社の出力制御(発電量が消費量を上回ることが見込まれる場合に発電量を制御する仕組みで、火力発電の制御、蓄電池の充電や地域間連係線の活用等を経てもなお解消しない場合に、太陽光発電から電気を買わない制度)というリスクが存在します。電力会社の都合で出力制御され、発電施設の売電量が減ることが実際にあります。

地域分散は天候不順と電力会社の制度への対応策として、インフラファンドを安心して長期で保有するための欠かせないファクターです。

2点目が、インフラファンドの借入金のなかで固定金利の割合が大きいか変動金利が大きいかという点です。インフラファンドはFITによって売電価格が決まっており、収益のアップサイドは基本的に少ない商品で、分配金増加のためにはコスト削減によるところが大きいわけです。そのひとつが借入金の金利で、長期固定金利か変動金利かということになります。安心して長く投資したいと考えるなら、長期で固定化しているファンドを選びたいところです。これも増資と同様に決算説明会資料に記載してあり、長期固定化しているインフラファンドはアピールしています(アピールしていなければ変動金利が多い)。

実際のところ、変動金利の割合が高いインフラファンドは少なく、全体として長期固定金利化を進めています。しかし「超低金利下だから、直近の変動金利による低い資金調達コストを評価したい」と考える投資家もいるでしょう。私自身は、インフラファンドはそこまでリスクを取る商品ではないと捉えているので、長期の固定金利比率の高い銘柄の方が投資価値はあると考えています。

―発電施設の場所がどの程度分散しているか、借入金の固定金利の割合がどの程度なのかを見るということですね。3点目は何でしょうか。

「利益分配」と「利益超過分配」に対する見方です。結論からいうと、インフラファンドの場合はいずれであっても価格に影響を与えないので、あまり気にする必要はありません。後になって「利益超過分配だったのか」と気づいてびっくりしない程度に、予備知識として把握しておきましょう。

インフラファンドの分配には、「利益分配」と「利益超過分配」の2種類があります。銘柄によっては、天候が悪くて利益があまり出てないが分配は維持したい場合などに利益超過分配を増やすことがあります。利益超過分配のことを、投信が資産を売却して分配を出す「タコ足配当」と同じだという指摘がありますが、まったく違います。

インフラファンドは仕組み上、減価償却費が多いので、それを利益超過分配として投資家に戻しているだけです。違いは、利益分配は配当をもらったときに20%の源泉所得税がかかりますが(iDeCoやNISA除く)、利益超過分配は投資家に返しただけなので0%。将来売却したときに、税務上の評価額が下がる形で結果として利益分配と同じ負担になります。

後になってびっくりしないためには、利益分配と利益超過分配の割合をチェックしておけばいいでしょう。利益分配と利益超過分配の割合が急に変わっていないか。これが変わった場合は、ポートフォリオや財務運営に大きな変更があった可能性があります。できれば過去に利益超過分配の割合や金額の変動が少ない銘柄を選びたいところです。

―今後は再生可能エネルギーの市場価格に政府が一定額を上乗せするFIP(Feed in Premium)制度へ切り替わるなど、「アフターFIT」における不確定要素も話題になっています。これから投資を考える際の注意点を教えてください。

入札で売買されるFIP制度では、売電価格がどの程度維持できるのかなど未知数な点が多いといえます。一方でゼロカーボン政策が進展すれば、これまで以上に再生可能エネルギーのニーズが高まるでしょう。FIPで売電価格が上下する可能性はあるものの、市場拡大のトレンドを考えれば過剰な心配かもしれません。

太陽光発電による売電価格は下がってきており、他の発電コストと大きな違いはなくなってきました。とくに火力発電はコスト増要因のひとつである炭素税導入の議論もあり、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの価格競争力は相対的に高まっています。「アフターFIT」の展開になっても、太陽光発電が他の発電コストと同程度であれば導入は進むでしょう。

一方、太陽光発電の明確な収益下げ要因としては、いま議論されている「発電側基本料金」があります。これまでは送電網の維持コストを電力の需要者が負担していましたが、これを発電側の事業者も負担する制度です。2023年ぐらいから導入される話もありますが、これも詳細は未確定です。インフラファンドにコスト負担が生じる政策リスクのひとつとして把握しておきましょう。

今後の太陽光発電には、さらなる技術革新が求められます。具体的には、蓄電技術の進展や低価格化でしょう。これが進めば「アフターFIT」の売電価格でも十分に運営していくことができると見られています。また、ESG投資の機運の高まりも追い風です。環境問題に敏感な個人投資家の拡大や持続可能性の観点での投資が不可欠になった金融機関など、投資家側の意識変化もインフラファンドの市場拡大に寄与すると見られています。

 

関 大介(せき だいすけ) 氏

早稲田大学法学部卒業。不動産会社財務部、外資系生命保険会社経理部、シンクタンクを経て2007年2月に不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研(http://www.ibrc.jp/)を設立し、代表取締役就任。
前職では、J-REIT市場創設前となる2001年2月から不動産証券化に関するポータルサイトを5年間運営。2006年5月よりJ-REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」 (http://www.japan-reit.com)の運営を開始し現在は運営事務局の責任者を兼任。
日経マネーやマネックス証券などの連載、その他エコノミストなどの経済誌や投資系雑誌にJ-REIT及び不動産市場に関する寄稿を多数行う。著作は、「J-REIT格付けデータブック」(秀和システム社)など。
2016年東京証券取引所におけるREIT有識者ミーティング委員。

 

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